近年、海賊版サイトのコンテンツ削除やアクセス阻止を試みる動きが世界的に広がっていますが、一部の海賊版サイトは「モグラたたき戦略」と呼ばれる手法を駆使してブロックを回避し続けています。具体的にどのような戦略が取られているのか、TorrentFreakなどの報道を基に詳しく解説します。
1. 海賊版サイト対策としてのドメインブロックの仕組み
まず、多くの海賊版対策では、海賊版サイトが提供する違法コンテンツへのアクセスを遮断するため、特定のドメインをブロックしています。これは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)がユーザーのアクセスを遮断するもので、海賊版コンテンツへの直接のアクセスが難しくなると期待されています。
たとえば、Google検索では著作権侵害の申し立てを受けたサイトを検索結果から排除するほか、削除依頼に基づき海賊版サイトのリンクが表示されないよう調整しています。2022年には、Googleが約6億8,000万件にのぼる著作権侵害コンテンツを検索結果から削除したと報告されており、違法なコンテンツへのユーザー流入を減らす効果が期待されています。
2. モグラたたき戦略とは?頻繁なドメイン変更でブロック回避
ドメインをブロックすることでアクセスを遮断しても、海賊版サイトがすぐに新しいドメインを登録して対応するため、ブロックは一時的な措置にとどまることが多いのが現状です。ドメインが変更されると、プロバイダや検索エンジン側は再度そのドメインをブロックしなければならず、次々に現れる新しいドメインに対応し続ける「モグラたたき状態」が生まれます。
たとえば、スペインで多くのユーザーを抱えるトレントサイト「DonTorrent」は、2023年の1年間で39回もドメインを変更しました。こうした頻繁なドメイン変更により、ユーザーは簡単に最新のサイトにアクセスできる一方で、権利者側やプロバイダはブロックに追いつくのが困難な状況に陥っています。
3. 海賊版サイトのブロック回避策:ブラウザ拡張機能や暗号化メッセージの活用
DonTorrentのような海賊版サイトは、プロバイダのブロックに対抗するためにさまざまな対策を講じています。たとえば、ユーザーがアクセスできる新しいドメイン情報をTelegramの公式アカウントで共有したり、ドメインが差し押さえられた場合にはブラウザ拡張機能をリリースしてユーザーに固有のアクセス手段を提供するなど、アクセス継続のための工夫がされています。
さらに、DonTorrentでは、暗号化メッセージサービスを活用してドメイン情報をユーザーに提供したり、ダークウェブにサイトを開設することで規制の厳しい地域でもアクセスが可能となるよう対策しています。こうした努力により、同サイトはドメインがブロックされた場合でもユーザーの減少を防ぎ、アクセス数を安定的に保つことに成功しています。
4. 対策と課題:モグラたたき状態を抜け出すための方向性
現状、海賊版サイトを完全に閉鎖するのは難しく、ドメインブロックの回避が続く限り、権利者側はブロックするドメインを増やし続けなければならない「モグラたたき状態」が続きます。このため、著作権を侵害するコンテンツの拡散を防ぐためには、技術的な対応だけでなく、社会的な啓発や合法的なコンテンツ提供の促進も重要な要素となります。
また、ブロックを突破してでも違法コンテンツを入手するユーザーの行動を抑えるために、合法的なコンテンツの価格や利便性を改善する動きが進められています。例えば、手軽に利用できるストリーミングサービスやサブスクリプション型のサービスは、海賊版に依存する必要のないアクセス環境を提供することで、結果的に海賊版コンテンツへの需要を減少させる可能性があります。
5. 結論:海賊版サイト対策の今後の展望
海賊版サイトに対する「モグラたたき戦略」は、現時点では最も即効性のある対策とされていますが、ドメイン変更などの対抗手段により限界があるのも事実です。今後、ブロック回避を回避する技術的な対応を強化するとともに、ユーザーが合法的な手段でコンテンツにアクセスしやすい環境を提供することが、より持続可能な海賊版対策の鍵になると考えられます。
関連記事
この「モグラたたき戦略」は著作権保護の新たな課題となっており、今後も多様な視点からのアプローチが求められるでしょう。
コメント