中国で進むオンライン詐欺の取り締まり──プライバシー問題とのせめぎ合い

中国で進むオンライン詐欺の取り締まり──プライバシー問題とのせめぎ合い #ニュース・社会・コラム
中国で進むオンライン詐欺の取り締まり──プライバシー問題とのせめぎ合い

中国で進むオンライン詐欺の取り締まり──プライバシー問題とのせめぎ合い

📌 中国では、急速に広がるオンライン詐欺への対策として、政府が大規模な監視を強化しています。しかし、その取り締まりが行き過ぎ、市民のプライバシーを侵害する問題が指摘されています。

オンライン詐欺が急増、中国政府の強硬な対策

中国では、経済の低迷が続く中で「簡単に稼げる」とうたうオンライン詐欺が横行しています。これを受けて、政府は厳格な取り締まりを実施しており、その影響が日常生活にまで及んでいます。

🔹 電話がかかってきた直後に警察が訪問⁉
ある中国人男性は、海外から電話を受けた直後に警察から連絡があり、「詐欺に巻き込まれる可能性がある」と警告されたといいます。さらに、わずか10分後には警察官が自宅に押しかけ、金融詐欺に関与していないという誓約書にサインを求められたというのです。

🔹 70億件以上の通話を監視
中国政府は2021年から2024年5月までの間に、70億件以上の通話と同数のテキストメッセージを傍受し、1800万件以上の面談を実施しているとのこと。詐欺師との接触を未然に防ぐために、政府が徹底的な監視を行っているのが実態です。

監視社会とプライバシー問題

📢 国民を詐欺から守る取り組みが、逆に市民の自由を奪っているという批判も強まっています。

🔹 監視の厳しさを肯定する人もいるが…
マイクロソフトのポスドク研究員であり、中国の監視体制に詳しい社会学者のChuncheng Liu氏は、「政府が自分たちを守ってくれていると考える人も多いが、監視されているという事実に疑問を抱く人も増えている」と指摘しています。

🔹 銀行口座の凍結や強制的な取り締まりも
ある男性は、新型コロナウイルス感染症で寝込んでいた際に詐欺の電話を受けただけで、警察に銀行口座を1カ月間も凍結されたといいます。やむを得ずAlipay(アリペイ)で生活費を工面することを許可してもらう必要があったとのこと。

「警察は市民のためにこうしたことをしているのは分かるが、もっと良い解決策があるのではないかと思う」と男性は語っています。

オンライン詐欺の深刻化とその背景

中国でオンライン詐欺が急増する背景には、経済の低迷が大きく関係しています。

📉 かつての安定した投資手段だった不動産市場は低迷し、低金利で投資も振るわず、多くの若者が失業。その結果、「すぐに儲かる」甘い言葉に騙される人が増えているのです。

🔹 被害者の平均年齢は37歳、若年層が狙われる
中国公安省のデータによると、2023年のオンライン詐欺被害者の62%が18歳~40歳に集中。被害者の平均年齢は37歳でした。

🔹 政府は「1兆1000億元(約22兆円)の被害を未然に防いだ」と主張
習近平国家主席は、2021年に大規模な詐欺取り締まりキャンペーンを開始。それ以降、22兆円以上の損失を防いだと政府は報告しています。

国際的な広がり──「豚殺し」詐欺と犯罪ネットワーク

特に注目されているのが、「ロマンティック・ベイティング(恋愛詐欺)」、通称「豚殺し(Shā zhū pán, 杀猪盘)」です。

🐷 「豚殺し」とは?
詐欺グループがSNSや出会い系アプリを使い、ターゲットと親密な関係を築いた後、大金をだまし取る手口。アジアを中心とした国際的な犯罪ネットワークを形成しており、近年被害が急増しています。

💰 仮想通貨で詐欺被害が拡大
カンボジアの詐欺プラットフォーム「Huione Guarantee(汇旺担保)」では、490億ドル(約7兆円)以上もの仮想通貨取引が行われていたことが発覚しました。

🌎 世界的な問題に発展
アメリカでは、成人の5人に1人がオンライン詐欺の被害に遭っているとの報告もあり、今や中国国内だけでなく、国際社会全体の問題となっています。

まとめ:詐欺対策とプライバシーのバランスが求められる

中国政府の詐欺対策は、一定の成果を上げているものの、市民のプライバシーを侵害しているという懸念が強まっている
オンライン詐欺は急増しており、特に若年層がターゲットになっている
監視社会のリスクとプライバシー保護のバランスが、今後の大きな課題となる

政府の強権的な監視と市民の自由、どちらを優先すべきか――中国のオンライン詐欺対策は、世界的にも注目される問題となっています。

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