2025年6月、イスラエルによるイランへの先制攻撃を皮切りに、両国間で激化した武力紛争は、従来のミサイルや爆弾だけでは語れない、新たな“情報戦”の時代を象徴する戦いとなりました。極超音速ミサイルや地下核施設攻撃など最新兵器が投入される一方で、SNSやメディアを駆使したプロパガンダ、フェイク画像・動画の拡散、そして国家ぐるみのサイバー作戦など、心理的・情報的戦術が前面に出た異例の戦争です。

📲 偽情報がSNSとテレビを席巻──「攻撃映像」も「証拠画像」もAI生成だった?
紛争開始後、イランとイスラエルの双方が、SNSや公共放送を通じて大量の情報発信を行いました。しかし、その多くは「事実に見せかけた偽情報」だったことが後に判明しています。
たとえば、あるX(旧Twitter)投稿では、「イスラエルの諜報機関モサド本部が攻撃を受けた」との画像が出回りましたが、看板には実際の表記「Mossad」ではなく「Mosad」と書かれており、AIによる生成画像である可能性が指摘されました。
また、「イスラエルがイランの攻撃を受けた瞬間」とされる動画も拡散されましたが、実際には2024年にレバノンで撮影された全く別の映像であり、意図的な誤用が疑われています。

また、以下のシーンを含む動画が「イスラエルがイランからの攻撃を受けている様子」としてSNSで拡散されましたが、動画の正体は2024年にレバノンで撮影されたものでした。これらの偽情報はイスラエル国内の世論を誘導するべくイランによって拡散されたものだと見られています。

🔓 監視カメラのハッキングも? イランによる“監視と攪乱”の戦術
イラン側はSNS上の情報操作だけにとどまらず、イスラエル国内の防犯カメラシステムへのサイバー攻撃も展開していたと報じられています。
イスラエル政府は「イランが家庭用カメラをハッキングし、リアルタイムで攻撃に関する情報を収集している可能性がある」として、国民に対して監視カメラの電源を切るよう公式に警告しました。
これにより一般市民の生活にまで情報戦が入り込むという、極めて異常な状況が生まれています。

🎙️ イスラエルの対抗手段──ペルシャ語での心理操作とAI音声メッセージ
もちろん、イスラエル側も情報戦を積極的に展開しています。
SNS上では**ペルシャ語で「イラン政府への不信感を煽る投稿」**が多く見られ、さらにAIで合成されたペルシャ語の音声メッセージまでもがイラン国内へ向けて拡散されました。
こうした情報操作に対抗するため、イラン政府はインターネット接続を遮断。2025年6月17日〜21日にかけて、イラン国内では数日間にわたりネットにアクセスできない状態が続きました。さらに、通信手段の抜け穴とされる「Starlink」の使用を禁止する法律も議会で可決されました。
🧠 情報戦は戦場の一部──過去の投稿から読み解く“心理作戦”
今回の情報戦は、偶発的なフェイク拡散にとどまらず、長期的な心理作戦の一環として位置づけられます。
実際、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相(当時は外相)は2024年9月、アリ・ハメネイ師が潰れた卵の中にいる画像をSNSに投稿し、「イランは卵のような国で、外は硬くても中身は脆い」と揶揄するコメントを添えました。
このようなシンボリックかつ侮辱的なビジュアル戦略は、国家レベルの情報操作の一部として使われており、軍事的衝突以上に世論や敵国の心理を揺さぶる狙いがあります。
🛰️ 情報が武器となる時代──現代戦争における“第5の戦場”とは?
今回のイスラエル・イラン間の紛争で浮かび上がったのは、情報が「兵器」として機能する現代戦の新たな姿です。
- AI生成による偽画像・偽動画
- SNSでの意図的拡散
- インターネット遮断・通信制限
- 国家による心理的プロパガンダ
- 一般市民のITインフラを利用した監視
これらは、従来の陸・海・空・宇宙に続く**「第5の戦場」=サイバー・情報領域**での戦いといえるでしょう。
📝 結語:真実を見抜く力が問われる時代へ
AIやSNSが生活に密着する現代において、私たちは意図的にデザインされた情報に囲まれています。国家間の武力衝突においても、その本質は「いかに多くの人間の感情と判断を動かすか」という情報戦へと移行しつつあります。
メディアリテラシーと情報精査能力が、平時・有事を問わず極めて重要な“市民の防衛力”となる時代が、すでに始まっています。