腸活には「プロバイオティクス」より「食物繊維」が重要な可能性 ─ 新研究が示唆
人間の腸内には、天の川銀河の星の数より多くの腸内細菌が生息しており、健康維持において重要な役割を果たしています。その腸内環境を整えるためには、善玉菌を直接摂取する「プロバイオティクス」よりも、善玉菌のエサとなる**「食物繊維」(プレバイオティクス)**を摂取する方が効果的である可能性を示す研究結果が発表されました。
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世界45カ国から1万件超の便サンプルを調査した大規模研究
この研究は、イギリス・ケンブリッジ大学の主任研究員アレクサンダー・アルメイダ氏らのチームによって実施され、2025年1月10日に権威ある学術誌「Nature Microbiology」に掲載されました。
研究チームは世界45カ国から1万2238件の便サンプルを収集し、DNAシーケンシング技術を駆使して腸内細菌を特定・定量化しました。その結果、腸内に**腸内細菌科(エンテロバクター科)**がどれほど存在するかを80%の精度で予測できたとのことです。
腸内細菌科は**大腸菌(Escherichia coli)**などを含む細菌グループで、通常は無害ですが、大量に増殖すると感染症を引き起こす場合があります。
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「共生菌」と「排他菌」のバランスが鍵
研究の過程で、腸内細菌には次の2つのグループがあることが判明しました。
- 共生菌 (co-colonisers):腸内細菌科と一緒に繁殖する細菌
- 排他菌 (co-excluders):腸内細菌科と同時にはほとんど見つからない細菌
特に注目されたのは「排他菌」の一種である**フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)**です。この細菌は、腸内で食物繊維を分解し、短鎖脂肪酸を生成することで有害な細菌の増殖を抑える働きがあります。
さらに研究を続けると、腸内細菌の中には腸内細菌科と一緒に繁殖する細菌である「共生菌(co-colonisers)」と、腸内細菌科と同時に見つかることがほとんどない「排他菌(co-excluders)」という2つのグループがあり、特に排他菌の一種であるフィーカリバクテリウム属が腸内にいるかどうかが健康にとって非常に重要なことがわかりました。フィーカリバクテリウム属の細菌には、食事中のさまざまな繊維を分解して短鎖脂肪酸を生成し、腸内細菌科などの有害な細菌の増殖を阻止する働きがあります。
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短鎖脂肪酸の健康効果
短鎖脂肪酸は腸内の環境バランスを保つだけでなく、以下の健康効果が期待できます。
- 腸の炎症を軽減
- 腸機能の改善
- 免疫機能の強化
このようなメリットから、短鎖脂肪酸は健康の重要な指標とされています。
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食物繊維摂取の重要性が示唆される理由
善玉菌を直接摂取する「プロバイオティクス」は、腸に導入された新しい菌が長期間生存できないことが課題とされています。一方で、食物繊維を摂取することで、もともと腸内にいる有用な細菌を増やす方が長期的な効果が期待できると考えられます。
アルメイダ氏は「この戦略はプロバイオティクスよりも効果的かもしれない」と述べ、特に食物繊維が豊富な食品を意識的に摂取することの重要性を強調しました。
食物繊維摂取による腸内環境の改善例
腸内細菌のバランスを整えるために、以下のような食物繊維を含む食品が推奨されます。
- 水溶性食物繊維:もずく、オクラ、リンゴ
- 不溶性食物繊維:ブロッコリー、玄米、全粒パン
薬に頼らない感染症予防への期待
この研究は、抗生物質を使わずに有害細菌の繁殖を抑制する方法を示唆しています。抗生物質は悪玉菌を死滅させる一方で、善玉菌にも影響を与えてしまうため、腸内環境を崩してしまうデメリットがあります。
一方で、食物繊維による腸内環境の改善は、善玉菌を活性化させ、悪玉菌の増殖を抑制するため、自然な方法で健康を守る戦略として期待されています。
今後の展望
研究チームは、微生物が生成する化学物質を調べるメタボロミクスや遺伝子活性を調査するトランスクリプトミクスの手法を用いて、腸内の生態系が健康に与える影響をさらに解明していく予定です。
最終的には、食物繊維を活用した食事療法が確立されることで、感染症予防や腸内環境改善に大きな進展が期待されています。
まとめ:腸活には食物繊維を意識しよう
腸内環境を整えるためには、プロバイオティクスよりも**プレバイオティクス(食物繊維)**に注目すべきである可能性が示されました。
日々の食事に意識的に食物繊維を取り入れ、腸内細菌のバランスを整えることが、健康維持への近道となるかもしれません。
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