はじめに:前代未聞の“業務報告命令”
2025年2月23日、アメリカ政府の新設組織「政府効率化省(DOGE)」のトップに就任したイーロン・マスク氏が、全連邦政府職員に対し「先週何をしたのか説明せよ。返答がなければ辞職扱い」とするメールを送信し、各省庁に緊張が走りました📩。
マスク氏はX(旧Twitter)で「これは大統領(ドナルド・トランプ氏)の指示に基づく」と明言。
さらに「政府職員の中にはほとんど仕事をせず、メールすら確認しない者が多い」と指摘し、不正受給の可能性にも言及しました。

📜 命令メールの概要と期限
報道によれば、このメールはFBIや国務省を含む複数の政府機関に送信され、返信期限は「2月24日23時59分」と設定されていました。
ただし、マスク氏がSNSで述べた「返答しなければ辞職とみなす」という文言は、メール本文には直接書かれていなかったとのこと。
メールの内容はシンプルで、「先週の業務成果を簡潔に報告せよ」というもの。マスク氏は「報告は2分で済む標準的な業務プロセスだ」と強調しています。

💬 マスク氏の主張
マスク氏は今回の施策について、次のように説明しています。
- 政府職員の中に、ほとんど仕事をしていない者がいる
- メールを一切確認しない職員もいる
- 一部では架空の人物や死亡者の身元が給与受給に利用されている可能性がある
- これらは明らかな詐欺行為であり、早急な是正が必要
しかし、海外メディア「The Verge」は「マスク氏はこの不正の証拠を提示していない」と指摘しています。マスク氏はこの施策について、「問題なのは、政府のために働いているはずのかなりの数の人々が、仕事をほとんどせず、メールをまったくチェックしていないという点です。場合によっては、実在しない人物や死者の身元が給料の受け取りに利用されているとも考えられます。これは明らかな詐欺行為です」と説明していますが、海外メディアのThe Vergeは「(マスク氏は政府職員が詐欺行為を行っているという)証拠を提示していない」と指摘しました。

⚖️ 法的・政治的な反発
この“業務報告命令”は、法律的・政治的な観点からも議論を呼んでいます。
- サム・バゲンストス氏(ミシガン大学法学教授)
「一部職員に連邦法違反を求める可能性がある」 - ハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務
「マスク氏には法的権限がない。職員やその家族に不必要なトラウマを与えた」
一部省庁の幹部は職員に「対応は指示を待つように」と通達しましたが、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ局(CISA)では「正当な要請に従うように」と指示したと報じられています。
🛡️ 労働組合や関係団体の対応
- アメリカ連邦政府職員連盟や全米財務省職員組合は、職員に「まだ返答しないで」と呼びかけ
- **全米航空管制官協会(NATCA)**は「脆弱なシステムに対する不必要な妨害だ」と批判
- 一部の職員は業務多忙の中で短時間の報告対応を迫られ、混乱が拡大
🔍 背景:DOGEとマスク氏の手法
政府効率化省(DOGE)は、トランプ政権下で行政効率化を目的に設立された新組織です。
マスク氏はX買収時にも、社員に対して「ハードコアな職場を受け入れるか辞めるか」の選択を迫ったことで知られており、今回のアプローチも**“マスク流”の圧力戦略**だと指摘されています。
📈 今後の影響と懸念
今回の命令は、行政組織の透明性向上や不正防止という目的がある一方で、
- 職員のモチベーション低下
- 各省庁間の混乱
- 法的権限の有無をめぐる訴訟リスク
- 政権と労働組合の関係悪化
といった副作用も懸念されています。
まとめ:透明化か混乱か
イーロン・マスク氏の“48時間ルール”は、政府の無駄を削減するという大義を掲げつつも、その強硬な手法が大きな議論を呼んでいます。
透明性向上と組織改革の推進になるのか、それとも官僚組織を不安定化させるだけなのか――。今後の展開は、アメリカ政治と行政運営の行方を左右する重要な試金石となりそうです。

