Appleのユーザーインターフェース(UI)デザインを長年率いてきたアラン・ダイ(Alan Dye)氏が退社し、ライバルのMeta(旧Facebook)へ移籍することが明らかになりました。
ダイ氏は2025年12月31日付でMetaのReality Labsチーフデザインオフィサーに就任し、同社のハードウェア&AIデバイスの体験設計を統括するポジションに就きます。
さらに、Appleのデザインシニアディレクターだったビリー・ソレンティーノ氏も同時にMetaへ移籍。
一方でApple側では、COOやAI責任者を含む**幹部クラスの“連続離脱”**が続いており、「Appleは組織の転換期に入ったのではないか?」という見方が強まっています。

この記事では、
- アラン・ダイとはどんな人物か
- Metaは何を狙ってこの人事を仕掛けたのか
- Appleで進む“静かな人材流出”の構図
- 背景にあるAI・XR(拡張/複合現実)競争
- Appleは本当に「危機」なのか、それとも「世代交代」なのか
を整理しつつ、読みやすい構成で解説します。

👤 アラン・ダイとは誰か?Apple UIの「顔」としての20年
アラン・ダイ氏は、約20年にわたりAppleのデザイン組織でキャリアを積み上げてきたベテランで、近年は**Vice President of Human Interface Design(ヒューマンインターフェース担当VP)**として、AppleのUI全般を率いてきた人物です。
主な関与プロジェクトは:
- Apple Watchのインターフェースデザイン
- iOSやiPadOSの大規模なUIリデザイン
- iPhone X以降の「フルスクリーン」体験
- Apple Vision Pro向けのvisionOS UI
- iOS 16以降で象徴的な「Liquid Glass」的な質感表現 など
つまり、私たちが日常的に触れているAppleデバイスの“見た目と触り心地”の大部分に関わってきたキーパーソンと言えます。
そのダイ氏がAppleを離れ、MetaのReality Labsでチーフデザインオフィサーという新設ポジションに就く──この事実だけでも、シリコンバレーでは「大きな勢力図の変化」として受け止められています。

🕶 Metaがダイ&ソレンティーノを獲得した狙いとは?
Metaは今回、アラン・ダイ氏に加え、AppleでvisionOSやコンピュテーショナルフォトグラフィなどを手がけてきたビリー・ソレンティーノ氏も同時にReality Labsへ招き入れました。
Reality Labsは、
- Meta Questシリーズ(VRヘッドセット)
- Ray-Banコラボのスマートグラス
- 次世代AI搭載ウェアラブルデバイス
といった**“ポストスマホ”のハードウェア+UI/UX**を担当する中核部門です。
マーク・ザッカーバーグCEOは、
AIは「新しいデザインの素材」だ
と語っており、AI+空間コンピューティング+ウェアラブルを一体として、「人とコンピュータの付き合い方そのものを作り直す」ことを狙っています。
そこに、
- Apple WatchやiPhoneのUIを作り上げたダイ氏
- Vision Proやカメラ体験を支えてきたソレンティーノ氏
を投入することで、
- Meta製デバイスのUIのバラつきや“チープさ”を一掃したい
- Apple的な「完成度の高い一体感」をReality Labsにもたらしたい
という意図が透けて見えます。
「AIグラスの時代」を見据えて、“ハード×ソフト×AI×デザイン”を統合するスタジオをMeta内に作る──そこでダイ氏がトップに立つというのが今回の構図です。

