Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシー氏が、分散型ソーシャルメディアの未来を見据えた大規模な支援を行いました。今回、彼が1000万ドル（約15億円）を投資したのは、分散型ネットワークプロトコル「Nostr」のツール開発に取り組む非営利団体「and Other Stuff」。
この団体は、インターネットの未来を変えるためのプロジェクトを推進しており、ソーシャルメディアのあり方を根本から見直す活動を展開しています。
🌐「Nostr」って何？分散型ネットワークプロトコルの仕組みと意義
現在のSNSは、FacebookやX（旧Twitter）など企業が中心となってユーザーデータやアルゴリズムを一元管理しています。これに対し、「Nostr」や「ActivityPub」「AT Protocol」などの分散型ネットワークプロトコルは、データを特定の企業に依存せずに管理する仕組みを持っています。
つまり、投稿・フォロー・フォロワーの関係などを、プロトコルを通じて他のサービスでも使えるようになるのです。これはまさに、「ユーザーがデータの所有権を取り戻す」という発想に基づいた進化形SNSの基盤といえます。
💰「and Other Stuff」への1000万ドル投資、その目的とは？
ジャック・ドーシー氏が支援を決めた「and Other Stuff」は、Nostr関連のプロジェクトを推進する非営利団体で、活動の柱は以下の5つに集約されています：
- Nostrを誰でも使えるようにする
- 分散型コミュニティ向けのツール構築（パブリック／プライベート両対応）
- ウォレットや決済基盤、収益化ツールの開発
- 安全でプライベートなメッセージング環境の構築
- NostrをオープンソースAIと連携できる最適なプロトコルに進化させること
これらは、個人でもプロダクトを作れるようにする「開発者主導の自由なインターネットの再構築」という理念のもとに動いており、商業目的ではなく技術と自由のための投資です。
🛠開発中のプロジェクト「Shakespeare」とは？
and Other Stuffではすでに、AI支援を活用してNostrアプリを構築するためのツールキット「Shakespeare」の開発が進行中です。
このツールにより、コードに詳しくない開発者でも簡単にNostrベースのSNSやコミュニケーションアプリを構築できるようになることが期待されています。
まさに、インターネットの民主化を推進する重要なパーツになる可能性を秘めています。
🧑💻参加メンバーには豪華な顔ぶれが集結
and Other Stuffの運営は企業ではなく、ハッカーコミュニティのような分散型組織を目指しており、以下のような多彩なメンバーが参画しています：
- ジャック・ドーシー氏（Twitter創業者・Block CEO）
- エヴァン・ヘンショー・プラース氏（Twitter初期の社員）
- Calle氏（電子キャッシュ「Cashu」の開発者）
- アレックス・グリーソン氏（Truth Socialの元エンジニアリング責任者）
彼らは主にNostrの開発を通じてつながった仲間たちであり、今後は「Cashu」や「ActivityPub」といった他プロトコルとの協業・支援も視野に入れています。
📢ドーシー氏の姿勢：「Twitterは企業になるべきではなかった」
近年のドーシー氏は、ソーシャルメディア業界の企業化に強い批判を寄せています。
かつて自身が支援していた分散型SNS「Bluesky」にも「Twitter時代の過ちを繰り返しているように見えた」とコメントし、関係を断ちました。
彼は「SNSは利益のためのサービスではなく、人類の自由なコミュニケーションを支えるべき基盤であるべきだ」との信念を強めています。
🔐分散型の未来へ：「デジタル著作権」の再構築も
and Other Stuffに参画しているプラース氏は、分散型プロトコルの可能性について以下のように語っています：
「私たちには、新たな“デジタル著作権”が必要です。ユーザーは、自分が築いた人間関係を企業の管理から解き放ち、自分自身の意思で保有できるべきです。」
これは、プラットフォームによって操作されたタイムラインや閉鎖されたアルゴリズムによる情報分断へのアンチテーゼとも言えるものであり、今後のWebのあり方そのものを再定義する取り組みだといえるでしょう。
🧭まとめ：分散型SNSは次のインターネットの標準になるか？
ジャック・ドーシー氏の今回の動きは、単なる資金援助ではありません。
それは中央集権型SNSに対する強烈なカウンターであり、自由と透明性に基づく「次のSNS時代」を構築する意思表示です。
今後、「Nostr」や「ActivityPub」などを利用したオープンなSNSが一般にも普及すれば、私たちはようやく「自分のデータを自分で守り、自分の声を自分の意志で届けられる時代」を迎えることになるかもしれません。
