私たちの住む地球の表面の多くを覆っている深海。しかし、2025年に発表された最新の研究によれば、人類がこれまでに視覚的に探査できた深海底の範囲は、**わずか0.001%**に過ぎないという驚きの結果が示されました。
📘 調査を行ったのは誰?
この研究は以下の機関の共同によって実施されました。
- Ocean Discovery League(ODL)
- スクリップス海洋研究所
- ボストン大学
📄 論文(Science Advances掲載)
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📢 解説記事:
👉 ScienceAlertによる報道

🔍 視覚的に探査されたのは、埼玉県より少し広い範囲だけ?
研究チームは、水深200メートル以上の潜水記録4万3000件以上を分析。その結果明らかになったのは以下の事実です。
🌐 深海底の探査範囲(視覚的に確認された面積):
- 最大値:3823平方キロメートル
- 最小値:2130平方キロメートル
これは、地球上の深海底(3億3570万平方キロメートル)の約0.001%。日本でたとえると「埼玉県の面積よりやや広い程度」にすぎません。

🕳️ 深海とは?なぜ探査が難しいのか
深海とは、一般に水深200メートル以上の海域を指します。地球の表面積の約66%がこの深海に分類されます。
しかし、
- 🌐 水圧が極めて高い
- 💡 光が届かない完全な暗闇
- 🚫 通信が制限される
といった極限環境のため、探査は非常に困難です。

📉 探査の回数は増えても、偏りが問題に
研究によると、1960年代から2010年代にかけて深海探査の回数は約4倍に増加しました。
しかし、深く観察する回数は逆に減少しています。
時代 | 2000m以上の潜水比率 |
---|---|
1960年代 | 約60% |
2010年代 | 約25% |
このように、観測の「深さ」には限界がある状況です。

Ocean Discovery Leagueの創設者であり会長のキャサリン・ベル氏は「気候変動から潜在的な採掘や資源開発まで、深海への脅威が加速する中、これほど広大な地域の限られた探査は科学と政策の両方にとって重大な問題となっています」と述べています。なお、研究チームは、仮に世界中で1000台以上の探査機を追加して深海底の探査を増やしたとしても、地球の海底全体を視覚化するには約10万年かかると予測しています。

🗺️ 地理的偏りも深刻:どこが探査されているのか?
3万5000回以上の潜水のうち、70%以上がアメリカ・日本・ニュージーランドの排他的経済水域内で行われていることが判明。
さらに、**潜水の97%**が次の5カ国によって実施されていました:
- 🇺🇸 アメリカ
- 🇯🇵 日本
- 🇳🇿 ニュージーランド
- 🇫🇷 フランス
- 🇩🇪 ドイツ
一方、多くの国の深海はほとんど未探査のままです。
🧭 特定の地形ばかりを観察?バイアスの影響
観測対象にも大きな偏りが存在します。たとえば…
海底渓谷の観測状況:
- 確認されている数:9472カ所
- 実際に視覚観測されたもの:442カ所(約4.7%)
中でも特定の渓谷ばかりが観測されていました。
🏆 観測回数1位:
アメリカ西岸のモントレー海底渓谷(全観測の48.2%)
🥈 2位:日本の相模湾
これにより、探査データの地形的多様性に欠けるという課題が明らかになりました。
⚠️ 科学・政策に与える影響は甚大
ODLの創設者であるキャサリン・ベル氏はこう警告しています。
「気候変動、資源開発、採掘計画などの影響が進む中、深海探査の進まなさは科学と政策両面で重大な課題です。」
🚀 今後どうなる?10万年かけても探査しきれない?
研究チームの試算によれば、仮に世界中で**1000台の無人探査機(ROVやAUV)**を投入しても、地球の深海全体を視覚的にカバーするには10万年かかるとのこと。
それだけ、人類が目にしていない世界が広がっているというわけです。
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📌 まとめ:深海は“最後のフロンティア”
人類はまだまだ深海のことをほとんど知りません
- ✅ 視覚的に探査したのはたった0.001%
- ✅ 地域的にも地形的にも観測の偏り
- ✅ 科学・環境・安全保障面で深海の理解は急務
私たちが知っているのは「ほんの表層」にすぎず、その先には壮大で未知なる海の宇宙が広がっているのです。