🎓大学進学しても「性格はほとんど変わらない」──大規模調査で明らかに

🎓大学進学しても「性格はほとんど変わらない」──大規模調査で明らかに #news
「大学に入れば人は成長し、性格も変わる」と考えている人は多いかもしれません。しかし、最新の心理学研究によって、大学進学が性格に及ぼす影響は極めて限定的であることが明らかになりました。

「大学に入れば人は成長し、性格も変わる」と考えている人は多いかもしれません。しかし、最新の心理学研究によって、大学進学が性格に及ぼす影響は極めて限定的であることが明らかになりました。

🔍研究の背景:社会的変化は性格を変えるのか?

これまでの心理学では、成人初期の時期に性格が少しずつ変化していくことが知られていました。たとえば、誠実性が高まり、情緒が安定し、協調性が増すなどの傾向です。こうした変化は、就職、恋愛、結婚、そして大学進学といった「新たな社会的役割」に適応する過程で生じると考えられてきました。

しかし、この“環境変化=性格変化”という前提に疑問を投げかけたのが、スイス・ローザンヌ大学の研究チームによる新たな分析です。

📊研究の方法:大学進学の有無による性格の変化を比較

研究チームは、ドイツの大規模縦断調査「German Socio-Economic Panel」のデータを活用し、青年期から30代まで追跡調査された4776人を対象に分析を実施。特に、「両親が大学に進学していない若者」に焦点を当て、彼らの中で「大学に進学した人」と「進学しなかった人」の性格の変化を比較しました。

分析に使用されたのは以下の心理指標です:

  • ビッグファイブ(開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向)
  • 統制の所在(人生の結果に対する自分の影響力の認識)
  • リスクを取る傾向

これらは、幸福度や健康、職業的成功と深く関連していることが知られています。

🧠性格の核は「大学進学してもしなくても」ほぼ同じだった

分析の結果、驚くべき事実が判明しました。なんと、大学に進学した人も、そうでない人も、ほぼ同じペース・傾向で性格が発達していたのです。

✔ 特に誠実性の向上は共通項

時間の経過とともに、どちらのグループでも「誠実性」が上昇しました。これは、成人期になるにつれて責任感や計画性が育つ自然な変化であり、他の研究とも一致する結果です。

❌ 外向性・開放性・神経症傾向は大きな変化なし

一方で、外向性や神経症傾向などの特性については、有意な変化は認められませんでした。大学進学というライフイベントが、これらの性格特性にはほとんど影響を与えないことが示された形です。

⚖唯一の違い:「リスクを冒す傾向」が低下する

興味深いのは、「リスク選好」の変化です。大学に進学した人々は、年齢を重ねるにつれて徐々にリスクを避ける傾向が強まりました。この変化は、非進学者と比べて統計的に有意な差として認められています。

さらに、親が大学に通っていたかどうかに関係なく、大学出身者はリスクに対して慎重になる傾向を示しました。

💡なぜ大学進学でリスク回避的になるのか?

研究チームはその理由として、「大学という環境が計画性・慎重さ・長期的視点を重視する性質を持っているため」と説明します。学業や単位取得、キャリア設計などを通じて、合理的な判断や堅実な行動が身につくということです。

また、進学前の17歳時点でリスク回避傾向が強い人の方が大学に進学しやすい、という傾向も観測されています。つまり、「元々リスクを避ける人」が大学進学を選びやすく、さらに大学環境がその傾向を強化するという可能性があります。

🗣研究者の見解:「人格は簡単には変わらない」

研究を主導したAnatolia Batruch氏は、次のように述べています。

「家族で初めて大学に進学すると不安になるかもしれませんが、進学によって人格の中核が変わることはないようです。むしろ、教育の持つ本当の価値とは、人の本質を変えるのではなく、新たな視点や機会を提供することにあります。」

この言葉からは、大学教育の役割を“人格改造”ではなく、“人生の選択肢の拡張”ととらえる考え方がうかがえます。

📝まとめ:学歴と性格の関係は意外に薄い

今回の研究は、「大学に行けば性格が大きく変わる」という一般的な認識に対して、明確な否定を示しました。大学進学は知識やスキルを得る機会であり、性格の変化よりも、リスク判断のような行動的特性への影響の方が大きいようです。

これは、教育政策やキャリア教育を考えるうえでも重要な示唆です。性格の変化を目的にするのではなく、より多くの人に“視野の拡張”と“選択肢の提供”という大学の本質的な価値を届けることが求められます。

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