🫀1日に何度も心臓が止まり失神する女性、革新的治療で日常生活を取り戻す

🫀1日に何度も心臓が止まり失神する女性、革新的治療で日常生活を取り戻す #news
食事や飲み込みをきっかけに1日何度も心臓が止まり失神していた女性が、心臓神経アブレーションで生活を取り戻した症例を解説。心抑制型失神、迷走神経、ペースメーカーとの違い、新治療の可能性を紹介します。

イギリス・ハートフォードシャー州に住む助産師のサラ・ホール氏は、食事や飲み込み動作をきっかけに失神を繰り返す非常に珍しい症状に悩まされていました。心臓モニターによる検査では、わずか1日のうちに心臓が12回も一時停止していたことが判明。食事、外出、運転、仕事、家族との時間まで制限される生活でしたが、インペリアル・カレッジ・ロンドンが主導する新しい治療法「心臓神経アブレーション」によって、生活は大きく改善したと報告されています。

😨食事のたびに失神、原因は「迷走神経」の過剰反応

失神は、脳への血流が一時的に低下することで起こる短時間の意識消失です。多くの場合は一過性ですが、一部の人では「咳をする」「排尿する」「飲み込む」「強い腹痛を感じる」といった特定の動作が引き金となり、心拍数や血圧が急激に低下します。ホール氏の場合は、食べ物や飲み物を飲み込む動作がきっかけとなり、迷走神経の反応が過剰に働いて心臓の拍動が一時的に止まる「心抑制型の反射性失神」と診断されました。飲み込みによって起きる「嚥下性失神」は非常に珍しく、世界でも報告例が限られているとされています。

🔍心抑制型失神とは何が起きているのか

迷走神経は脳から心臓、肺、消化器まで広く伸びる重要な神経で、心拍、呼吸、消化などを自動的に調整しています。通常は体を落ち着かせる方向に働きますが、反射が強く出すぎると心拍が極端に遅くなったり、一時的に停止したりすることがあります。その結果、脳へ十分な血液が届かなくなり、めまい、冷や汗、視界の暗転、失神が起こります。命に直結しにくいケースもありますが、転倒によるけが、運転制限、就労困難、外食への恐怖など、生活の質を大きく下げる病気です。

⚠️重度の反射性失神で起こり得る問題

  • 食事や飲水のたびに失神の不安が出る
  • 転倒や頭部外傷のリスクがある
  • 自動車の運転が制限される
  • 仕事や家事、育児に支障が出る
  • 外食や人付き合いを避けるようになる
  • 家族も常に見守りを求められる

ホール氏も、家族で食事をするだけでも「最後まで意識を保てるか」という不安がつきまとい、日常の食卓が恐怖の時間になっていたと語っています。

🔋従来治療はペースメーカーが中心だった

水分補給、生活指導、薬物療法などで改善しない重度の心抑制型失神では、従来はペースメーカーの埋め込みが有力な選択肢でした。ペースメーカーは心拍が極端に遅くなった時に電気刺激で拍動を補う装置で、重症例には有効な治療となります。一方で、体内に機器を埋め込むため、感染、リードの不具合、電池交換、長期管理といった課題があります。特に比較的若い患者の場合、生涯にわたって複数回の交換手術が必要になる可能性があり、できるだけ機器に頼らない治療法が求められていました。

⚡心臓神経アブレーションという新しい選択肢

今回注目されている「心臓神経アブレーション」は、心臓そのものの異常ではなく、心拍を過剰に低下させる神経の働きにアプローチする治療法です。全身麻酔下でカテーテルを心臓まで通し、心臓の表面付近にある自律神経の集まりを特定します。そのうえで、問題となる神経細胞に熱を加えて働きを弱め、迷走神経の過剰なブレーキを抑える仕組みです。

🩺治療の流れ

  • カテーテルを血管から心臓へ進める
  • 心臓周辺の電気的・神経的な地図を作る
  • 心拍低下に関わる神経領域を特定する
  • 高周波エネルギーで対象部位を焼灼する
  • 失神の頻度や心拍反応を経過観察する

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究では、2013年から2023年にかけて25人の患者にこの治療が行われました。患者は治療前、平均して年間19回の失神を経験していましたが、治療後12カ月では平均年間1回まで減少し、およそ4分の3の患者は失神をまったく起こさなくなったと報告されています。

🌍今後の課題と医療現場での位置づけ

心臓神経アブレーションは、ペースメーカーに代わる可能性がある治療として注目されています。特に、若年~中年で重度の反射性失神に悩み、薬物療法や生活指導で改善しない患者にとっては大きな希望となる可能性があります。ただし、まだ比較的新しい治療であり、対象患者の選び方、長期的な効果、再発率、安全性、施設ごとの技術差などは今後さらに検証が必要です。欧州の失神・ペーシング関連ガイドラインでも、重度の心抑制型失神ではペースメーカーが選択肢として扱われていますが、心臓神経アブレーションは今まさに臨床研究と実用化の間で評価が進んでいる段階といえます。

📝まとめ:失神を「よくあること」で片付けない重要性

サラ・ホール氏の症例は、失神が単なる一時的な体調不良ではなく、生活を大きく制限する深刻な病気になり得ることを示しています。食事や飲み込みをきっかけに心臓が一時停止し、1日に何度も失神していた生活は、心臓神経アブレーションによって大きく改善しました。

もちろん、すべての失神にこの治療が必要なわけではありません。しかし、失神を繰り返す、特定の動作で意識を失う、転倒を伴う、運転や仕事に支障が出ているといった場合は、循環器科で詳しい検査を受けることが重要です。新しい治療法の発展により、これまでペースメーカーに頼るしかなかった一部の患者に、新たな選択肢が広がりつつあります。

📚参考・出典

  • British Heart Foundation「Every time I ate a meal I feared my heart would stop beating」
  • Live Science「These patients’ hearts stopped a dozen times a day. An innovative procedure has transformed their lives.」
  • Imperial College London / NIHR Imperial Biomedical Research Centre 関連発表
  • Europace「Cardioneuroablation for the treatment of reflex syncope and functional bradyarrhythmias」
  • European Society of Cardiology「2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope」
  • European Society of Cardiology「2021 ESC Guidelines on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy」
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