愛犬がボールやフリスビーに夢中になる姿は可愛らしいものですが、その**「遊びへの異常な熱意」が、実は人間でいうギャンブルやゲーム中毒(行動嗜癖)**と類似している可能性があるという、衝撃的な研究結果が発表されました。
スイスのベルン大学の研究チームは、一部の家庭犬に見られる過度な遊びへの意欲を調査し、犬が人間以外で自発的に中毒に似た行動を示す唯一の動物であるかもしれないという点に着目しています。
飼い主さんなら誰もが経験する「ボール遊びへの執着」。その裏には、人間の嗜癖と同じような心理メカニズムが隠されているのでしょうか?

🧠 行動嗜癖とは? 犬が示す3つの主要なサイン
**行動嗜癖(しへき)**とは、長期的な悪影響があるにもかかわらず、報酬となる活動を繰り返し行ってしまうことを特徴とします。
研究チームは、特に遊びへの意欲が高いとされた105匹の犬を対象に、行動テストと飼い主へのアンケートを組み合わせ、「嗜癖様行動テストスコア(AB-Tスコア)」を用いて評価を行いました。
その結果、強い嗜癖傾向を示す**「高AB犬」**に分類された33頭は、そうでない犬(低AB犬)と比較して、以下の3つの主要な基準で顕著に高いスコアを示しました。
1. 渇望(Craving)
玩具への非常に強い欲求を示すこと。
2. 際立ち(Salience)
他の刺激よりも、遊びや玩具を圧倒的に優先すること。
3. 自己抑制の欠如(Loss of Control)
遊びたい衝動を抑えられないこと。

🎾 報酬を無視して玩具に固執する犬たち
高AB犬が示した行動テストの結果は、特に人間の行動嗜癖との類似性を強く示唆しています。
彼らは、例えば手の届かない箱に入れられた玩具に対し、有意に長い時間関わり続けました。さらに注目すべきは、他の魅力的な報酬を無視した点です。
- 🦴 餌入りのパズル
- 🤝 飼い主との交流
これらの通常は犬にとって非常に魅力的な報酬があるにもかかわらず、高AB犬はそれらを犠牲にして、手が届かない玩具に固執し続けたのです。
これは、人間が薬物以外の報酬(家族、仕事、健康など)を犠牲にしてでも物質を取り続ける行動嗜癖のパターンと酷似しています。

🏥 悪影響があっても止められない? 飼い主の証言
行動テストの結果は、飼い主へのアンケートでも裏付けられました。
高AB犬の飼い主の多くは、以下の項目に強い関連性を感じていました。
- 「遊びが満足いくまでますます多く必要になる」
- 「悪影響があるにもかかわらず遊び続ける」
過度な遊びは、関節や心臓への負担など健康上の問題を引き起こす可能性があります。それにもかかわらず遊びを止められないという基準が満たされていることは、「現実世界で悪影響があるにもかかわらず中毒のような行動を続ける」という嗜癖の定義に当てはまることを示唆しています。
おもちゃで遊ぶことは犬に喜びをもたらしますが、それが**「有害な強迫観念」**に変わると、問題が生じる可能性があるのです。

🔬 今後の研究が期待される犬の嗜癖メカニズム
今回の研究は、犬の過度な遊びへの意欲が、人間の行動嗜癖と類似した特性を持つことを初めて具体的に示しました。
研究チームは、今後の課題として、犬の中毒性行動の個体差と、人間の中毒性行動に関連する特性との関連性を探るべきだと結論付けています。
具体的には、以下のような特性が犬にも見られるかどうかが、さらなる研究の焦点となります。
- 衝動性の高さ
- 逆転学習の障害(学習したことを切り替えるのが苦手)
- 固執の亢進(特定の行動にこだわり続ける)
- 報酬を得た反応の消去の遅延(報酬が得られなくなっても止められない)
愛犬の行動への理解を深めるためにも、今後の研究に期待が高まります。愛犬の過度な遊びに悩んでいる飼い主さんにとっては、しつけの問題だけでなく、その裏に潜む心理的なメカニズムを理解するための大きな一歩となるでしょう。
