欧州連合(EU)は、未成年者が有害なオンラインコンテンツに晒されるリスクを低減するため、革新的な年齢確認アプリのプロトタイプを発表しました。これは、2026年末までに導入予定のデジタル身分証明書(eID)と連携する仕組みで、まずは5カ国(フランス・スペイン・イタリア・デンマーク・ギリシャ)で試験運用が始まります。

🏛 背景:デジタルサービス法(DSA)が求める未成年者保護
EUでは、2024年に本格施行された「デジタルサービス法(DSA)」により、ソーシャルメディアやポルノサイトを含むすべてのオンラインプラットフォームに対し、違法コンテンツへの対応と同時に未成年者の保護が義務化されています。
特にポルノサイトなど成人向けコンテンツの提供元には、ユーザーが18歳以上であることを確認する厳格な仕組みの導入が義務づけられていますが、これまでEU全域で共通する技術的な手段は存在しませんでした。

📲 年齢確認アプリの仕組みと特長
欧州委員会(EC)が今回発表した年齢確認アプリのプロトタイプは、次のような仕組みで構成されています。
- ✅ eID技術と連動:EU共通の「デジタル身分証明ウォレット」と連携し、18歳以上かどうかを証明。
- ✅ プライバシー重視:確認された情報は「年齢が18歳以上か否か」のみで、名前や住所などの個人情報は提供されない。
- ✅ 導入方法を国ごとに選択可能:政府の公式アプリに統合するか、独立したアプリとして配信するかを選べる。
- ✅ 第三者も導入可能:民間企業や開発者がこの技術仕様を基に独自の年齢確認アプリを開発することも許可。
この仕組みは、将来的にアルコールやタバコの購入など、他の年齢制限付きサービスへの応用も想定されています。

🔍 テストはまず5カ国でスタート、2025年6月から実証実験開始
アプリのユーザーテストはすでに2025年6月末から一部の環境で開始されており、今後は以下の5カ国で本格展開されます。
- 🇫🇷 フランス
- 🇪🇸 スペイン
- 🇮🇹 イタリア
- 🇩🇰 デンマーク
- 🇬🇷 ギリシャ
これらの国では、政府主導または民間との協力体制のもとで年齢確認アプリの実用化と導入体制の検証が進められます。

🧠 ECが公表した「未成年者保護ガイドライン」の4つの柱
アプリの導入にあわせて、欧州委員会はオンラインでの子どもの安全を守るための包括的なガイドラインも策定・発表しています。以下の4つの観点が特に重要とされています:
1. 📱 依存性のある設計の排除
- 「連続通知」や「既読機能」など、未成年の行動依存を助長する機能は無効化を推奨。
- アルゴリズムが過剰利用を促さないよう設計すべきと提言。
2. 🚫 オンラインいじめへの対応
- ブロック/ミュート機能の明確な提供。
- 同意なしにグループへ追加できないよう制限。
- 未成年者の投稿コンテンツはダウンロード不可&スクリーンショット制限を推奨。
3. ⚠️ 有害なアルゴリズムの制御
- おすすめコンテンツはユーザーの明示的な意志を優先。
- 一度「見たくない」と判断された内容は再表示すべきでないというルールを提案。
4. 🧍♂️ 見知らぬ人との接触リスク最小化
- 未成年のアカウントは初期設定で非公開にすることを標準とする。
- オンラインでの接触を最小限にし、リスクを抑える設計にすることが望まれます。
🔐 今後の展望:ゼロ知識証明(ZKP)によるさらなるプライバシー保護も
欧州委員会は、今後のアプリのバージョンアップにおいて、**ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof)**技術の導入も視野に入れていると明かしています。
これにより、「18歳以上であること」の証明だけを提供しつつ、生年月日や身元情報を一切開示せずに済むプライバシー保護の高度化が可能になります。
✅ まとめ:EUが目指す「プライバシーを守る安全なインターネット体験」
今回のEUの取り組みは、「子どもをオンラインで守る」だけでなく、プライバシー尊重と技術的信頼性を両立させる新しい基準となり得る重要なステップです。
日本を含む他国でも、同様の技術的枠組みの導入が議論される可能性は十分あり、今後の国際的なスタンダード形成に向けても注目が集まります。