米国製品ボイコットの火種
2025年、マクドナルドやコカ・コーラ、アマゾン、アップルなど、米国を拠点とする多国籍企業がインド国内で不買運動の標的になっています。
背景には、トランプ米大統領がインドからの輸入品に50%の関税を課したことがあり、これに反発したモディ首相支持者や企業幹部がSNSなどで反米感情をあおっている状況です。

インド市場が持つ巨大な魅力
🌏 インドは世界最大の人口を誇り、特に急成長する富裕層は米国ブランドにとって重要なターゲットです。
- ブランド消費=社会的ステータス
- 多くの消費者は国際ブランドに憧れを持ち続けている
例として、WhatsAppはインドが最大の利用者数を誇り、ドミノ・ピザはインド国内で最多店舗数を展開。ペプシやコカ・コーラは店頭の棚をほぼ独占するほどの存在感を示しています。
現時点での影響は限定的
📊 不買運動の呼びかけは広がっているものの、米国製品の販売に大きな打撃はまだ見られません。
ただし、トランプ関税によって輸出業者は不安を抱え、SNSや口コミで「米国製品をやめて地元製品を選ぼう」という呼びかけが増加しています。
「メード・イン・インディア」運動の高まり
💡 インド企業経営者たちは、国産品の利用を促す動きを強化しています。
- ワオ・スキン・サイエンス共同創業者 マニシュ・チョウダリー氏
→ 「世界的ブームにすべき」として韓国の美容・食品戦略から学ぶべきと提言。
→ 「私たちは遠くのブランドにお金を使い、自国メーカーを軽視してきた」と指摘。 - ドライブU CEO ラーム・シャストリー氏
→ 「中国のように、国産SNSや検索サービスを持つべき」と主張。
これらの発言は「国産志向」をさらに加速させています。
政治的後押しと運動の広がり
モディ首相は8月10日、ベンガルールでの演説で**「自給自足への特別な呼びかけ」を行い、インドのハイテク企業に対して国内需要への優先を訴えました。
また、与党BJPと関係の深いスワデシ・ジャグラン・マンチ(SJM)**は、外国製品の代替となるインドブランド一覧をSNSで拡散。
「外国飲食チェーンをボイコットしよう」というグラフィックには、マクドナルドなど多数のロゴが掲載されています。
国民の反応は分かれる
しかし、全ての国民がこの動きに賛同しているわけではありません。
ウッタルプラデシュ州ラクナウのマクドナルドで食事をしていたラジャト・グプタさん(37歳)はこう語ります。
「関税は外交の問題。私のマックパフやコーヒーは巻き込むべきじゃない」
実際、価格や利便性を理由に米国製品を選ぶ層は依然として多く存在します。
外資と国内企業の今後
- 外国ブランド:スターバックスなどが国内企業と激しく競争
- 国内ブランド:海外展開の壁が依然として高い
- ITサービス:TCSやインフォシスなど、既に世界規模で事業展開
さらに、米EVメーカーテスラは不買運動がくすぶる中でもニューデリーに2店舗目のショールームをオープンするなど、外資参入は続いています。
まとめ|「愛国消費」とグローバル市場の狭間で
今回の米国製品不買運動は、インドの消費行動やブランド選好に影響を与える可能性がありますが、現時点では象徴的な動きに留まっています。
一方で、国産志向を背景にした「メード・イン・インディア」運動は今後さらに広がり、外資企業の戦略変更を迫るかもしれません。