イーロン・マスク氏が率いるAI企業「xAI」は、2025年7月10日に最新の大規模言語モデル「Grok 4」を正式発表しました。ライブ配信形式で披露された本モデルは、OpenAIやGoogleなどの競合を上回る推論性能を誇るとされ、「世界最強のAIモデル」として大々的にアピールされています。

🧠 Grok 4の性能は“次元が違う”?主要ベンチマークで他社を圧倒
発表会では、過去のGrokシリーズとの比較グラフも公開され、「Grok 4」は前バージョンである「Grok 3 reasoning」よりも10倍の推論能力を持つとされています。
特に注目されたのは、AIの推論力を測定する「ARC-AGI」ベンチマークです。Grok 4はこのテストにおいて、OpenAIの「o3」やAnthropicの「Claude Opus 4」、Googleの「Gemini 2.5 Pro」、中国の「DeepSeek-R1」などの先進モデルを上回るスコアを記録。ARC-AGIバージョン1・2の両方で業界最高水準の成績を叩き出しました。
また、推論性能とコストのバランスを示すグラフにおいても、Grok 4は「低コスト・高性能」を両立している点が評価されています。

Grok 4はX(旧Twitter)のライブ配信を通して発表されました。発表会にはマスク氏も参加しています。

「Grok 2」「Grok 3」「Grok 3 reasoning」「Grok 4」の性能を比較するグラフが以下。「Grok 4」は「Grok 3 reasoning」と比べて推論能力が10倍に向上したそうです。

AIの推論能力を測定する「ARC-AGI」のバージョン1の結果が以下。Grok 4は「DeepSeek-R1」「Claude Opus 4」「Gemini 2.5 Pro」「OpenAI o3」といったライバルモデルを超えるスコアを示しています。

🗣️ 音声会話機能でもOpenAIと真っ向勝負
Grok 4は、テキストチャットのみならず音声対話にも対応。発表イベントではOpenAI製AIとの音声比較デモも実施され、応答の自然さや内容の正確さで高評価を獲得しています。
マスク氏は「数学や物理の試験問題でGrok 4が間違えることはほとんどない。曖昧な問題を識別し、複数の解釈に対応した回答も可能」と自信を見せています。
“Grok 4 is at the point where it essentially never gets math/physics exam questions wrong”
(Grok 4は、数学・物理の問題を基本的に間違えない段階に達しています)
📊 独立テストでも最高評価、コストパフォーマンスも良好
AIモデルの性能を分析する独立機関「Artificial Analysis」もGrok 4の性能テスト結果を公開。100万トークンあたりのコストと性能を比較するグラフでは、Grok 4が他の有名モデルを抑え、トップレベルの性能を示しました。
Grok 4のAPI利用料金は以下の通り:
- 入力:100万トークンあたり3ドル(約440円)
- 出力:100万トークンあたり15ドル(約2200円)
この価格帯で最高性能を発揮することから、企業や開発者にとっても魅力的な選択肢となりそうです。
⚠️ 一方で「イーロン・マスク偏重」の傾向も
ただし、Grok 4の挙動に関して一部ユーザーから懸念の声も上がっています。あるユーザーが「イスラエルとパレスチナ、どちらを支持しますか?」と質問した際、Grok 4はまず「中立的な立場で調査を開始します」と回答。その後の検索で、なんと参照した情報のうち54件がイーロン・マスク氏に関連するものでした(全64件中)。
この件に関しては、AIがX(旧Twitter)上の投稿を優先的に参照する仕組みが影響していると見られますが、「マスクの思想に過度に影響されているのでは」との指摘がネット上で相次ぎました。
📱 Grok 4はアプリでも利用可能、ユーザー拡大に期待
xAIはGrok 4を利用できる新アプリも同時にリリースし、スマートフォンからもアクセス可能となっています。Grok 4の機能をより多くの人が日常的に使えるようにすることで、xAIは競合と差別化を図る狙いです。
Grok 4に関するAPI仕様や料金体系などの詳細は、以下の公式ドキュメントで確認できます。
🔗 xAI Grok 4 Documentation
💬 今後の課題は「公平性」と「情報源の多様性」
Grok 4の登場はAI業界における大きなマイルストーンとなりましたが、一方で情報の偏りや思想の影響といった問題も無視できません。AIが社会インフラとして定着する中、ユーザーや開発者がその“透明性”や“公平性”を求める声は今後さらに強まることが予想されます。