「私が見ている“赤”と、あなたが見ている“赤”は本当に同じなのか?」――色の知覚に関するこの問いは、哲学や科学で長年議論されてきました。
そんな中、ドイツの研究チームが発表した最新の研究によって、人間が色を見るときの脳活動には共通のパターンがある可能性が示されました。これは「色の見え方の違い」という難問に、新たな答えを与えるものになるかもしれません。
👉 研究論文(Journal of Neuroscience)
👉 Nature記事

実験方法👩🔬👨🔬
研究チームは15人の被験者を対象に実験を行いました。
- グループAに色を提示し、そのときの脳活動をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)で測定。
- 色ごとのデータをもとに、**「脳活動マップ」**を作成。
- このマップを使い、グループBの脳活動から「今、何色を見ているか」を予測できるか検証しました。
もし脳活動から「見ている色」を当てられるなら、人間は同じ色を見たときに共通の脳活動パターンを示すということになります。

驚きの結果✨
実験の結果――
- グループBの被験者が見ている色を脳活動から予測できた。
- さらに「色相」だけでなく「輝度(明るさ)」の情報まで推定可能だった。
つまり、人間の脳は色を共通のコードで処理している可能性が高いということです。
共著者のアンドレアス・バルテルス氏(テュービンゲン大学/マックス・プランク研究所)は次のようにコメントしました。
「赤や緑など、どんな色を見ても、私の脳と非常によく似た形で他の人の脳が活性化されることが分かりました。これは根本的に新しい発見です」

専門家の見解🔍
イギリス・サセックス大学で色覚科学を専門とするジェニー・ボステン氏は、
「一部の脳細胞が異なる色に偏った反応を示すというのは驚きの発見です。もし今回の研究が確実なものだと認められれば、脳が色を処理する仕組みに対する従来の理論が大きく書き換えられるかもしれません」
と評価しています。

研究の意義と課題⚖️
今回の結果は「色の知覚が人によって共通している」可能性を示しましたが、いくつかの課題も残されています。
- 被験者は15人と少数 → 文化や年齢、個人差を十分に反映できていない。
- 脳活動が同じ=体験が同じとは限らない → たとえば「赤を見たときの鮮やかさの感覚」など、主観的な質感(クオリア)は一致するか不明。
今後の展望🚀
研究者たちは今後、
- より大規模な被験者を対象とした研究
- 色に限らず、視覚や認知全般における脳活動の共通性の検証
などを進める予定です。これにより、医学・哲学・AI技術の分野にまで広がる可能性があります。
まとめ📝
- 脳活動パターンから「何色を見ているか」を予測できた
- 色相だけでなく明るさの情報も判別可能
- 人間は色を共通のコードで処理している可能性がある
- 今後はより大規模な研究が必要
「私の青は、あなたの青と同じか?」という問いに対し、今回の研究は脳のレベルでは“同じ”である可能性が高いことを示してくれました🌍🎨

