野生霊長類にも“つまようじ溝”が自然発生していたという新研究
古代人の歯に見られる縦方向の溝は長らく
「道具を使って歯を掃除していた証拠(つまようじ溝)」
と考えられてきました。
しかし最新研究により、この溝が現代人以外の霊長類にも自然発生することが判明し、
“つまようじ=道具使用”という従来の定説に疑問が投げかけられています。

🔍“つまようじ溝”とは?
190万年前~ネアンデルタール人まで観察されてきた痕跡
古代人の化石歯には、以下のような特徴的な溝が確認されてきました。
- 縦方向の細い溝
- 摩耗痕がある
- 前歯〜奥歯まで幅広く発見
これらは、
- 棒状の道具で歯を掃除した
- 繊維で歯茎の痛みを和らげた
といった行動の証拠とされてきました。
190万年前の初期ヒト属から4万年前のネアンデルタール人まで広く報告されており、
「人類が早期から道具を使っていた証拠」と解釈されてきたのです。

🐒27種・531頭を分析 → 野生霊長類にも“同じ溝”が存在
つまようじを使わない霊長類でも4%が同様の溝を持っていた
オーストラリアのモナッシュ大学・イアン・タウル氏らの研究チームは、
現生種と絶滅種を含む27種・531頭の霊長類の歯を徹底調査。
対象には、
- ゴリラ
- オランウータン
- マカク
- コロブス
- 化石類人猿
など多様な霊長類が含まれています。

🧪その結果……
- 約4%の個体に人類の“つまようじ溝”とほぼ同一の溝が存在
- 霊長類はつまようじを使わないため、道具使用とは無関係に溝が自然にできる可能性が浮上
これにより、「つまようじ溝=道具使用の証拠」という定説は大きく揺らぐことになりました。

⚠️現代人だけに多い“アブフラクション”は霊長類には存在しなかった
生活習慣の違いが歯の摩耗に強く影響
研究では、現代人で頻繁に見られる
アブフラクション(歯と歯茎の境目にできるくさび型の病変)
にも注目。
- 歯ぎしり
- 強いブラッシング
- 酸性飲料の摂取
などが主な原因とされるこの病変は……
→ 他の霊長類では一切見られなかった。
タウル氏は次のように述べています:
「アブフラクションは、現代の生活習慣に特有の問題である可能性が高い」
つまり、
人類の歯の特徴は“道具使用”だけでなく現代の生活様式でも大きく変化しているということです。
🧠結論:つまようじ溝は“道具使用の証拠”とは限らない
咀嚼による摩耗・食習慣・文化行動など複数要因が考えられる
今回の研究を総合すると、以下が見えてきます:
- 霊長類にも“つまようじ溝”が自然発生する
- 現代人特有の歯の病変も、生活習慣で大きく変わる
- 古代人の歯の溝は必ずしも「道具使用」を意味しない
タウル氏は次のようにまとめています。
「化石人類の歯に刻まれた溝は、咀嚼による自然摩耗や文化的行動など、複数の可能性がある。
その解明には霊長類のデータ拡充が必要だ」
古代人の“歯の痕跡”の解釈は、今後さらに再検証が進むと考えられます。
📝まとめ:古代人の生活像が再び書き換わる可能性
今回の研究は、
- 古代人の道具使用の証拠
- 歯の痕跡の解釈
- 人類の進化史理解
に影響を与える重要な発見です。
「つまようじを使っていた」という長年の定説が誤りだった可能性が浮上したことで、
人類史の“当たり前”が今後大きく変わるかもしれません。

