台湾の法務部調査局(MJIB)は、2025年3月28日、中国最大の半導体メーカー「中芯国際集成電路製造(SMIC)」を含む11社の中国企業を対象に、台湾国内での技術人材の違法な引き抜きに関する一斉捜査を実施したと発表しました。

なぜ問題なのか?台湾当局の説明 🧩
台湾の声明によれば、SMICは中国・上海を拠点とする企業でありながら、サモアに設立したダミー会社を経由して、台湾に子会社を設立。
現地企業や華僑を装って技術者をリクルートし、台湾政府の許可を得ずに企業活動を行っていたとのことです。
台湾では、中国企業が正式な許可なく事業活動を行うことは禁止されており、今回の行為は重大な違法行為と見なされています。

SMICとは?注目された背景 🎯
SMIC(中芯国際集成電路製造)は中国最大の半導体ファウンドリ(製造受託企業)であり、
2020年にはアメリカ政府によって**「エンティティ・リスト(輸出規制リスト)」**に指定されました。
にもかかわらず、2023年にはHuaweiのスマートフォン向けに7nmチップの量産を実現し、
「Intelすら苦戦した7nmを突破した」として世界的に注目を浴びました。
しかし今回の捜査により、これらの技術力も台湾から違法に引き抜いた知見に依存していた可能性が浮かび上がっています。

捜査の詳細 📂:対象となった11社とは?
MJIBは、2024年12月から捜査を準備し、2025年3月18日〜27日の間に一斉捜査を敢行。
対象はSMICを含む以下の11社です。
- 中芯国際集成電路製造(SMIC)
- 鈞茂電子有限公司
- 奧海科技股份有限公司(Dongguan Aohai Technology)
- 雲合智網(上海)技術有限公司
- 中穎電子股份有限公司
- 上海同星智能科技有限公司(Shanghai TOSUN Technology)
- 富滿微電子集團股份有限公司(Fine Made Microelectronics Group)
- 上海南芯半導体科技股份有限公司(Southchip Semiconductor Technology Shanghai)
- 深圳通鋭微電子技術有限公司(ShenZhen Torey Microelectronics Technology)
- 金泰克半導体有限公司(TIGO Semiconductor)
- 艾科微電子(深圳)有限公司
捜索は34カ所に及び、90人以上への取り調べが行われました。

複数の海外メディアがSMICに問い合わせを行いましたが、SMICはコメントしませんでした。
違法行為の手口とは?🔍
中でも悪質だった事例が、深圳通鋭微電子技術有限公司。
台湾に無許可で2つの拠点を設立し、違法に人材を集め、中国本社から直接給与を支払っていました。
また、雲合智網(上海)技術有限公司は、シンガポールの外資系企業を装って台湾に進出。
IntelやMicrosoftといったグローバル企業からも技術者を引き抜いていたことが明らかになっています。
盗み取った研究開発成果は、**「騰訊系統(テンセントシステム)」**を介して本社に送信されていたとのことです。
なぜ台湾は狙われるのか?🌏
台湾は、中国と同じ言語(中国語)を使用しながら、
世界最高レベルの半導体製造技術を持つことで知られています。
そのため、これまでも度々、中国による違法な人材引き抜きや技術窃取が問題視されてきました。
MJIBは次のように警告しています。
「ハイテク産業は台湾経済の生命線であり、半導体技術を持つ企業群は『護国群山(台湾を守る中央山脈)』のような存在です。
中国企業による違法な引き抜きを防ぐため、2020年末から特別対策プログラムを実施し、すでに100件以上の案件を捜査しています。」
まとめ📝
今回の捜査で、SMICを含む複数の中国企業による違法な人材引き抜きと技術流出の実態が改めて浮き彫りになりました。
台湾は引き続き、半導体産業を守るための監視と対策を強化していく方針です。
なお、海外メディアがSMICにコメントを求めたところ、SMICは回答を拒否しています。
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