オンライン広告の闇—大手テック企業の広告が違法コンテンツを支援?
Google、Amazon、Microsoftは、それぞれ Google 広告、Amazon Ads、Microsoft 広告 というオンライン広告プラットフォームを運営しています。しかし、これらの広告サービスが 児童ポルノ(CSAM)を掲載するサイトに広告を表示していた ことが、調査会社 Adalytics による最新の報告で明らかになりました。
この調査報告によると、大手テック企業の広告が 違法コンテンツを掲載するウェブサイトの収益源となっていた可能性 が指摘されています。これは企業のブランドイメージや、広告の適正運用に対する信頼性にも関わる重大な問題です。
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調査の発端:Adalyticsの報告内容とは?
Adalyticsの調査によると、広告が表示されていたのは ImgBB という画像共有サイトです。ImgBBはユーザー登録不要で写真をアップロード・共有できるサービスであり、一見すると便利なツールですが、その匿名性を悪用し、 違法なコンテンツがアップロードされるケースが後を絶たない ことが問題視されていました。
Adalyticsがこの件を発見したのは、 アメリカ政府の広告がボットやクローラーにどのように配信されているかを調査していた際の偶然の出来事 でした。彼らは、 幼い子どもの性的に露骨な画像(CSAM)が掲載されたImgBBのページをアーカイブしている「URLScan.io」というボット によって、大手広告主のデジタル広告が記録されていることを発見しました。
つまり、
違法なコンテンツが掲載されたサイト上に、GoogleやAmazonなどの広告が表示されていた
ということになります。
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Full Report – Are ad tech vendors facilitating or monitoring ads on a website that hosts Child Sexual Abuse Material ?https://adalytics.io/blog/adtech-vendors-csam-full-reportAmazon, Google accused of monetizing illegal content • The Registerhttps://www.theregister.com/2025/02/08/amazon_google_accused_of_monetizing/How big tech’s ad systems helped fund child abuse online – EsstNhttps://esstnews.com/2025/02/08/how-big-techs-ad-systems-helped-fund/Blackburn, Blumenthal Probe Amazon & Google After New Report Reveals They Placed…https://www.blackburn.senate.gov/2025/2/issues/technology/blackburn-blumenthal-probe-amazon-google-after-new-report-reveals-they-placed-ads-on-website-that-hosts-child-sexual-abuse-materialLawmakers Demand Answers From Ad Tech Vendors Allegedly Monetizing CSAM | AdExchangerhttps://www.adexchanger.com/marketers/lawmakers-demand-answers-from-ad-tech-vendors-allegedly-monetizing-csam/Senators Decry Adtech Failures as Ads Appear On CSAM Sitehttps://www.adweek.com/media/senators-accuse-google-amazon-monetizing-child-abuse-content/画像共有サイトのImgBBは、広告サポート付きの無料で使える画像共有サイトです。このサイトではプラットフォームに写真をアップロードして共有する前に、ユーザー登録する必要がありません。Adalyticsによると、ImgBBの運営者は意図的に所有者を隠しており、ドメイン名の所有名義を確認できるWHOISを編集するなどして、所有者がわからないようにしているそうです。
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Adalyticsに情報提供した第三者によると、ImgBBの月間ページビュー(PV)は4000万PVを超えており、これは経済紙のFinancial Timesやロサンゼルスの地元紙・Los Angeles Times、政治関連メディアのPolitico、アメリカ議会図書館のウェブサイトよりも月間PVが多いそうです。ImgBB — フリーなスマイリー / アニメエモコン
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アメリカ政府の広告がボットやクローラーにどのように配信されているかを調査する過程で、Adalyticsは偶然、幼い子どもの性的に露骨な画像を表示していると思われるImgBBのページをアーカイブしている「URLScan.io」というボットが、大手広告主のデジタル広告をアーカイブしているという事例に遭遇しました。つまり、幼い子どもの性的に露骨な画像がアップロードされたImgBBのページに、アメリカ政府の広告が表示されていたというわけです。
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問題の核心:なぜ大手企業の広告が違法コンテンツに表示されたのか?