🧩 Apple側の動き:後任スティーブン・ルメイはどんな人物?
もちろん、Appleも手をこまねいているわけではありません。
ダイ氏の後任として指名されたのが、ベテランデザイナーのスティーブン・ルメイ(Stephen Lemay)氏です。
- 1999年からAppleに在籍
- 25年以上、主要プロダクトのUIデザインに関与
- 社内では「寡黙だが職人的」と評される存在
ティム・クックCEOは社内向けコメントで、
「ルメイ氏は常に卓越した基準を示し、Appleの協力と創造性の文化を体現してきた」と高く評価しています。
ポイントはここです👇
- デザインの“血筋”は内部で継承しつつ
- 外部からはトップクラスの人材を引き抜かれている
という、やや複雑な状況にあることです。
Apple内部としては、
- 「ジョナサン・アイブ → アラン・ダイ → スティーブン・ルメイ」
と、デザインリーダーシップの系譜をつないでいるつもりですが、社外から見ると
- 「看板となる顔が次々と外に出ていっている」
ようにも見える──ここに評価のギャップが生まれています。
⏬ デザインチームだけじゃない、Apple幹部の“静かな大量離脱”
今回のアラン・ダイ氏の退社は、実はAppleの人材流出パターンの一部に過ぎません。
ここ数年、特に2025年に入ってから、Appleでは幹部クラスの離脱が相次いでいます。
🧓 COOジェフ・ウィリアムズの引退
- 長年COOとしてサプライチェーンや製造を統括
- ティム・クックCEOの後継候補とも目されていた人物
- 2025年に引退が発表され、社外の取締役就任などが報じられる
Appleの「オペレーション力」を支えてきた象徴的な人物であり、
この引退はポスト・クック時代の布石が徐々に動き出しているサインとも受け取られています。
🧠 AI責任者ジョン・ジャナンドレアの退任
- 元Google出身で、AppleのAI・ML戦略の中核を担った人物
- Siri刷新や生成AI基盤の立て直しを託されていたが、計画の遅れも指摘
- 2026年春にかけて段階的に退任し、アドバイザー的役割へ
後任には元Google/Microsoftのアマル・スブラマニヤ氏が就任し、
AppleのAI戦略は「Federighi(ソフトウェア)直下の体制」に再編されつつあります。
🔍 AI検索責任者ケ・ヤンのMeta移籍
- 「ChatGPT風のAI検索機能」を率いていたと報じられる幹部
- 2025年10月、Metaへの転職が明らかに
- SiriのリアルタイムWeb検索や、生成AI検索の中核人材だったとされる
AI・検索領域では、すでに十数人規模でAppleからMetaや他社へ流出しているとも報じられており、
「AI人材のタレントウォー」でAppleがやや後手に回っているのは否めません。
⚙ 半導体トップ/他幹部の去就
- Apple Siliconを率いるジョニー・スルージ氏についても、去就に関する憶測が報じられた時期がありました(本人は「辞めるつもりはない」と火消し)
- 環境・政策担当VPのリサ・ジャクソン氏も退任予定とされ、
法務・政策・環境を含む**“非プロダクト領域”でも世代交代が進行**しています。
🧠 背景にある「AI・空間コンピューティング戦争」
では、なぜ今、これほどまでにAppleとMetaの間で幹部・デザイン人材の移籍が目立つのでしょうか?
キーワードは、
- AI
- 空間コンピューティング(AR/VR/MR)
- ウェアラブルデバイス
の三つ巴の戦いです。
Meta:AI+XRで「ポストスマホ」を獲りにいく
MetaはReality Labsを通じて、
- Questシリーズ(VR)
- Ray-Banスマートグラス
- 将来の「AIグラス」
を前提にした、ポストスマホ時代のOSとUIを作ろうとしています。
そこに、Appleの
- UIトップ
- Vision Proやカメラのエキスパート
- Siri/検索の幹部
を次々と引き抜いている構図は、
**「Appleの未来像を中から知っている人たちをMeta陣営へ入れている」**とも解釈できます。
Apple:iPhoneビジネスの延長とAIの再定義
一方でAppleは、
- iPhone・Mac・iPadという既存ハードの延長線上でのAI機能追加
- Apple Vision Proを中心とした空間コンピューティングの模索
- Siri刷新と、他社モデル(例:外部LLM)の組み込み検討
といった取り組みを進めていますが、
AIやXRでの**「分かりやすい決定打」**はまだ出ていません。
そのタイミングで、
- デザイントップがMetaへ
- AI検索責任者もMetaへ
- AI部門トップも退任へ
というニュースが重なったことで、
「Appleは本当にAI/XR時代の主役でいられるのか?」
という疑問が、投資家や開発者コミュニティでささやかれ始めています。
🔄 これは「崩壊」か「世代交代」か?
とはいえ、これを**「Apple崩壊」のシグナルと断言するのも極端**です。
Apple側のポジティブ要素
- デザインはスティーブン・ルメイ氏を筆頭に社内で継承可能な人材プールがある
- AI組織は再編中であり、新たなリーダー(アマル・スブラマニヤ氏など)が就任済み
- Apple Siliconやハードウェアエンジニアリングの中核人材は現時点で残留
また、
Appleはこれまでも
- スティーブ・ジョブズの死去
- ジョナサン・アイブの独立
- IntelからApple Siliconへの大転換
など、大きな節目を経験しながらも、組織ごと「静かに作り直す」ことを得意としてきた企業です。
それでも「転換期」であることは確か
ただし、
- デザイン・AI・オペレーションというコア領域の幹部が同時期に動いている
- 一部の人材は、明確にライバル企業(特にMeta)側に回っている
という状況を考えると、
「iPhone以降のAppleをどう再定義するか」
という問いに対して、
Apple内部で根本的な見直しと世代交代が進んでいるのは間違いありません。
✅ まとめ:UIデザインの「流出」はAppleの次の章の始まりかもしれない
今回のポイントを整理すると:
- AppleのUIデザイン責任者アラン・ダイ氏が退社し、Meta Reality Labsのチーフデザインオフィサーに就任
- 同時に、Appleのデザインシニアディレクター・ビリー・ソレンティーノ氏もMetaへ移籍
- MetaはAI+XR+ウェアラブルの「ポストスマホ時代」を見据え、Apple流の高品質デザインを自社のハード・ソフトに持ち込みたい思惑がある
- Apple側では、スティーブン・ルメイ氏を後任に据えつつも、COO・AI責任者・AI検索責任者など幹部クラスの離脱が相次ぎ、「転換期」に差し掛かっている
- これは崩壊というより、AI・空間コンピューティング時代に向けた組織と戦略の大規模な組み替えと見る方が実態に近い
ユーザー体験の世界では、
**「どの企業が一番いいデバイスを作るか」**よりも、
**「どの企業が“人間中心の体験”を一番うまく再設計できるか」**が問われ始めています。
その競争の最前線に、
かつてAppleのUIを作り上げた人材がMeta側に立つ──
2025年末のこのニュースは、ポストiPhone時代の主役争いが本格化した象徴的な出来事として記憶されるかもしれません。
📚 参考・出典
※本文中のURLリンクは省略し、主要な出典をここに整理しています。
- Bloomberg, Apple’s Top Designer Alan Dye Poached by Meta in Major Coup
- MacRumors, Apple UI Design Chief Alan Dye Leaving for Meta
- WIRED, Meta Poached Apple’s Top Design Guys to Fix Its Software UI
- Android Central, Meta just stole two of Apple’s biggest lead designers…
- Business Insider, Meta hires longtime Apple design leader Alan Dye to run a new Reality Labs creative studio
- India Today, iPhone Liquid Glass UI designer Alan Dye leaves Apple, to join Meta as chief design officer
- 各種報道:Ke Yang(AppleのAI検索責任者)らのMeta移籍に関する記事
- MacRumors / The Verge等:John Giannandrea退任およびAppleのAI組織再編に関する報道
- 各種ビジネスメディア:Jeff Williams引退、Lisa Jackson退任予定、Johny SroujiのコメントなどApple幹部人事に関する記事
