― ノルウェーと日本で進む「データセンター × 養殖」革命
AI需要の急増により、世界中でデータセンターやスーパーコンピューターの電力消費が拡大しています。その結果として発生するのが、膨大な「排熱」。これまでは“ただの廃棄物”として捨てられてきましたが、近年はこの排熱を 「新たなエネルギー資源」 として活用する取り組みが世界各地で始まっています。
今注目されているのが、
スパコンやデータセンターの排熱を利用した養殖事業。
- ノルウェー:スパコン「Olivia」の排熱でサーモン養殖
- 北海道・美唄市:データセンターの排熱でウナギ養殖
という、ITと水産が融合したユニークな事例が実際に進行中です。

🧮 ノルウェー最強クラスのスパコン「Olivia」
― 再エネと液冷を組み合わせた環境配慮型 HPC
「Olivia」は、ノルウェーの国立研究インフラを担う機関と海外メーカーが共同開発した、国内トップクラスの性能を持つスーパーコンピューターです。
✔ Olivia の主な特徴
- CPU:最新世代のマルチコアプロセッサ
- GPU:約300基を超える高性能AI向けアクセラレータ
- 総コア数:6万超
- 用途:AI研究、気候予測、医療シミュレーションなど
- 再生可能エネルギーで稼働
- 高効率の液体冷却システムを採用
計算性能と環境性能の両立を前提に設計されており、従来型HPCよりも大幅に電力効率が改善しています。

🏔 レフダル鉱山データセンター
― 地下の巨大空間でスパコンを稼働、排熱はサーモン養殖へ
Oliviaが設置されているのは、ノルウェー北部の レフダル鉱山データセンター(Lefdal Mine Datacenter)。外観は山肌と自然景観に溶け込んでいますが、地下にはトラックが走れるほどの広大な空間が広がっています。
🧊 なぜ鉱山の地下にデータセンターを?
- 地下空間は温度変化が少なく、冷却効率が高い
- 電力はほぼ100%再生可能エネルギー
- 地下構造がそのまま断熱構造として機能
- 拡張性が高く、設備を水平に増設できる
これらの環境要因が、HPCの運用にとても適しているためです。

🐟 排熱をサーモン養殖に利用する仕組み
― “液冷スパコン → 温水 → 養殖水槽”の循環モデル
Oliviaは液体冷却システムで温度管理されており、計算処理で発生した熱は冷却水に蓄えられます。
その温水を、
- 熱交換器で取り出す
- サーモン養殖の水温に合わせて調整
- 養殖施設の温水として循環
という流れで再利用する計画が進んでいます。
サーモンの初期成育段階では、一定の水温を保つことで成長効率が向上するため、安定した温水は極めて価値の高い資源になります。
データセンター側としても「捨てるはずだった熱の再利用」というメリットがあり、環境面・経済面の両方で利点があります。

🇯🇵 北海道でも始まった「排熱×養殖」
― 雪冷却データセンター → ウナギ養殖という発想
日本版の事例として知られているのが、北海道美唄市の ホワイトデータセンター構想 です。
❄ 雪がデータセンター冷却に使われる理由
- 豪雪地帯で年間を通じて大量の雪が確保できる
- 降雪の“冷熱”を貯雪槽で保存し、自然冷却として使用
- 冷却後の排熱は逆に水産・農業に活用可能
- 化石燃料を使わず冷却ができ、環境負荷を大幅に削減
ここでは、データセンターの排熱によって温められた水を ウナギの養殖水槽 に利用しています。
ウナギは約30℃の温水で育つため、寒冷地では通常大きな加温コストが必要になります。しかし排熱を利用すれば、
- 追加燃料ゼロ
- 安定した温度供給
- 養殖の新しい産業化
といった効果が生まれ、寒冷地でもウナギを育てられるようになりました。

🌍 世界で広がる「排熱資源化」
― 地域暖房から温水プールまで
データセンター排熱の活用は、養殖に限りません。
♨ 海外で実施されている再利用例
- 地域住宅の暖房・給湯に排熱を供給
- 都市部の地域熱ネットワークに組み込み、冬季の暖房需要を80%以上カバー
- 温水プールを排熱だけで加温
- ビニールハウス農業の加温に利用
このように、排熱は「都市エネルギーの一部」として扱われる時代 に突入しつつあります。
🌱 なぜ今「排熱を活用する動き」が加速しているのか?
✔ ① データセンターの電力消費が増大
AI・クラウド・ストリーミングの急拡大により、世界的にデータセンター需要が増加。電力消費と排熱も急増しています。
✔ ② 脱炭素・再エネのプレッシャー
各国で CO₂削減義務が強化される中、
“捨てていたエネルギーを再利用する” 取り組みが求められています。
✔ ③ 食料生産の新しい形としての陸上養殖
気候変動や乱獲の影響で水産資源が不安定化。陸上養殖は温度管理が重要で、排熱はそのニーズにぴったり合っています。
✔ ④ 地方創生・新産業としての期待
北海道のような寒冷地は、雪冷却と排熱利用を組み合わせることで、独自のエネルギー循環型産業 を作り出す可能性があります。
🔚 まとめ:スパコンと養殖、異分野の融合が未来を変える
- ノルウェーでは最新スパコン「Olivia」が排熱をサーモン養殖に活用する計画が進行中
- 日本の北海道では、雪冷却データセンターの排熱を使いウナギ養殖が実際に行われている
- 排熱の再利用は、暖房・農業・地域エネルギーなど幅広い分野に応用可能
- 環境負荷の低減・エネルギー効率向上・地方経済の活性化といった多くのメリットがある
“熱をただ捨てる時代”は終わり、
“熱を育てる時代”が始まっています。
この潮流は、データセンターのあり方だけでなく、地域産業の未来を大きく変える可能性を秘めています 🔥🐟
📚 参考・出典(リンクなし・記事内に表示しない形式)
- Sigma2 情報資料
- HPE 公式発表資料(Olivia スーパーコンピューター納入に関する内容)
- ノルウェー Lefdal Mine Datacenter に関する技術紹介
- 日本・北海道美唄市のホワイトデータセンター構想および排熱利用事例
- 国内外データセンター排熱再利用に関する技術記事・専門レポート
- 排熱循環型エネルギーシステムに関する環境技術レポート
