「物忘れ」は実は進化の恩恵？研究が示す意外なメリットとは 🧠💡

「物忘れ」は実は進化の恩恵？研究が示す意外なメリットとは 🧠💡

「何をしようとしていたんだっけ？」——誰もが経験する物忘れ。「すべての記憶をずっと覚えていられたら便利なのに」と思ったことがある人も多いでしょう。しかし、最新の研究によると 「物忘れ」には進化的なメリットがある というのです。

アイルランドのダブリン大学で心理学教授を務めるスヴェン・ヴァネステ氏らの研究によると、脳が記憶の一部を意図的に「忘れる」ことで、より重要な情報を効率的に処理し、状況の変化に適応しやすくなるのだとか。

🔍 なぜ人間は記憶を忘れるのか？
📌 忘れることの進化的メリットとは？
🔬 科学が証明！失われた記憶は「完全には消えていない」
📝 まとめ：物忘れは脳の最適化戦略だった！

🔍 なぜ人間は記憶を忘れるのか？

記憶は時間が経つにつれて自然に薄れていきます。これは 「忘却曲線」 として知られる現象で、19世紀の心理学者ヘルマン・エビングハウスが発見しました。

📉 忘却曲線とは？

新しく覚えたことは時間の経過とともに急速に忘れ去られる
何度も復習することで記憶を定着させることができる

このように、記憶は「時間とともに失われる運命にある」ように見えますが、ヴァネステ氏によると 忘却は脳にとって「適応的なプロセス」 であり、情報の取捨選択をすることで、より効率的な思考が可能になるとのこと。

📌 忘れることの進化的メリットとは？

❶ 必要な情報に集中しやすくなる
人間の脳は、日々膨大な情報にさらされています。もし、すべての情報を記憶し続けることができたら……？

🤯 情報過多による混乱

重要でない情報に埋もれ、必要な情報を素早く取り出せなくなる
どの情報が大事なのか判断しづらくなる

記憶を整理し、重要な情報だけを残すことで 脳の処理能力を最適化する ことができます。

❷ 環境の変化に適応しやすくなる
例えば、あなたがいつも通る通勤ルートが工事で閉鎖された場合、新しいルートを記憶し直さなければなりません。

🛣️ 記憶の上書きが可能に！

脳は「使わなくなった情報」を忘れ、新しい情報を優先的に記憶する
変化に素早く適応し、生存率を高める

これは、狩猟採集時代の人類にも当てはまりました。例えば、安全な水場がライバル部族の拠点になった場合、その場所を 「危険な場所」として更新する 必要があったのです。

❸ トラウマからの回復を助ける
心的外傷後ストレス障害（PTSD）では、トラウマ的な記憶が脳に強く刻まれ、忘れたくても忘れられません。しかし、通常の記憶プロセスでは 不要な記憶が自然に薄れていく ため、精神的な負担を軽減する役割もあります。

🔬 科学が証明！失われた記憶は「完全には消えていない」

2014年のマウス実験では、一度失われた記憶に関するニューロンの接続を人工的に活性化させることで、「忘れたはずの記憶」をよみがえらせることができた そうです。

💭 「舌先現象」を経験したことは？

知っている単語が思い出せない けど、関連情報は浮かぶ
これは 「記憶が完全に消えているわけではない」 ことを示している

つまり、私たちが忘れるのは 記憶自体がなくなるのではなく、それにアクセスする能力が弱まるだけ かもしれません。

もしすべての記憶を忘れることができないと、重大な悪影響が生じる可能性もあります。心的外傷後ストレス障害(PTSD)はトラウマ的な出来事を経験した後、日常生活に支障が出るほどの不快な反応が生じる疾患ですが、もしトラウマ的な記憶を忘れたり更新したりできない場合、PTSDの治療はさらに難しいものとなります。ヴァネステ氏らは、「進化の観点からいえば、新しい情報に反応して古い記憶を忘れることは間違いなく有益です。狩猟採集生活をしていた私たちの祖先は、安全な水場を何度も訪れていたかもしれませんが、ある日そこにライバルの集落ができていたり、生まれたばかりの子グマがいるのを発見したりすると、彼らの脳はこの場所がもはや安全でないというラベルを貼るために記憶を更新できる必要がありました。それができなければ、彼らの生存を脅かすことになります」と述べました。

また、マウスを対象にした2014年の研究では、一度分離した記憶に関するニューロンの接続を人工的に活性化すると、失われたはずの記憶をよみがえらせることができました。これは、記憶は完全に失われるのではなく、記憶にアクセスする能力が変化しただけであることを示唆しています。実際に、何か特定の単語は思い出せないもののその周辺情報はたくさん思い出せるという「舌先現象」は、多くの人が経験しているはずです。舌先現象については、単語と意味の間の接続が弱まった結果として発生するという説や、「この記憶は失われていない」というシグナルとして機能するという説があるとのこと。