アリババが「Claude Code」を社内禁止へ――中国ユーザー識別コードと“バックドア”疑惑を徹底解説

アリババが「Claude Code」を社内禁止へ――中国ユーザー識別コードと“バックドア”疑惑を徹底解説 #news
アリババがAnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」を社内禁止にした理由を解説。中国ユーザー識別コード、バックドア疑惑、モデル蒸留をめぐる対立、企業利用時のセキュリティリスクを詳しく紹介します。

🚨 アリババがClaude Codeを「高リスクソフトウェア」に指定

中国のIT大手アリババが、AnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」について、情報流出やバックドアにつながる可能性があるとして、2026年7月10日から従業員による社内利用を禁止したことが明らかになりました。社内通知では、Claude Codeを「セキュリティ上の脆弱性を持つ高リスクソフトウェア」の一覧に追加し、インストール済みの従業員には利用停止を求めたと報じられています。代替ツールとして推奨されたのは、アリババが開発するAIコーディングプラットフォーム「Qoder」です。

今回の禁止措置は、単なる米中企業間の対立だけでは終わりませんでした。2026年7月8日には、中国工業情報化部の関連機関が運営する国家情報セキュリティ脆弱性データベースも、Claude Codeに「重大なバックドアリスク」が存在すると警告。問題が指摘されたバージョンの利用停止または最新版への更新を呼びかけており、一企業の社内判断から、中国政府系機関を巻き込むセキュリティ問題へと発展しています。

🔍 発見された「中国ユーザー識別コード」とは何か

問題の発端は、RedditユーザーのLegitMichel777氏がClaude Codeをリバースエンジニアリングし、通常の利用者には見えない識別処理を発見したことでした。対象コードは、記事内で一部「バージョン2.9.1」と伝えられていますが、正確には2026年4月2日に公開されたバージョン2.1.91以降に含まれていたとされています。Claude Codeはプロキシの使用状況を確認したうえで、中国のタイムゾーン、中国系ドメインへの接続、中国のAI研究機関との関連性などを判定し、その結果をAnthropic側へ伝えられる仕組みを持っていたと指摘されています。

特に問題視されたのが、通常のテレメトリー通信として明示的に送るのではなく、システムプロンプト内の日付表記やUnicode文字、句読点などをわずかに変えることで、識別結果を埋め込んでいた点です。画面上ではほとんど同じ文章に見える一方、受信側では表記の違いから利用環境を判別できるため、研究者からは「ステガノグラフィーに近い追跡手法」「利用者に十分説明されていない隠れた識別機能」と批判されました。ただし、現時点で端末を外部から自由に操作する典型的なマルウェア型バックドアが確認されたわけではなく、“バックドア”や“スパイウェア”という表現は、アリババや中国側、発見者による評価を含むものとして区別する必要があります。

🛡️ Anthropicは「不正利用とモデル蒸留への対策」と説明

AnthropicのClaude Code担当エンジニア、タリク・シヒパル氏は、この機能について、2026年3月から実施していた不正利用防止の実験だったと説明しています。中国などの未対応地域にClaudeを再販する無許可業者や、Claudeの回答を大量取得して別のAIモデルを訓練する「モデル蒸留」への対策が目的であり、より強力な防御策が導入されたため、問題のコードは削除する予定だったとしています。削除用の変更は7月1日に統合され、7月3日に公開されたバージョン2.1.200では影響を受けないと報じられています。

今回明らかになった主な経緯は、次の通りです。

  • 2026年3月:Anthropicが不正再販・モデル蒸留対策の実験を開始
  • 4月2日:識別コードを含むとされるClaude Code 2.1.91を公開
  • 6月30日:利用者がコードを解析し、Reddit上で問題を指摘
  • 7月1日:Anthropic側が識別機能を削除する変更を統合
  • 7月3日:修正版とされるバージョン2.1.200を公開
  • 7月10日:アリババがClaude Codeの社内利用を禁止
  • 7月8日:中国政府系の脆弱性データベースが警告を公表

🌏 背景にあるAnthropicとアリババの「モデル蒸留」対立

両社の関係は、Claude Code問題が発覚する以前から悪化していました。Anthropicは、アリババのAI研究部門「Qwen Lab」に関連する事業者が約2万5,000件の不正アカウントを利用し、Claudeに約2,880万回アクセスしたと主張。Claudeのソフトウェア開発能力や推論能力を別のモデルへ移す、大規模なモデル蒸留が行われた可能性を米国側へ訴えています。一方で、アリババや中国側からは、この主張に対する詳細な技術的反論や調査結果は公開されておらず、事実関係の全容は確定していません。

この問題は、AIコーディングツールを企業内で使用する際のリスクも浮き彫りにしました。Claude Codeのようなエージェント型ツールは、単にコードを提案するだけでなく、リポジトリの読み取り、ファイル編集、コマンド実行、外部サービスとの連携まで行えます。そのため、企業が確認すべき対象は生成コードの品質だけではありません。

  • ソースコードや設計情報がどのサーバーへ送信されるか
  • プロンプトや応答データが何日間保存されるか
  • プロキシ、IPアドレス、タイムゾーンなどが収集されるか
  • コマンド実行やファイル閲覧の権限を管理できるか
  • 通信先を企業側のゲートウェイで制限できるか
  • 更新内容やテレメトリー機能を監査できるか
  • 問題発生時にログを追跡できるか

欧州では2026年8月2日からEU AI Actの主要規定が広く適用され、AIシステムの透明性、リスク管理、記録保存などが一段と重視されています。EU AI ActがClaude Codeを直接禁止するわけではありませんが、世界的には「便利だから自由に使わせる」のではなく、承認済みツール、企業契約、監査ログ、アクセス制御、データ保持方針を組み合わせて管理する方向へ進んでいます。

✅ まとめ:問題の核心は追跡目的より「透明性」にある

アリババによるClaude Codeの禁止は、米中AI競争、モデル蒸留をめぐる対立、外国製ソフトウェアへの警戒が重なって起きた出来事です。Anthropicが説明するように、不正再販やモデル蒸留を防ぐ目的自体には一定の合理性があります。しかし、利用環境を識別する処理を難読化し、通常は気づきにくい表記変更によって情報を伝えていたのであれば、企業ユーザーが不信感を抱くのも無理はありません。今回の問題は、Claude Codeだけの危険性を示すというより、強力な権限を持つAIエージェントには、機能だけでなく通信内容、更新履歴、データ利用目的に関する高い透明性が求められることを示した事例といえるでしょう。

参考・出典

  • Reuters「Alibaba to ban employees from using Anthropic’s coding tool, source says」
  • Reuters「China issues ‘backdoor’ security alert over Anthropic’s Claude Code」
  • Anthropic「Supported countries and regions」
  • Anthropic公式ドキュメント「Claude Code Security」
  • Anthropic公式ドキュメント「Claude Code Overview」
  • Anthropic公式ドキュメント「Enterprise deployment overview」
  • Anthropic公式ドキュメント「Data usage」
  • Qoder公式サイト「The Agentic Platform」
  • Reddit「Anthropic embedded spyware in Claude Code」
  • Malwarebytes「Claude Code’s hidden tracker was an “experiment,” says Anthropic」
  • 欧州委員会「AI Act」
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