高脂肪食の「たった1回」が脳に与える衝撃
金曜日の夜や休日、ちょっとしたご褒美として普段より脂っこい食事を楽しむことは誰にでもあります。しかし、新たな研究で**「たった1回の高脂肪食でも脳への血流が阻害される可能性」**が示されました。
これは、脳卒中や認知症のリスク増加にもつながる可能性がある重要な知見です。

脂肪は体に必要…でも摂りすぎは危険
脂肪はエネルギー源としてだけでなく、ビタミンの吸収、臓器の保護、体温維持など重要な役割を果たします。
しかし、脂肪には種類があり、特にファストフードやスイーツに多い飽和脂肪酸は過剰摂取で血管や心臓に悪影響を与えることが知られています。
- 飽和脂肪酸:バター、揚げ物、ケーキ、チョコレートなどに多い
- 不飽和脂肪酸:魚、ナッツ、オリーブオイルに多く、血管保護作用あり
飽和脂肪酸の影響は心臓や血管だけでなく、脳の血流調整機能にも及ぶことがわかってきました。

脳を守る「動的脳血流自動調節」とは?
脳はエネルギーをため込む能力が乏しいため、安定した血流供給が不可欠です。
この血流を維持する仕組みが**動的脳血流自動調節(dynamic cerebral autoregulation)**です。
- 立ち上がる、運動するなど血圧が変化しても脳血流を一定に保つ
- 血管が弛緩・拡張することで調整
- この機能が損なわれると、脳への血流が一時的に不足または過剰になりやすくなる
高脂肪食の摂取は、この調整機能を阻害し、長期的には脳卒中や認知症のリスクを高めます。

実験内容:ミルクシェイクで検証
イギリス・サウスウェールズ大学の研究チームは、**若年男性20人(18~35歳)と高齢男性21人(60~80歳)**を対象に、高脂肪食前後で血管と脳の反応を測定しました。
実験の流れ
- 高脂肪食の提供
- ホイップクリームたっぷりのミルクシェイク
- カロリー:1362kcal
- 脂質:130g(ほぼ飽和脂肪酸)
- 測定項目
- 腕の血管の拡張能力(血流増加への反応)
- 脳の血流調整機能(スクワットで血圧変動を起こし測定)
結果:若者も高齢者も影響を受けるが、高齢者は特にリスク大
実験の結果、若者・高齢者ともに血管拡張能力が低下し、脳の血流調整能力も悪化しました。
特に高齢者の脳への悪影響が大きいことが示されました。
研究チームは、過去の研究でも以下のメカニズムを確認しています。
- 高脂肪食がフリーラジカル(酸化ストレス)を増加
- 血管拡張を助ける一酸化窒素が減少
- 結果として、血管の柔軟性が失われ脳血流調整が難しくなる

健康への注意点と食事の工夫
マーリー氏は「たった1回の脂肪分の多い食事でも即時に体と脳へ影響する」と警告。特に脳卒中や神経変性疾患のリスクが高い高齢者は注意が必要です。
改善のための食事ポイント
- 飽和脂肪酸の摂取を控える
- 魚やナッツ類に多い多価不飽和脂肪酸を選ぶ
- 食事全体の脂質バランスを意識する
なお、この研究は男性のみを対象としており、女性への影響は今後の検証が必要です。
まとめ|「1回ぐらい大丈夫」が命取りになるかも
今回の研究は、高脂肪食の影響は長期的な健康だけでなくリアルタイムで現れることを示しました。
つまり、「たまのご褒美」でも脳の健康にはリスクとなり得ます。
日々の食事選びが、未来の脳と心臓の健康を左右すると言えるでしょう。