2025年7月中旬、世界最大級のPCゲーム販売プラットフォームSteamが突如として一部のアダルトゲームを削除しました。
その背景には、MastercardやVisaといったクレジットカード会社の影響があるとされています。しかし、Mastercardは「制限を要求していない」と主張。一方でSteamを運営するValveはこれを否定し、真相は対立したままです。

💳 規制の発端は「決済代行業者」と反ポルノ団体の圧力
Steamはルールを更新し、「決済サービス業者や関連カードネットワーク、銀行、インターネットプロバイダーが定める基準に違反する可能性のあるコンテンツ」を禁止項目に追加。
この変更により、**「カード会社が望まないコンテンツは削除されるのではないか?」**とゲーマーから批判が殺到しました。
規制のきっかけとされるのが、反ポルノ団体Collective Shout。
同団体はVisa・PayPal・Mastercardに働きかけ、Steamやインディーゲームマーケットitch.ioに対しアダルトコンテンツ削除を迫ったとされています。

🕹 itch.ioの対応と一部解除
Steamと同様、itch.ioもアダルトコンテンツの規制を開始。
その理由として、過去に一時的に配信された『No Mercy』という作品が決済代行業者の調査対象となり、Collective Shoutからのキャンペーンが発動。これにより、決済代行業者から圧力がかかったと説明しました。
ただし、itch.ioはその後、一部の規制を緩和しています。

🛑 ゲーマー・業界からの反発
今回の動きは「決済代行業者による事実上の検閲」と受け止められ、多くのゲーマーが反発。
削除された作品のリスト化や、規制に反対するオンライン署名が行われました。
さらに、GOG.comは「FreedomToBuy.games」キャンペーンを立ち上げ、クレジットカード会社によるコンテンツ規制に抗議。この活動の一環として、13本のアダルトゲームを無料配布しました。

📢 Mastercardの反論
2025年8月1日、Mastercardは公式声明を発表。
内容は以下の通りです。
- 「Mastercardはいかなるゲームも評価しておらず、活動制限も要求していない」
- 「当社のネットワークは合法な取引を許可し、違法なアダルトコンテンツを防ぐために加盟店に適切な管理を求めている」
つまり、Mastercard側は直接的な規制関与を否定しています。

⚖ Valveの主張と規則5.12.7
これに対してValveは、「Mastercardは直接の連絡を避け、決済代行業者を通じて規制圧力をかけた」と主張。
問題の根拠となったのは、Mastercard規則5.12.7です。
この規則では、以下の取引を禁止しています。
- 違法またはブランドの信用を損なう可能性がある取引
- 不快で重大な芸術的価値を欠く画像(例:非合意の性行為、未成年者の性的搾取、獣姦など)
しかし、この「信用を損なう可能性がある取引」という表現があまりにあいまいで、Mastercard側の裁量で幅広く規制できると指摘されています。
🌐 国際的な規制の流れ
この事例は一企業間の対立にとどまらず、世界的な成人向けコンテンツ規制の流れとも関係しています。
イギリスのオンライン安全法をはじめ、多くの国が成人向けゲームや映像の規制強化に向けた法案を検討中です。
📝 IGDA(国際ゲーム開発者協会)の声明
IGDAは次のように表明しました。
「合法で倫理的に開発されたゲームを、あいまいなポリシーで削除することに懸念を抱いている。開発者には明確なルール、公正な警告、異議申し立ての機会が必要」
これはLGBTQ+や社会的弱者を描く作品が、意図せず規制対象になるリスクを指摘したものです。
🔍 まとめ:決済プラットフォームと表現の自由
今回の騒動は、表現の自由と決済プラットフォームの影響力が交錯する事例です。
表面的には「Mastercardは制限していない」とされますが、決済代行業者を介した間接的圧力が存在する可能性は否定できません。
今後、アダルトゲーム業界はより厳しい環境に直面することが予想され、開発者・販売者・プレイヤーの間で議論が続くでしょう。