人間の睡眠は一般的に「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類で構成されています。しかし最新の研究により、小さな熱帯魚として知られるゼブラフィッシュには、少なくとも4種類の異なる睡眠状態が存在することが明らかになりました。
これまで魚類の睡眠は比較的単純なものだと考えられていましたが、今回の発見によって「睡眠の進化」に対する科学者たちの理解が大きく変わる可能性があります。
睡眠は人間だけでなく、多くの動物に共通する重要な生命活動です。しかし、なぜ眠る必要があるのか、どのように睡眠が進化してきたのかについては、現在でも多くの謎が残されています。

🧠魚も眠る?長年続いてきた睡眠研究の謎
魚は人間のようにまぶたを閉じて眠るわけではありません。そのため長らく「魚は本当に眠っているのか?」という議論が続いてきました。
しかし近年の研究では、魚も一定時間動きを止め、外部からの刺激に反応しにくくなり、睡眠不足になると後から長く休息する「睡眠リバウンド」を示すことが確認されています。
こうした特徴は哺乳類や鳥類の睡眠と共通しており、生物学的には魚も睡眠を取っていると考えられています。
実際に睡眠の起源は約4億5000万年以上前の脊椎動物の祖先にまでさかのぼる可能性が指摘されており、魚類の睡眠を調べることは「睡眠の進化の歴史」を探る重要な手がかりになるのです。

🔬なぜゼブラフィッシュが研究対象になったのか
今回の研究で使用されたゼブラフィッシュは、生命科学の分野では非常に有名なモデル生物です。
特に幼生の段階では頭部が透明であるため、生きたまま脳活動を観察できるという大きな特徴があります。
研究チームは特殊な顕微鏡を使い、
- 脳神経活動
- 眼球運動
- 体の動き
- 概日リズム(体内時計)
を同時に記録しました。
その結果、魚が単に動かなくなっているだけではなく、時間帯によって異なる睡眠状態を使い分けていることが判明しました。
これは魚類の睡眠にも、人間の睡眠に似た複雑な構造が存在することを示しています。

👀発見された「4種類の睡眠状態」とは
研究者らはゼブラフィッシュの睡眠を大きく4種類に分類しました。
💤確認された睡眠状態
- QNEM
- 眼球運動を伴わない睡眠状態
- 主に夜間に発生
- QEM-1
- 最も頻繁に観測された状態
- 主に日中に発生
- 非常に目覚めにくい
- QEM-2
- 夜間にピークを迎える睡眠状態
- QEM-3
- 朝方に向かって増加する睡眠状態
特に注目されたのが「QEM-1」です。
この状態では脳全体の活動が大幅に低下しており、人間でいう昼寝や深い休息に近い状態であることが確認されました。
驚くべきことにQEM-1は日中に集中して発生しており、この状態の魚は捕食者への反応も大きく低下していました。
野生環境では危険が伴うにもかかわらず、それほど強力な睡眠状態が維持されていることに研究者らも驚いています。

🌙人間のレム睡眠との共通点と違い
人間の睡眠では、脳が活発に活動するレム睡眠と、身体を休ませるノンレム睡眠が周期的に繰り返されます。
レム睡眠では眼球が高速で動くことが特徴で、夢を見ることが多いとされています。
今回の研究では、ゼブラフィッシュにも眼球運動を伴う睡眠状態が3種類存在することが確認されました。
ただし、それらが人間のレム睡眠と完全に同じ機能を持つとはまだ分かっていません。
むしろ今回の発見は、
- 睡眠は2種類だけではない可能性
- 動物ごとに異なる睡眠構造が存在する可能性
- 睡眠の進化は想像以上に多様である可能性
を示しています。
睡眠研究の世界では非常に大きな発見といえるでしょう。
🔍睡眠研究は新たな段階へ、今後の注目ポイント
睡眠は記憶の定着、脳のメンテナンス、老廃物の除去、免疫機能の維持など、多くの重要な役割を担っています。
近年では睡眠不足が認知機能の低下やDNA損傷の蓄積に関係することも報告されており、「なぜ眠るのか」を解明することは医学的にも大きな意味を持ちます。
今回の研究によって、ゼブラフィッシュという透明な脳を持つ生物が、睡眠の仕組みを解明するための強力な研究モデルであることが改めて示されました。
今後は各睡眠状態が、
- 記憶形成
- 脳の情報整理
- 神経回路の修復
- 老廃物の排出
のどれに関わっているのかが調べられていく予定です。
魚の研究から、人間の睡眠の謎が解き明かされる日も近いかもしれません。
📝まとめ
ゼブラフィッシュを対象とした最新研究により、魚類にも少なくとも4種類の睡眠状態が存在することが明らかになりました。
特に眼球運動を伴う3種類の睡眠状態が確認されたことは、これまでの「レム睡眠・ノンレム睡眠」という常識を見直すきっかけになる可能性があります。
睡眠はすべての脊椎動物に共通する重要な生命活動ですが、その仕組みや進化の歴史にはまだ多くの謎が残されています。今回の発見は、人間を含む動物全体の睡眠研究を大きく前進させる重要な一歩となりそうです。
📚参考・出典
- Nature Communications
- Max Planck Institute for Biological Cybernetics
- Medical Xpress
- 睡眠進化に関する関連研究
- ゼブラフィッシュ神経科学研究論文
