「寝る前にセックスするとよく眠れる気がする」といった経験談を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、その効果は単なる思い込みなのでしょうか? オーストラリアの研究チームが行った新たな実験によって、就寝前の性行為(セックス・自慰行為)が客観的な睡眠の質を改善することが明らかになりました。

🔬研究の背景:「なぜパートナーはすぐ寝るのか?」
本研究を主導したのは、セントラル・クイーンズランド大学の睡眠研究者であるミシェル・ラステラ博士。彼女は、「セックス後に男性はすぐ眠るのに、女性は寝つけないのはなぜか?」という質問を頻繁に受けたことから、性行為と睡眠の関係性を科学的に調査しようと考えました。
過去の研究の多くは被験者の自己申告による主観的な評価に依存しており、客観的な測定による裏付けは乏しいのが現状でした。そこで本研究では、睡眠ポリグラフ装置によって生理学的データに基づいた評価を行いました。

👥実験概要:14人の若いカップルに装着型センサーで計測
被験者は、南オーストラリア州で同居する平均年齢26歳の健康な異性愛者のカップル7組(合計14人)。いずれも週1回以上の性行為習慣があり、子どもはおらず、妊娠している女性もいませんでした。
被験者たちは以下の3種類の「性行動パターン」を日替わりで実施:
- セックス・自慰行為をしない夜
- 自慰行為(1人で)の夜
- パートナーとのセックスの夜
それぞれの夜に就寝直前に性行動を行い、ヘッドバンド型の睡眠ポリグラフを装着して睡眠データを計測。翌朝には主観的な睡眠・気分・性行為の満足度に関する質問にも回答しました。

📊結果:客観的に「睡眠効率」が改善、ただし主観的評価では差なし
✅ 睡眠効率の改善(客観指標)
研究の最大のポイントは、性行為をした夜は睡眠効率が明確に改善していた点です。具体的には:
- セックスなし:91.5%
- 自慰行為あり:93.2%
- パートナーとのセックスあり:93.4%
また、夜間の覚醒時間も平均約7分短縮されていました。これは、ベッドにいる時間のうち実際に眠っていた割合が高まったことを意味します。

🚫 主観的な睡眠評価とのギャップ
一方、被験者自身の睡眠の質に関する主観的評価では、性行為の有無による有意な差は見られなかったとのこと。つまり、体はよく休めていたが、本人はそれを自覚していない可能性があるということです。
💡なぜ睡眠の質が上がるのか?ホルモンとの関係性
研究チームは、性行為後に分泌されるホルモンの変化が睡眠の質を向上させる要因になっている可能性を指摘しています。
- オキシトシン(幸せホルモン):ストレス軽減・安心感・快眠効果
- プロラクチン:性的満足感・リラクゼーション促進
- コルチゾール(ストレスホルモン):値が低下することで覚醒が抑制
これらの変化により、交感神経が鎮まり、より深く質の良い睡眠に移行できると考えられます。
⚠️研究の限界と今後への期待
ただし今回の研究は**小規模(14人)かつ限定的な条件(若く健康な異性愛カップル)**の下で行われたものであり、普遍的な結果とするにはさらなる調査が必要です。
また、被験者が「性行為後にモニター装置を装着する」という現実とは異なる条件下であった点も、研究への制約のひとつとされています。研究チームは今後、より多様で大規模な被験者による検証を目指して資金調達を進めているとのことです。
✅まとめ:性行為は「入眠前ルーティン」として有効かも?
本研究は、夜の性行動が睡眠の質を“実際に”高める可能性を示した貴重な客観データです。睡眠障害に悩む方や、薬に頼らずナチュラルな快眠方法を模索している方にとって、適度な性的アクティビティが有望な選択肢となるかもしれません。
ただし、すべての人に一律の効果があるとは限らないため、自身の体調や関係性に応じて、無理のない範囲で取り入れることが重要です。