アメリカ・テキサス州で制定された「有害コンテンツを含むウェブサイトへの年齢確認義務化」法案をめぐる裁判で、2025年に連邦最高裁が“州法の阻止を見送る”判断を下しました。この決定を受けて、性的表現を含む創作物・記事・ブログなどの**“非ポルノ”ジャンルのコンテンツにまで年齢確認義務が及ぶ可能性**が浮上し、作家やクリエイターから懸念の声が上がっています。

🧑⚖️背景:テキサス州の「年齢確認義務」法案とは?
2023年、テキサス州議会は次のような法案を可決しました:
「コンテンツの3分の1以上が未成年者に有害とされるウェブサイトに対し、ユーザーの年齢確認を義務付ける」
この法律は、成人向けサイト(例:Pornhubなど)を想定したものですが、「有害なコンテンツ」の定義が曖昧で、ポルノに限らず小説・エッセイ・評論などの性的描写も対象に含まれる可能性がある点が問題視されました。

🏛️裁判の経緯と最高裁の判断
この州法に対して反発したのが、**表現の自由連盟(FSC)**という業界団体です。FSCは法案の差し止めを求めて訴訟を起こし、2024年に連邦地裁は「表現の自由の侵害」として州法を無効とする判断を下しました。
しかしながら、
- 控訴審(第5巡回区控訴裁)では「未成年保護という正当な目的がある」として年齢確認義務を支持
- 最高裁も最終的に**「州法の執行差し止めは行わない」**と決定
この結果、州法は有効とされ、今後は他の州でも同様の法整備が広がる恐れが出てきています。

✍️作家の懸念:「たった1段落の性的描写」でも訴訟対象に?
作家で活動家のマイケル・エルスバーグ氏は、自身のブログ記事にて次のような強い危機感を表明しています:
「私のウェブサイトに、たとえ1段落だけ“性的に露骨”な文章があったとしても、それを理由に損害賠償を求められる可能性がある」
この背景には、アメリカ各州がそれぞれ独自に年齢確認法を制定しており、たとえば**テネシー州やサウスダコタ州などの検察が、他州の作家の発信に対して訴追することも“理屈の上では可能”**であるという問題があります。
🔐何が“有害”なのか?あいまいな線引きと萎縮の懸念
本件の最も深刻なポイントは、「未成年に有害なコンテンツ」の定義が曖昧であることです。
- 明確なポルノ表現以外でも、小説・日記・詩などの創作における性的描写全般が規制対象になりうる
- 結果として、作家・ブロガー・評論家などが自主規制に追い込まれる
特に個人運営のウェブサイトやSubstackなどで創作活動を行う人にとっては、「自由な表現の場そのものがリスクになる」という、かつてない事態が現実味を帯びてきたのです。
🛑FSC・作家陣が訴える「表現の自由」の危機
控訴審で反対意見を述べた判事やFSCは、「今回の法律は憲法修正第1条(言論・表現の自由)に反する」として以下の点を強調しています:
- 成人が自由にアクセスできるはずの合法コンテンツに制限がかかる
- 年齢確認導入の費用・手間・リスクが、小規模発信者を委縮させる
- 結果として、ネット上の性的表現全体が萎縮・消滅しかねない
🗣️エルスバーグ氏のコメント:「子どもを守りたいなら親が対処すべき」
エルスバーグ氏は、自身のスタンスとして以下のように述べています。
「もし私の文章を子どもに読ませたくないなら、親がコンテンツブロッカーを導入すればいい。18歳になった子どもたちが、自分の意志で読むかどうかを決めるべきだ」
さらに、将来的に自分を追及するかもしれない検察官や政治家に対しても次のような挑発的なメッセージを送りました:
「私を捕まえに来てください。あなた方の偽善は、私のサイトで永遠に笑いのネタにしてあげます」
🌐今後の影響と課題:アメリカ発のネット規制はグローバルに波及するか?
今回の最高裁判決を受けて、以下のような波及効果が懸念されています:
- 他の州も年齢確認義務化を強化し、表現の自由の後退が加速する
- RedditやBluesky、Pornhubなど大手サイトがアクセス制限・撤退を始めており、小規模サイトはさらに厳しい判断を迫られる
- 日本など他国の法制度にも影響を与える可能性がある
🧭まとめ:今、表現の自由が「静かに」脅かされている
「子どもを守るための措置」は重要ですが、それが「創作者の自由」を侵害する手段になってしまっては本末転倒です。
- ❌ 性的コンテンツ=悪
- ❌ 制限すれば安全になる
- ✅ 必要なのは、親と社会による適切な“制御”と“教育”
エルスバーグ氏のような作家に限らず、すべてのオンライン発信者にとって「どこまで書いていいのか」が曖昧な状態で、表現活動を続けることは極めて難しい時代に突入しつつあるのかもしれません。