💬 南北関係の緊張緩和は幻想か
北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は2025年8月14日、同国が軍事境界線付近で使用する対韓国向け宣伝放送用拡声器の撤去は行っていないと強調し、「撤去の予定もない」と断言しました。
韓国の一部で広がった「北朝鮮が融和に応じた」という見方を**「夢物語」**と一蹴しました。

韓国軍の発表と食い違う北朝鮮の主張
韓国軍は8月9日、一部地域で北朝鮮軍が拡声器を撤去する動きを確認したと発表し、韓国側も対抗措置として同様に拡声器を撤去。
このため、李在明(イ・ジェミョン)政権の融和政策に北朝鮮が前向きに反応している可能性が取り沙汰されていました。
しかし、金与正氏は朝鮮中央通信(KCNA)を通じて、韓国の政策は何ら変わっておらず、今後も変わることはないと断言。韓国側の見方を完全否定しました。
「米韓合同軍事演習の変更は無益」
与正氏は、米韓合同軍事演習の一部計画変更についても言及。
これを「両国の敵対的意図を変えるものではない」とし、**「無益な動き」**と切り捨てました。さらに、米国との対話の可能性についても「誤った憶測」と一蹴し、現時点で交渉の意志はないことを明言しました。
韓国側「状況判断は変わらず、監視継続」
韓国合同参謀本部の報道官は同日、境界線付近で確認された動きに関する判断は変えていないと発表。引き続き監視を続ける方針を示しました。
また、北朝鮮がしばしば**「虚偽の主張」**を行ってきた経緯を踏まえ、過剰反応しないよう注意を呼びかけています。
なお、報道官は「数十台の拡声器のうち1台しか撤去されていない」とする報道については直接コメントを避けました。
専門家分析:北朝鮮の「駆け引き戦略」
韓国統一研究院のホン・ミン上級研究員は、今回の発言は**「韓国のさらなる譲歩を引き出すための駆け引き」**と分析。
北朝鮮は関係改善のスピードを自らコントロールし、状況に応じて柔軟に立場を変える戦術を取っていると指摘します。
背景:南北間の「拡声器戦」とは?
南北の軍事境界線沿いでは、過去から**「拡声器戦」と呼ばれる心理戦が行われてきました。
韓国は北朝鮮政権批判や自由主義の価値を伝える放送を行い、北朝鮮は韓国批判や体制宣伝を実施。
2018年の南北首脳会談以降は一時停止されましたが、近年の関係悪化で再び再開される場面が増加**しています。
今後の展望とリスク
- 北朝鮮は今後も「融和」と「挑発」を繰り返す可能性
- 韓国の融和政策は短期的成果を得にくい状況
- 米韓の軍事演習や北朝鮮の核・ミサイル開発問題が火種に
今回の金与正氏の発言は、南北関係の即時改善が困難であることを改めて示すものとなりました。
まとめ
- 北朝鮮は拡声器撤去を否定、韓国の楽観論を一蹴
- 米韓演習の計画変更も「無益」と批判
- 韓国側は状況監視を継続、専門家は北朝鮮の駆け引き戦略と分析
- 拡声器戦は南北関係悪化の象徴であり、今後も緊張要因となる可能性