レトロゲームやエミュレーター機のレビューで人気を集めていたイタリアのYouTuber「Once Were Nerd」氏が、突然の家宅捜索を受けたうえで刑事訴追のリスクに直面していることが明らかになりました。
レビュー動画に報酬やアフィリエイトが含まれていなかったにもかかわらず、「著作権法違反の疑い」が浮上。欧州でのレトロゲーム文化と法律のズレが注目を集めています。

🚨発端は“レビューしただけ”のレトロゲーム機
Once Were Nerd氏は、YouTubeでレトロゲーム機やハンドヘルド型エミュレーター端末のレビューを中心に活動しているクリエイター。
2025年4月15日、突如イタリアの財務警察「Guardia di Finanza」が自宅とオフィスに現れ、著作権法第171条違反の疑いで家宅捜索を実施しました。
押収対象となったのは以下のような中華系レトロゲーム端末:
- ANBERNIC RG Slide
- Powkiddy製端末
- TrimUIシリーズ
- その他30台以上のゲーム機本体
これらはいずれもエミュレーターとROMを内蔵または外部追加可能な設計で、ゲームメーカーの許諾を受けずに旧作タイトルが遊べてしまう構造です。


Once Were Nerd氏はイタリア在住のYouTuberで、ゲームレビューを中心に活動しています。
🧾報酬なし&リンクなしの“非営利レビュー”だったと主張
Once Were Nerd氏は、問題となった端末について企業から報酬を受け取ったことはなく、アフィリエイトリンクも一切含めていないと明言。
レビューも公平性を保つよう意識し、「営利目的ではない」と強調しています。
さらに、当局に対してはメーカーとのメール・チャット履歴を自発的に提出し、協力姿勢を示していたとのこと。
結果として、押収された端末は約2ヶ月後に返還されました。

⚖️有罪なら最大260万円の罰金+3年の拘禁刑も
イタリア当局は、Once Were Nerd氏の動画が**“違法製品の宣伝”にあたる可能性**を重視。
現在進行中の捜査が進展すれば、以下のような重い処罰を受けるリスクがあります:
- 最大15,000ユーロ(約260万円)の罰金
- 3年間の拘禁刑
特に問題視されているのは、レビュー対象のANBERNIC RG Slideなどが「数十本のゲームを最初から収録し、さらにROM追加も可能」という点。
法的に“海賊版ソフトの利用を助長するツール”と見なされた可能性があります。
📜1941年制定の古い著作権法がクリエイターを脅かす
Android Authorityなど複数のメディアは、イタリアの著作権法が1941年に制定された時代遅れの内容であることを指摘。
デジタルコンテンツやゲーム文化が急速に進化する現代において、クリエイターやYouTuberの活動が想定されていない旧法が足かせになっていると批判の声も上がっています。
こうした状況は、イタリアに限らず「レトロゲームレビュー=著作権リスク」という、世界的な前例になりかねない懸念を示しています。
🕹️レビュー対象となったANBERNIC RG Slideとは?
今回の問題に関わった端末の1つである「ANBERNIC RG Slide」は、Android OSを搭載した携帯型レトロゲーム機。
特徴としては以下の点が挙げられます:
- 初期状態で30本以上のゲームを内蔵
- スライド式ディスプレイ&フルコントローラー
- microSD経由でゲームROMの追加が可能
- 海外サイトでは“クラシックゲームの宝庫”と称される
ユーザーによっては「合法ROMでの利用も可能」という見方もありますが、法的には「ROMの出所や入手方法を問わずグレーゾーン」として捉えられがちです。
🧠レトロゲーム文化と法の乖離にどう向き合うか?
今回の家宅捜索は、以下のようなより大きな問題提起を含んでいます:
- 現行法が新興テクノロジーに対応しきれていない
- “紹介”や“レビュー”が違法行為と同一視される危険
- 商業目的の有無が法的に無視されがち
「海賊版の推奨ではない純粋なレビューでも、違法と見なされる可能性がある」というこの事例は、全世界のガジェット系YouTuberやゲーム愛好者に影響を及ぼす恐れがあります。
✍️まとめ:「レビューするだけ」でリスクが生まれる時代
Once Were Nerd氏の件は、「自腹で端末を購入してレビューしただけ」という点で、多くのYouTuberやブロガーが直面する可能性のある問題です。
イタリアという特定の国の問題とはいえ、エミュレーター端末やレトロゲームの紹介が**“違法な助長行為”とされうる危険性**を象徴しています。
ゲーム文化と法律のギャップが広がる中、これからのクリエイターには著作権と表現のバランスを学び、慎重に情報発信を行うリテラシーが求められていくでしょう。