ImgBBは、広告収益によって運営されているウェブサイトであり、広告は Google、Amazon、Microsoft、Criteo、Quantcast、Outbrain、TripleLift、Zeta Global、Nexxen などの広告配信システムを通じて掲載されていました。
しかし、なぜこれほどの大手企業の広告が、 CSAMを掲載するような違法サイトに表示されてしまったのでしょうか?
その背景には、以下のような広告配信の仕組みの問題点があります。
1. 「noindex」タグを利用した検索エンジン対策
ImgBBは、違法コンテンツがGoogle検索やBingの検索結果に表示されないようにするため、 「noindex」タグ を使用していました。そのため、広告主は どのページに広告が表示されているのかを正確に把握できない状況 だった可能性があります。
2. 広告配信の透明性の欠如
AmazonやGoogleなどの アドテク(広告技術)ベンダーは、広告主に対して「どのページに広告が掲載されたかを正確に調査する機能やレポートを提供していない」 という問題も指摘されています。
広告主は「自社の広告が不適切なページに掲載されているかどうか」を 確認する手段が限られている のです。
3. ブランドセーフティ(広告の安全性)対策の不備
Adalyticsは、 複数の大手ブランドセーフティベンダーが、ImgBB上での広告インプレッションを「ブランドに適したもの」と誤認識していた ことも指摘しています。
つまり、 ブランドセーフティ対策が機能不全に陥り、企業が意図せず違法サイトを収益化する手助けをしてしまった 可能性があるのです。
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広告が表示されていた企業・ブランド一覧
Adalyticsの報告によると、 少なくとも2021年以降、ImgBBに広告を掲載していた企業・団体の一部 は以下の通りです。
- 政府機関
- アメリカ国土安全保障省
- テキサス州政府
- アリゾナ州立大学
- 大手企業
- Google Pixel
- Amazon Prime
- Microsoft
- Mastercard
- スターバックス
- ペプシコ
- ホンダ
- Uber Eats
- PUMA
- ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)
- Adobe
- HP
- ロレアル
- Acer
- ドミノピザ
- Samsung など
これらの企業は、 意図せずして違法コンテンツを収益化していた可能性 があります。
政府と企業の対応—広告業界の信頼性は揺らぐのか?
この問題を受け、アメリカの 連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省の特別捜査官、全米行方不明・被搾取児童センター、カナダ児童保護センター などが迅速に調査を開始しました。
政府の対応
カナダ児童保護センターは、ImgBBの特定のページが カナダの法律における「児童性的虐待資料(CSAM)」の定義を満たしている との判断を下しました。
また、全米行方不明・被搾取児童センターは、 2021年、2022年、2023年に何十回もImgBBに対して「CSAMをホストしている」という通知を送信 していたことも明らかになりました。
企業の対応
一方で、GoogleやAmazonなどの広告技術ベンダーは、メディア在庫に関する品質ポリシーを持っていると主張しています。しかし、 実際には長年CSAMをホストしているとされるImgBB上で、大手ブランドや政府の広告が表示されている事実 があります。
そのため、Adalyticsは「企業のブランドセーフティ対策が 実際にどれだけ機能しているのか不明 である」と厳しく指摘しました。
まとめ—オンライン広告の課題と今後の動向
今回の問題は、 「企業の広告が意図せず違法サイトを支援してしまうリスク」 を浮き彫りにしました。
オンライン広告の世界では 広告の配信先が完全に管理できない ことが多く、 ブランドセーフティ対策がいかに重要か を改めて示しています。
今後、GoogleやAmazonなどの大手アドテク企業が より透明性の高い広告管理システムを導入するか、また 政府が広告業界に対する規制を強化するか に注目が集まります。
私たちも、オンライン広告のあり方について より慎重に考えるべき時代に突入している のかもしれません。
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