母親の「細菌」が子どもの脳の発達に影響する可能性 🧬🧠

母親の「細菌」が子どもの脳の発達に影響する可能性 🧬🧠 #news
人間を含むあらゆる動物の体は、皮膚や腸などに生息する無数の微生物に覆われています。これらの微生物群(マイクロバイオータ)は、消化や免疫、さらには精神面にまで影響することが知られてきました。

人間を含むあらゆる動物の体は、皮膚や腸などに生息する無数の微生物に覆われています。これらの微生物群(マイクロバイオータ)は、消化や免疫、さらには精神面にまで影響することが知られてきました。

そして新たな研究により、母親が持つ細菌が胎児の脳の発達にまで影響を与えている可能性が示されました。これは、妊娠や出産に関わる医療のあり方にも関わる重要な発見です。

人間を含む動物の体は無数の微生物の群れに覆われており、皮膚の表面に生息する常在菌や腸内細菌叢(そう)などが健康に関係していることがわかっています。ミシガン州立大学の研究により、母親が持っている微生物が出生前の時点から胎児の脳発達に影響している可能性があると示されました。The microbiota shapes the development of the mouse hypothalamic paraventricular nucleus – ScienceDirecthttps://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0018506X25000686

ミシガン州立大学の最新研究 🧪

研究を行ったのは、ミシガン州立大学(MSU)の心理学部チーム。助教のアレクサンドラ・カスティーヨ・ルイス氏は次のように説明します。

「出生時、新生児の体は産道を通る際に母親由来の微生物が定着します。これは脳形成という重要な発達過程と重なっており、微生物が脳の発達にどう影響するかを探ることが研究の出発点でした。」

この研究では、マウスを用いて母親から子どもに受け継がれる微生物の影響を追跡しました。

実験の概要 🐭

研究チームは以下の条件でマウスを飼育・比較しました。

  • 無菌環境で出生・飼育したマウス
  • 出生直後に正常な微生物を持つ母親のもとへ移されたマウス
  • 通常環境で微生物とともに育ったマウス

着目したのは、**視床下部室傍核(PVN)**という脳領域。ここはストレス反応、血圧、水分バランス、社会行動の調整に深く関わる重要な部位です。

過去の研究では、無菌マウスの脳ではPVNのニューロン(神経細胞)が早期に死滅する割合が高いことがわかっていました。

今回の実験結果でも、

  • 出生後に微生物を導入しても、出生時に無菌だったマウスはニューロン数が減少
  • 生涯無菌のマウスでも同様にPVNニューロンが減少

という事実が確認されました。

結果が示す意味 🌱

この発見は、脳の重要な変化が胎児期からすでに始まっていることを示しています。母親から子へと受け継がれる細菌が、単に腸や免疫だけでなく、脳神経の発達そのものを左右する可能性があるのです。

ルイス氏は次のようにまとめています。

「微生物は避けるべき存在ではなく、むしろ幼少期の発達におけるパートナーです。彼らは最初から、私たちの脳の形成を助けているのです。」

医療との関連 ⚕️

近年は産科医療の進歩により、

  • 妊婦の約40%が抗生物質を投与され、
  • 出産の約3分の1は帝王切開で行われています。

しかしこれらの医療行為は、母親由来の細菌が子どもに伝わるプロセスを阻害する可能性があり、脳発達への影響も懸念されています。

この研究は「医療的介入の是非」というよりも、微生物の役割を正しく理解し、活かす方向へ医療を進化させる必要があることを示唆しています。


まとめ 📝

  • 母親から子どもへ受け継がれる細菌は、脳の発達に影響する可能性がある。
  • 無菌状態で出生したマウスは、視床下部室傍核(PVN)の神経細胞が減少。
  • 抗生物質投与や帝王切開の増加が、この重要な「細菌の継承」を妨げる懸念。
  • 微生物は「脅威」ではなく、発達を支えるパートナーと捉えるべき。

人間の脳の発達にまで影響する「母親由来の細菌」。この研究は、腸内細菌や常在菌の重要性を改めて浮き彫りにしています。

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