「子どもが野菜を食べてくれない」「好き嫌いが多くて困っている」
子育てを経験した家庭なら一度は悩む問題ですが、実はその答えの一部は子どもが生まれる前、まだ母親のおなかの中にいる時期にあるかもしれません。
イギリスの研究チームが発表した最新研究では、妊娠中の母親が食べた野菜の香りや味を胎児が記憶し、その記憶が3歳になった後も残っている可能性が示されました。もしこの研究結果がさらに大規模な研究で裏付けられれば、子どもの好き嫌いは離乳食や幼児期の食育だけでなく、胎児期から形成され始めていることになります。

👶 胎児はおなかの中で「味」を感じている
かつては胎児は外界から隔離された存在だと考えられていました。しかし近年の発生学や神経科学の研究によって、胎児は妊娠後期になると想像以上に多くの情報を受け取っていることがわかっています。
妊娠28週頃を過ぎると、
- 👃 においを感じる嗅覚
- 👅 味を感じる味覚
- 👂 音を聞く聴覚
などが急速に発達します。
母親が食べた食品の成分は羊水へ移行し、胎児はその羊水を飲み込むことで味や香りを経験していると考えられています。
つまり赤ちゃんは生まれる前から「食育」を受けている可能性があるのです。

🔬 研究ではケールとニンジンの香りを記憶していた
今回の研究では34人の胎児と母親が参加しました。
研究チームは妊娠32週と36週の時点で母親に、
- 🥕 ニンジン粉末カプセル
- 🥬 ケール粉末カプセル
のどちらかを摂取してもらいました。
ニンジンは甘みが強く、子どもにも比較的人気の野菜です。一方でケールは苦味が強く、多くの子どもが苦手とする野菜として知られています。
研究者らは超音波スキャンを用いて胎児の表情を観察したところ、母親が摂取した食品によって胎児の反応に違いが現れることを確認しました。
さらに今回の追跡調査では、出生から3年後の子どもたちに同じ野菜の香りを嗅がせ、表情や反応を分析しています。
その結果、母親が妊娠中にニンジンを摂取していた子どもはニンジンの香りに対して否定的な反応を示しにくく、ケールを摂取していた母親の子どももケールに対する嫌悪反応が少ない傾向が確認されました。

🧠 「胎児期の記憶」は想像以上に長く残る可能性
今回の研究で特に興味深いのは、胎児期の経験が3年後まで残っていた可能性が示された点です。
従来の研究でも、
- 母親がよく食べていた食品を好む
- 母乳を通じて慣れた味を受け入れやすい
- 離乳食への適応がスムーズになる
といった現象が報告されていました。
実際にフランスやオランダなどでは、妊娠中に多様な野菜を摂取していた母親の子どもの方が、新しい食品を受け入れやすい傾向を示した研究もあります。
研究者らは、人間の味覚形成は出生後ではなく胎児期から始まっている可能性が高いと考えています。
📋 子どもの好き嫌いは何で決まるのか?
もちろん今回の研究だけで「妊娠中に野菜を食べれば必ず野菜好きになる」と結論付けることはできません。
食の好みには多くの要因が関係しています。
好き嫌いに影響すると考えられる要素
- 🧬 遺伝的な味覚の違い
- 👶 胎児期の味覚経験
- 🍼 母乳やミルクの風味
- 🍽️ 離乳食の内容
- 👨👩👧 家庭の食習慣
- 🏫 保育園や学校での経験
- 🧠 食べ物に対する心理的印象
特に苦味を感じる感受性には遺伝的な個人差があることが知られており、同じ野菜でも「苦い」と感じる子とそうでない子が存在します。
そのため、胎児期の経験は好き嫌いを決定する要因の一つではあるものの、全てを決めるわけではありません。
🌍 世界で進む「胎児期栄養」の研究
近年は世界中で「DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)」と呼ばれる研究分野が急速に発展しています。
これは、
「胎児期や乳幼児期の環境が、その後の人生の健康に大きな影響を与える」
という考え方です。
これまでにも、
- 肥満リスク
- 糖尿病リスク
- 心血管疾患
- ADHD
- アレルギー
- 食習慣
などが妊娠中の環境と関係している可能性が報告されています。
今回の研究も、単なる好き嫌いの話ではなく、人間の食行動や健康がどのように形成されるのかを理解する重要な手がかりとして注目されています。
📝 まとめ
イギリスの研究チームによる最新研究では、妊娠中に母親が摂取した野菜の香りや味を胎児が記憶し、その記憶が3歳頃まで残る可能性が示されました。今回の研究は被験者数が少なく、今後さらなる検証が必要ですが、「子どもの好き嫌いは生まれる前から始まっているかもしれない」という非常に興味深い結果となっています。
子どもの食習慣は遺伝や家庭環境、離乳食などさまざまな要因によって決まります。しかし今回の研究は、妊娠中の食生活が子どもの将来の食の好みにまで影響する可能性を示した点で大きな意味を持っています。将来的には、胎児期から始まる新しい食育の考え方につながるかもしれません。
参考・出典
- Developmental Psychobiology掲載論文
- Aston University研究発表
- Durham University研究発表
- ScienceAlert報道
- DOHaD研究関連文献
- 胎児味覚・嗅覚発達研究
