AIの進化は「指数関数的」とよく表現されますが、
本当に怖いのは“ある瞬間まで何も起きていないように見える”ことかもしれません。
AI開発企業 Anthropic のエンジニア兼研究者である
アンディ・ジョーンズ 氏は、
AIと人間の未来を語る上で、意外な歴史的アナロジーを提示しました。
それが──
「エンジンの進化と馬の消失」 です。

⚙️ 蒸気機関は“ゆっくり”進化したが、馬は“突然”消えた
蒸気機関の始まり
現代のエンジンにつながる蒸気機関は、
1710年ごろ、イギリスの発明家 トーマス・ニューコメン によって開発されました。
- 用途:鉱山の排水
- 原理:真空と大気圧の差
- 性能:極めて低効率
その後、蒸気機関は100年以上かけて着実に改良されていきます。

🐴 馬の数は減らなかった…ある時までは
興味深いのはここからです。
- エンジンの効率は 約120年間、右肩上がり
- しかし 馬の数はほぼ横ばい
ところが1930〜1950年にかけて、
アメリカの馬の90%以上が姿を消しました。
ジョーンズ氏はこの現象を、こう表現しています。
「エンジンの進歩は着実だった。
しかし、馬と同等になったのは突然だった」

♟️ チェスAIと人間の関係も、同じ曲線を描いた
次にジョーンズ氏が示したのが、
チェスAIと人間の関係です。
Eloレーティングの推移
- 1985年:チェスAIは Elo 1700未満(中級者)
- 毎年:約+50ポイントで成長
- 2000年代半ば:人類トップを追い越す
勝率の崩壊
- 2000年頃:
人間のグランドマスター勝率 約90% - 10年後:
勝率 10%以下
ここでも同じ言葉が繰り返されます。
「進歩は緩やかだった。
だが、追い抜きは突然だった」
💰 AI投資は、すでに歴史的国家プロジェクトを超えている
ジョーンズ氏は、次にAI投資額のグラフを示します。
- 指標:AI設備投資 ÷ アメリカGDP
- 比較対象:
- マンハッタン計画(原爆)
- アポロ計画(月面着陸)
👉 AI投資はすでに両者を上回る水準
しかも今後数年、
倍増ペースで増え続けると見られています。

🧠 「馬になる側」になった研究者自身の体験
ここで話は、抽象論から極めて個人的な体験へと移ります。
ジョーンズ氏は、Anthropic創業初期から在籍する研究者で、
新入社員の質問に答える役割を担っていました。
📊 月間質問数の変化
- 〜2024年中頃:
月4000件以上の質問に対応 - 2024年10月:
社内で Claude が質問対応を開始 - 2025年6月:
質問の80%が消失
理由はシンプルです。
Claudeが答えられるようになったから。

🧮 コスト比較が示す“残酷な現実”
ジョーンズ氏は、次のように語ります。
「私が追い抜かれるのに必要だった時間は、
たった半年でした」
100万語を書くコスト比較
- ジョーンズ氏(人間)
- 発展途上国の低賃金労働
- Claude Opus
👉 Claudeは人間の1000分の1以下のコスト
つまり、
「地球上で最も安い労働力である“人間”よりも、
単語あたりのコストが安い」
🚗 再び「馬と自動車」のグラフに戻る
最後に示されたのが、
アメリカの馬の頭数と自動車台数の推移です。
- 1920年:
馬 約2500万頭 - 数十年後:
93%消失
重要なのは、
馬が“無能”だったからではないという点です。
- 馬は優秀だった
- 需要もあった
- だが コストと性能で置き換えられた
🌍 AIと人間の未来はどうなるのか?
ジョーンズ氏は慎重に、しかし明確に示唆します。
- AIは人間の負担を確実に減らしている
- しかし同時に、
仕事そのものを消すスピードは想像以上に速い
特に影響を受けやすいのは:
- ホワイトカラーの初級職
- 知識労働の補助業務
- 社内Q&A、文書作成、分析
📝 まとめ|問題は「AIが賢くなるか」ではない
この話が示す本質は、ここにあります。
- ❌ AIはいつ人間を超えるか?
- ⭕ AIが人間と同等になった瞬間、何が起きるか?
歴史は何度も語っています。
「進歩はゆっくり、崩壊は一瞬」
私たちは今、
**馬がまだ街を埋め尽くしている“直前の時代”**にいるのかもしれません。
