🌎気候変動でアメリカの山火事被害が深刻化　2050年には「煙による死者」が年間7万人に達する可能性

アメリカやオーストラリアで続発する大規模山火事（ワイルドファイア）。
2025年にカリフォルニア州で発生した火災では、東京23区の3分の1に相当する面積が焼失し、少なくとも29人が死亡・1万8000棟以上の建物が被災しました。

そして新たに科学誌『Nature』に掲載された研究によると、
地球温暖化の進行によって山火事の煙による死者数が急増し、2050年までに年間7万人を超える可能性があることが判明しました。

🔥山火事が年々増加する理由

温暖化が“燃えやすい地球”を作っている

近年、アメリカの山火事の頻度と規模がともに拡大しています。
その主因は地球温暖化による気温上昇と土壌乾燥。

こうした条件が重なり、一度発火すると爆発的に延焼する構造が形成されています。
さらに、山火事が発生すると有機物の燃焼で温室効果ガスが発生し、温暖化をさらに悪化させるという“負のループ”も生まれています。

PM2.5が呼吸器・心臓を蝕む

山火事による被害は火炎だけではありません。
煙に含まれる**微小粒子状物質（PM2.5）**が人々の健康を長期的に脅かします。

これらの粒子は人間の髪の毛の約1/28の細かさで、
肺の奥深くまで侵入して以下の症状を引き起こします👇

山火事の煙は数日から数週間にわたり広範囲に拡散し、
直接の被災地以外でも**“煙害による死亡リスク”が上昇**することが知られています。

機械学習で煙と死亡率の関係を解析

スタンフォード大学やニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の研究チームは、
2006～2019年のアメリカ全土の郡レベルの死亡データをもとに、
山火事による煙の影響を精密にモデル化しました。

その結果、煙濃度の変化と死亡率の上昇には強い相関があることが確認されました。

経済的損失は年間89兆円規模に

分析によると、2011～2020年の平均死亡者数は年間約4万人（41,380人）。
しかし、現在の地球温暖化の進行（産業革命前比＋2℃）が続けば、
2050年には年間7万1420人が煙によって命を落とすと予測されました。

📍州別の推定追加死亡者数（2050年時点）

また、山火事の煙による死亡損失の経済的コストは
年間**6,080億ドル（約89兆7,000億円）**に達する見込みです。
これは農業損失や暴風雨被害など、他の気候関連損害を上回る規模です。

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「煙はすでに全米を覆っている」

論文の筆頭著者である**ミンハオ・チウ助教（NY州立大）**は、次のように述べています。

「私たちのデータは、アメリカ全域で山火事の煙が増加していることを示しています。
西海岸での増加が顕著ですが、カナダでの火災により、
東部や中西部にも煙が長距離移動している現象が確認されています。」

さらに、スタンフォード大学の環境社会科学教授マーシャル・バーク氏は、

「山火事の活動と煙への暴露は急速に変化しています。
妊婦・子ども・ぜん息患者など、全米の人々が健康リスクにさらされている現実があります」
と警鐘を鳴らしています。

煙害の拡大は地球の健康状態を映す

今回の研究は、山火事が単なる地域災害ではなく、
「気候変動がもたらす健康危機」そのものであることを示しました。

この悪循環を断ち切るためには、
再生可能エネルギーの普及や森林管理の徹底、
そして国際的な気候政策の強化が欠かせません。

📚 参考文献