長らく、海賊版コンテンツの利用者は「若い男性が主な層」と考えられていました。しかし、近年の調査結果からは利用者層が多様化していることが明らかになり、特に欧州連合(EU)や東南アジア地域で顕著に見られる傾向が浮き彫りになっています。性別や年齢を問わず、海賊版利用者が増加する現状を調査結果をもとに解説します。
海賊版利用者の主な層が変化:10年前は「若い男性」が中心
2013年、スウェーデンのルンド大学は、当時最大のトレントサイトの一つ「The Pirate Bay」と協力し、7万5000人を対象にした海賊版利用に関する調査を実施しました。この調査では、海賊版利用者の95%が男性で、その大部分が若年層であることが判明しました。このため、「海賊版は若い男性が主に利用している」とのイメージが広まり、長く定着していました。
2023年のEU調査で明らかになった利用者層の多様化
2023年、欧州連合知的財産局(EUIPO)が行った調査では、年齢層や性別による利用傾向の変化が確認されました。調査結果によれば、海賊版コンテンツ利用者の性別や年齢分布が大きく多様化していることが示され、年齢や性別は必ずしも決定的な要因ではなくなっていることがわかりました。EUはこの調査を通じて、特定の性別や年齢層への偏りを見出すのが難しくなっていると結論づけています。
女性利用者が男性を上回る国も:インドネシアとタイでの調査結果
2024年には、イギリスのノーサンブリア大学の研究チームが、タイとインドネシアにおける海賊版利用のジェンダーと年齢に関する調査結果を発表しました。この調査により、インドネシアでは特に音楽や映画などのエンターテインメント系コンテンツで女性の利用者が男性を上回っていることが明らかになりました。具体的には、インドネシアにおけるコンピュータソフトウェア関連のみ男性がやや多く、それ以外のジャンルでは女性の利用が多い傾向が確認されています。
一方、タイでは、ほぼすべてのジャンルで男性の利用者数が女性を上回る結果となりましたが、他国と同様に利用者層が多様化していることが確認されました。
海賊版利用の年齢分布:若年層以外にも広がる
さらに、ノーサンブリア大学の調査によれば、年齢層でも分布の変化が見られます。かつては18~29歳の若年層がボリュームゾーンとされていましたが、現在では30~39歳や40~49歳の利用者も増加傾向にあります。インドネシアとタイにおいても、18~39歳が主要な層であることに変わりはありませんが、より幅広い年齢層にわたって利用が確認されるようになりました。
海賊版コンテンツ消費傾向の多様化が示す課題
今回の調査結果に基づき、著作権侵害の取り組みが必要な点について、ノーサンブリア大学の研究チームは「著作権侵害対策の方針や戦略を地域差や利用者層に応じて調整する必要がある」と述べています。特に、国ごとに利用傾向やコンテンツの好みが異なるため、効果的な対応策を講じるためには、ジェンダーや年齢だけでなく、地域性も考慮したアプローチが重要です。
まとめ
かつて「若い男性が中心」とされていた海賊版コンテンツの利用者層は、時代と共に大きく変化し、性別や年齢を問わず広がりを見せています。東南アジアの一部の国では、特に女性の利用者が増えている状況が明らかになっており、著作権侵害への対応策も多様化が求められる時代に入っています。
著作権者や政府機関がこれらの変化にどのように対応していくのかが今後の焦点となり、各国の対策が海賊版問題の解決に向けてどのように進展していくかが注目されます。
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