AI(人工知能)が医療の世界で革命を起こしつつあります。中でも注目されているのが、既存の医薬品を別の疾患に「転用」することで、新しい治療法を発見するというアプローチです。
2025年3月にニューヨーク・タイムズが紹介した複数の事例では、治療法の選択肢が限られていた希少疾患の患者たちが、AIの助けによって劇的に回復しています。

🧬希少疾患とは?
アメリカ国立衛生研究所によると、**希少疾患(Rare Disease)**とは「アメリカ国内で患者数が20万人未満の病気」と定義されます。しかし、その種類は実に数千以上。90%以上に承認された治療法が存在しないのが現状です。

🏥AIが救った命──ジョセフ・コーツ氏のケース
AIの医療貢献として代表的なのが、アメリカに住むジョセフ・コーツさんのエピソードです。
- 病名:POEMS症候群(まれな多発性神経障害と血液疾患を伴う症候群)
- 症状:手足のしびれ、心肥大、腎機能障害など
- 予後:幹細胞移植が唯一の治療法とされるも、状態悪化により実施不能
コーツ氏のガールフレンドが希望をかけて連絡したのが、医師・研究者のデイビッド・ファジェンバウム博士。博士はAIの分析をもとに、以下の従来にない治療法を提案しました。
🧪 化学療法 + 免疫療法 + ステロイド
結果、治療は奏功し、4カ月後には幹細胞移植が可能なほどに回復。最終的に寛解に至りました。

🤖AIによる「医薬品の再発見」を牽引するEvery Cure
ファジェンバウム博士は、自身もキャッスルマン病という希少疾患の経験者。治療法がなかったため、既存薬の転用に自ら取り組み、命を救われた過去があります。
その経験をもとに設立した非営利団体が、
🧬Every Cure(エブリー・キュア)
この団体ではAIを使い、以下のようなアプローチを採用:
- 既存の医薬品の作用メカニズムをAIが解析
- 他の疾患に転用できる可能性を探索
- 世界中の医師・研究者と連携して臨床実践へ

🌍世界で進むAI活用と治療の「発見」
AIを活用した医薬品転用は、アメリカだけでなく、日本・中国・欧州など世界中で広がっています。例えば:
🇺🇸アラバマ州のケース
- 患者:慢性嘔吐で衰弱した19歳の女性
- AIの提案:イソプロピルアルコールの鼻吸入
- 結果:即座に症状が改善
この治療を導いたのは、マット・マイト氏が開発したカスタマイズAIモデル。彼はプロンプトでこう指示しました:
「吐き気に効果がある治療法をすべて教えて」
すると、最上位に表示されたのがイソプロピルアルコール。実行すると、まさに即効性がありました。
💊具体例:既存薬の驚くべき転用
薬の転用は珍しいことではありません。例として有名なのが:
- ミノキシジル:元は血圧降下剤 → 脱毛症治療に
- シロリムス:臓器移植時の免疫抑制剤 → キャッスルマン病治療に転用
こうした例からも、既存薬に新たな命を吹き込む可能性があることがわかります。
🧭AI×医療の未来:「誰もが治療法を持つ社会」へ
Every Cureの共同設立者であり医師のグラント・ミッチェル氏はこう語ります。
「AIによって、見落とされていた医薬品の可能性が開かれることで、世界中の命を救えるかもしれません」
従来の治療法では救えなかった命が、AIと医師の知恵が融合することで光を見出し始めているのです。
📝まとめ
✅ AIは、既存薬の転用により治療法がなかった希少疾患の治療に貢献
✅ 医師とAIの連携で、患者の命を救う実例が多数報告
✅ 世界各地で同様の研究と実践が進行中
✅ 医療AIの進化により、将来的にはすべての疾患に治療の選択肢がある世界が実現するかもしれません
🎯 AIは単なる技術ではなく、「希望の医療パートナー」として機能し始めています。
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