日本では、資産を築いた高齢者が消費を控え、結果的に高齢の子ども世代に相続される「老老相続」が進んでいます。これは単なる家庭内の資産移転にとどまらず、日本経済全体の活性化を妨げる要因 として専門家から警鐘が鳴らされています。
フィンウェル研究所所長の野尻哲史氏は、「本来は退職時に保有資産のピークを迎え、老後はその資産を計画的に使っていくのが理想。しかし日本では資産を使わず、死後に高齢の子どもに相続するケースが多い」と指摘します。

📈 新NISA・iDeCoで資産形成が進む一方で…
2024年から制度が拡充された 新NISA や、加入者が増えている iDeCo(個人型確定拠出年金)は、多くの若年層に投資への関心を芽生えさせました。
「貯蓄から投資へ」という流れが浸透しているのは喜ばしいことですが、問題は資産形成の「その後」 です。
退職後の生活資金として積み立てたお金は、消費に使ってこそ意味があります。
しかし実際には「資産を減らしたくない」という心理から、高齢者が消費を控える傾向が強いのです。
🛍️ 高齢者の消費が日本経済を押し上げる
日本の高齢化は進行中ですが、その中身は変化しています。かつては「高齢者が増えることで高齢化率が上昇」していましたが、現在は人口減少による割合の上昇が中心。
つまり、誰が内需を支えるのか が大きな課題となっています。
高齢者がもう少し積極的に消費するだけで、日本経済に大きなインパクトを与えられる可能性があります。
- 日本の個人資産は 約3,200兆円
- うち 約6割(2,000兆円)を60歳以上が保有
- このうち わずか0.25%=5兆円 が消費に回るだけで、GDPを約1%押し上げる効果があると言われています
つまり、少し財布の紐を緩めるだけで景気刺激につながるのです✨。
⚰️ 増える「老老相続」という現実
国税庁のデータによると、2023年の相続市場は 21.6兆円 に拡大。すべてを含めれば 50兆円規模 に達するとも言われます。
しかも相続人の 半数以上(52.1%)が60歳以上 という「老老相続」が主流になりつつあります。
- 被相続人の72%が80歳以上
- 相続人も60代以上が過半数
この結果、資産は高齢層の中で滞留し、消費や投資に回らず「眠ったお金」となってしまいます。
「亡くなるときの資産が最も多い」という皮肉な状況が現実化しているのです。
🏘️ 地方から都会へ流出する相続資金
もう一つの問題は、資産の地域的な偏り です。
被相続人の多くは地方在住ですが、相続人は都市部に住むケースが多い。そのため、相続が発生するたびに資産は地方から都市へと流れ出しています。
結果として、地方経済は疲弊し、都市への資金集中がさらに進む構図です。
👉 解決策の一つは、退職世代が 地方での生活や消費に前向きになること。地方移住による消費拡大は、都市への資産流出を抑える効果も期待できます。
💡 まとめ:資産は「残す」より「使う」へ
- 日本の高齢層は2,000兆円規模の資産を保有
- しかし消費に回さず、相続でさらに高齢層に移転
- 結果として経済活性化が阻害される
- 「資産形成から消費へ」というマインド転換が必要
老後に築いた資産は、長生きリスクを恐れて眠らせるのではなく、人生を楽しみながら社会に還元していく のが本来の役割ではないでしょうか。
資産を「残す」ことより、「使い切る」ことが、日本社会と次世代にとって大きな意味を持つのです。

