腰痛は世界中で最も多くの人を悩ませる症状のひとつです。日本でも、オフィスワーカーを中心に「慢性的な腰痛(CLBP)」に悩まされている人が少なくありません。しかし、高価な椅子を買ったり整体に通ったりする前に、日々の「歩行」習慣を見直すだけで、腰痛の予防につながる可能性があることが科学的に示されました。

🧪研究の背景:腰痛と歩行時間の関連性を徹底調査
近年、運動不足と腰痛の関連性は広く知られるようになってきましたが、「一体どれだけ歩けば効果があるのか?」という明確なガイドラインは存在していませんでした。そんな中、ノルウェー科学技術大学の研究チームが、慢性的な腰痛と歩行量との因果関係を明らかにするため、大規模かつ精密な研究を実施しました。
この研究は、ノルウェーのトロンデラーグ健康調査(HUNT Study)のデータを活用し、2017〜2019年に加速度計で測定された歩行データと、その後数年の腰痛発症データを突き合わせたものです。

👥調査対象と方法:1万人以上のデータを用いた実証分析
調査に参加したのは、慢性腰痛の症状がなかった成人1万1194人。参加者には次のような手法でデータ収集が行われました。
- 加速度計を腰と太ももに装着(1日中の歩行量と強度を計測)
- 1週間の歩行習慣を記録
- その後3年にわたる追跡調査で腰痛の有無をチェック
- 3ヶ月以上続く腰痛=慢性腰痛と定義

📊結果:1日78分以上のウォーキングで腰痛リスクが顕著に減少
研究の結果、歩行時間と腰痛の発症リスクには以下のような明確な相関関係があることが分かりました:
1日の平均歩行時間 | 慢性腰痛リスクの変化 |
---|---|
78分未満 | 基準(最も高い) |
78〜100分 | リスク13%減少 |
100分以上 | リスク23%減少 |
さらに、「歩行の強度(スピード)」よりも、「歩行時間(量)」の方が腰痛予防においてより重要であることも明らかになりました。

💬研究チームの見解:「歩くことこそ、腰痛予防の鍵」
研究の筆頭著者であるRayane Haddadj氏は、次のようにコメントしています:
「慢性腰痛を防ぐうえでは、歩く速さよりもどれだけ長く歩くかの方が効果的です。公共政策や健康指導では、日常的なウォーキング習慣の促進が強く求められます。」
つまり、ハードな運動やジム通いを無理に行う必要はなく、“毎日ある程度の時間をかけて歩くこと”が、最も自然で確実な腰痛対策になるということです。
🚶♀️どれくらい歩けばいいの?理想的なウォーキングの目安
この研究から導き出された腰痛予防の「理想的なウォーキング時間」は以下の通りです:
- 最低目標:1日あたり 78分
- より効果的な目標:100分以上
たとえば、
- 通勤時に片道20〜30分歩く
- 昼休みに15分ほど散歩する
- 夜に家の周りを20分程度ウォーキング
このように日常生活の中で合計1時間〜1時間半歩くだけで、腰痛予防に高い効果が期待できます。
🏃♂️ウォーキングの“質”より“量”が重要
運動というと「ジョギング」や「筋トレ」といった激しい運動を思い浮かべがちですが、今回の研究では「歩行の強度(スピードや負荷)」よりも「歩行の時間」の方が腰痛予防効果に優れていることが示されました。
つまり、「無理して早歩きする必要はない」ということです。日常の中で少しでも長く体を動かすことこそが、最大の防御策となります。
🧭まとめ:腰痛に悩む前に、まずは“歩く”ことを習慣に
この研究は、腰痛を未然に防ぐために、誰にでも実践できるシンプルな習慣「歩くこと」がいかに効果的であるかを科学的に証明しました。
- 💡 毎日 78分以上のウォーキングで腰痛リスクを大幅に軽減
- 💡 激しい運動よりも歩行の“量”が重要
- 💡 ウォーキングはお金も器具もいらず、誰でも今日から始められる腰痛対策
腰痛対策に高いお金をかける前に、ぜひこの「科学が推奨する最も簡単な方法」を実践してみてはいかがでしょうか?