2025年7月、フランス当局はSNS「X（旧Twitter）」のアルゴリズムが外国勢力による政治干渉の手段として悪用された疑惑について、本格的な捜査を開始したと発表しました。捜査の焦点は、アルゴリズムの不透明な変更や、それに伴う政治的偏向、ヘイトコンテンツの拡散などが、民主主義への重大な脅威となっているかどうかにあります。
📌 捜査のきっかけは「アルゴリズムが世論操作に使われた」という複数の通報
この捜査の発端は、2025年1月に提出された2件の通報にあります。
- 1件目：中道派議員エリック・ボトレル氏の申立て
サイバーセキュリティに詳しい同氏は、「Xのアルゴリズムが明確な基準なしに変更され、マスク氏の意向が反映されている」と指摘し、SNSとしての中立性を失っていると警鐘を鳴らしました。 - 2件目：行政側サイバーセキュリティ部門の責任者による通報
こちらでは、「アルゴリズムが操作された結果、フランス国内における民主的議論が歪められ、ヘイトスピーチや差別的発言が大幅に増加した」との懸念が表明されました。
これらの報告を受け、ローレ・ベックオー検察官は、Xとその運営企業、そして一部の個人に対して捜査を行う方針を明言しました。
🧠 捜査の中心にある「アルゴリズムの透明性と責任」
フランス当局は、Xが意図的にアルゴリズムを操作し、特定の政治的思想を強調した可能性に着目しています。特に問題視されているのは次の点です。
- アルゴリズムの基準が非公開かつ曖昧
どの投稿が「おすすめ」として優先表示されるかがブラックボックスである点が、情報操作の温床になりうるとされています。 - 特定思想の強調・拡散
ボトレル議員は「Xの偏った情報表示がマスク氏の政治観と一致しており、それがアルゴリズム操作によって実現されている」と指摘しました。
⚖️ 仮に有罪が確定した場合の刑罰とは？
フランスメディア「Le Monde」によると、捜査対象となっているのは「自動データ処理システムの操作」および「データの不正抽出」であり、これは最大10年の禁錮刑および**30万ユーロ（約5200万円）**の罰金が科される重罪です。
さらに、この事件は単なるSNS企業の不正ではなく、「民主主義そのものを揺るがす深刻な案件」として国家レベルで注視されています。
📣 フランス議会・研究者・行政が一丸となった異例の対応
ローレ・ベックオー検察官は今回の捜査において、
「フランスの研究者による技術的な検証と、複数の政治組織から提供された証拠に基づき、捜査を開始する」
とコメントしており、議会と行政が連携し、SNSの影響力とそのリスクに対して本格的な対応を取っていることがわかります。
🤖 Grok（xAI）への批判も同時に高まる
この報道と同時に、Xが提供する生成AI「Grok」への批判もフランス国内で高まっています。議員らは、Grokによる政治的発言や、侮辱的な回答などが「人間の価値観や民主主義を侵害する危険性がある」として、規制の必要性を訴えています。
✍️ まとめ：SNSアルゴリズムと民主主義の衝突が顕在化
今回のフランスによるXへの捜査は、SNSが情報の流通を独占的にコントロールする現代において、「誰がアルゴリズムを動かし、どんな意図で情報を届けるか」が民主主義に直結する問題であることを改めて示しています。
今後の焦点は、
- アルゴリズムの透明性
- SNS企業の説明責任
- 国際的なプラットフォームへの規制対応
といった領域に移っていくと考えられます。SNSが単なる「自由な発信の場」から「世論を動かす強力な武器」へと変化した今、世界各国で同様の動きが加速する可能性もあるでしょう。
