🇺🇸Googleが挑んだ「アメリカ製スマホ」の夢と、その失敗から得られる教訓

🇺🇸Googleが挑んだ「アメリカ製スマホ」の夢と、その失敗から得られる教訓 #news
ドナルド・トランプ前大統領は「メイド・イン・アメリカ」のスマートフォン製造を強く望み、Appleをはじめとするスマホメーカーに対し「国内で製造しなければ関税をかける」と圧力をかけてきました。

ドナルド・トランプ前大統領は「メイド・イン・アメリカ」のスマートフォン製造を強く望み、Appleをはじめとするスマホメーカーに対し「国内で製造しなければ関税をかける」と圧力をかけてきました。しかし実は、そのトランプ氏の理想に近い挑戦を、かつてGoogleが行っていたことをご存知でしょうか?それは「Moto X」というスマートフォンを通じた、Googleの“アメリカ産スマホ計画”でした。

💡GoogleとMotorolaの大型買収から始まった物語

Googleは2011年、大手通信機器メーカーのMotorola Mobilityをおよそ125億ドルで買収。この戦略は、Androidの普及を加速させるための一手であり、同時に特許取得による訴訟対策という側面もありました。

そして2013年、両社の提携のもと誕生したのが「Moto X」。このスマートフォンは、アメリカ国内(テキサス州フォートワース)で組み立てられ、「アメリカ産スマホ」として世に送り出されました。

🇺🇸「メイド・イン・アメリカ」のスマホが目指したもの

Moto Xの特徴は、ただアメリカで製造されたという点だけではありません。以下のような斬新な試みが注目を集めました。

  • 🖌️ 自社サイトで背面素材やカラー、刻印をカスタマイズ可能
  • 📱「Okay Google Now」で動作する先進的な音声アシスタント
  • 🏭 愛国的マーケティングで「米国産」を前面に打ち出し

フォートワース工場では最大3800人が勤務し、週10万台のスマホを生産する体制を整えていました。当時の幹部によれば、中国の約3倍もの人件費がかかる中でも、Moto Xは利益の出る価格で販売されていたそうです。

❌なぜ「Moto X」は失敗したのか?

しかし、この挑戦はわずか1年足らずで幕を閉じることとなります。その理由は一言で言えば「売れなかったから」です。

  • 💰 価格は当初579ドル→399ドルまで値下げ
  • 📉 販売数は2014年Q1で約90万台(iPhone 5sは同時期に2600万台)
  • 🔁 カスタマイズによる在庫管理の難しさと返品率の高さ
  • 📦 サプライヤーとの交渉力の弱さによるコスト増
  • 📺 広告・マーケティング予算が少なかった

また、当時の調査によると「スマートフォンがどこで製造されたか」はほとんどの消費者が気にしておらず、国内製造をウリにした戦略が購買動機に直結しなかったことも大きな誤算でした。

🏭「製造はアメリカで」は現実的なのか?

Appleのティム・クックCEOは、アメリカでスマホ製造が難しい理由として「労働コスト」ではなく「人材の層の厚さ」を挙げています。例えば、精密な金型製造の技術者は中国には多数いるが、アメリカでは一部屋も埋められないと語っています。

実際、Moto Xの工場も人材不足を補うために世界中からエンジニアを集める必要がありました。一方、中国では需要に応じて数千人規模の労働者を即時に確保・削減できる柔軟性があり、そこが大きな違いでもあります。

📉そしてGoogleの撤退、Motorolaの売却へ

Moto Xの失敗を受けて、Googleは2014年にフォートワース工場を閉鎖。モトローラのスマートフォン事業をレノボに売却しました。なお、Googleはモトローラが保有していた多数の特許は手元に残しており、Androidの将来的な訴訟リスクに備える目的は達成できたと見られています。

🧠「Moto X」から学べる教訓とは?

Fortune誌はこの一連の事例を次のように総括しています。

「Moto Xが失敗したのは“アメリカ製”だからではない。単に、競合より売れなかったからである」

製造場所そのものが問題だったわけではなく、製品の魅力・ブランド力・マーケティング力でiPhoneに敵わなかったことが最大の敗因です。

とはいえ、2025年現在では製造の自動化が進んでおり、当時よりもアメリカでスマートフォンを製造するハードルは下がっているかもしれません。しかし、それでも「消費者が国産スマホを積極的に選ぶかどうか」は未知数であり、政治的な掛け声だけで実現できるものではないといえるでしょう。

📝まとめ

  • Googleは2013年、モトローラとの協力で「Moto X」をアメリカで製造
  • カスタマイズ性・愛国的ブランディングで差別化を図るも売上は振るわず
  • 工場閉鎖&事業売却の結末に
  • 製造コストよりもブランド力や顧客ニーズの不一致が失敗の要因
  • トランプ大統領の「国産スマホ」構想に対する現実的な示唆を提供する事例に
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