クレカ会社による「表現の検閲」に歯止めを──「公正な銀行アクセス法」案とは何か?

クレカ会社による「表現の検閲」に歯止めを──「公正な銀行アクセス法」案とは何か? #news
🎮 ゲームやマンガ、アダルトコンテンツなど、合法なデジタル表現が「決済の壁」によって配信停止に追い込まれる事例が近年急増しています。

🎮 ゲームやマンガ、アダルトコンテンツなど、合法なデジタル表現が「決済の壁」によって配信停止に追い込まれる事例が近年急増しています。こうした状況を是正するため、アメリカで提出されたのが「Fair Access to Banking Act(公正な銀行取引へのアクセス法)」案です。本記事では、その背景や内容、そして業界への影響を詳しく解説します。

「銀行がコンテンツを選別する時代」への危機感

近年、VisaやMastercard、PayPalといった大手決済ネットワークが、暴力的または性的とみなされるコンテンツに対し圧力をかける事例が増えています。これは単なる企業方針の域を超え、ある種の「検閲」とも呼べる動きに発展しています。

🛑 たとえば、2025年7月には反ポルノ団体「Collective Shout」の要請を受け、SteamやItch.ioといったPCゲーム配信プラットフォームが、突如として大量のアダルトゲームを削除しました。理由の詳細は明示されておらず、明文化された基準のないまま、決済会社の意向でコンテンツが排除されるという事態が現実に起きています。

このような動きは、日本でもDLsiteやFANZAにおいて、一部クレジットカードの使用が制限された事例などがあり、国際的な問題となっています。

「公正な銀行アクセス法」案が目指すもの

こうした“民間企業による実質的な検閲”に対抗する法案が、「Fair Access to Banking Act(公正な銀行アクセス法)」です。この法案は、銀行やクレジットカードネットワークが任意の判断で特定の個人・企業へのサービス提供を拒否する行為に歯止めをかけることを目的としています。

🔍 対象となるのは、総資産100億ドル(約1.5兆円)以上の大手銀行、信用組合、そしてVisaやMastercardなどのカードネットワーク。法案は、金融機関に対し以下のような義務を課しています:

  • 地域内で事業を行う全ての人に対して、金融サービスを公平・平等に提供すること
  • サービス拒否の判断は、明確な「定量的で中立的なリスク基準」によらなければならない
  • 単なる「評判リスク(reputational risk)」や政治的思想を理由とする拒否は禁止
  • 拒否する場合は書面で理由を説明することが義務

こうしたルールは、たとえ論争的な業界であっても、合法である限り金融サービスへのアクセスが確保されるべきだという原則に基づいています。

違反企業への厳しい制裁措置も

この法案は、金融機関が法を破った場合の制裁措置も設けています。

💼 銀行や信用組合に対しては、以下のようなペナルティが科される可能性があります:

  • 連邦準備制度による貸付プログラムの利用停止
  • ACH(銀行間送金ネットワーク)へのアクセス剥奪

これらの制裁は銀行業務に致命的な影響を及ぼすため、強力な抑止力となります。

💳 一方で、VisaやMastercardといった決済ネットワークに対しては、通貨監督庁(OCC)から1回の違反につき最大1万ドル(約150万円)の民事罰が課されるに留まっています。この点については、法案の効果を疑問視する声もあり、さらなる強化が求められています。

被害者に「即時提訴」の権利を保障

この法案では、被害を受けた個人や事業者が、行政による手続き完了を待たずに、直接連邦地方裁判所に民事訴訟を起こせることも明記されています。

⚖️ 勝訴した場合、以下のような救済が受けられます:

  • 損害額の3倍の懲罰的損害賠償
  • 訴訟費用と弁護士費用の全額

これは、被害者救済と金融機関へのプレッシャーの両面で、大きな意味を持つ制度といえるでしょう。


USIPSの評価と課題点

提案を支持する米インターネット権利団体「USIPS」は、本法案について「銀行や信用組合に対する規制としては有効」と評価しています。

しかし同時に、近年最大の影響力を持つのはVisaやMastercardといった決済ネットワークであるとして、「罰則の弱さ」が最大の課題であると指摘しています。

💡 USIPSは、今後の法案改正において以下のような点を強化すべきだと提案しています:

  • 決済ネットワークにも民事訴訟を可能にする条項の追加
  • 罰金額の上限引き上げ
  • 個別の不当行為に対する明文化と救済手続きの明示

表現の自由を守るために、必要なのは「決済の自由」

🗽 ゲームやマンガ、アダルト作品を含むデジタル表現は、決済手段が遮断されるだけで市場から姿を消してしまいます。これは、政府による検閲ではなく「民間による経済的制裁」による排除とも言えます。

公正な銀行アクセス法案は、こうした状況に一石を投じる取り組みです。たとえ表現が一部の人にとって不快であったとしても、合法である限り流通の機会を奪われるべきではない──この原則こそが、自由で健全なインターネットの根幹なのです。

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