プログラミングや開発の学習を始めたばかりの初心者にとって、
「開発者が書いたチュートリアル」は最初の壁になりがちです。
一見「初心者向け」と書かれていても、
実際には専門用語や前提知識が多すぎて、
読むだけで心が折れてしまう人も少なくありません。
そんな“技術チュートリアルの読みづらさ”を
ユーモアとリアルな視点で描いたブログ記事が話題を呼んでいます。
📖 出典:How I, a non-developer, read the tutorial you, a developer, wrote for me, a beginner – Annie Müller

🎨 「初心者の視点」で書かれた風刺ブログ
この記事を書いたのは、作家の アニー・ミューラー(Annie Müller) 氏。
タイトルは直訳すると、
「開発者でない私が、あなた(開発者)が初心者の私のために書いたチュートリアルを読んだときの話」。
彼女は「Very Simple Thing(とてもシンプルなこと)」という架空の開発プロジェクトを例に、
初心者がどのように混乱するかをユーモアたっぷりに描いています。
🤯 架空のチュートリアルが「初心者の混乱」を完璧に再現
ミューラー氏のチュートリアル例はこんな感じです。
- ターミナルを開き「ajkl;gawgor;iqeg;iJLkqen」を実行
- 「folder/hidden/deep/in/the/file/system/surprise!.file」に移動し、ファイル内容をコピー
- ターミナルに戻って貼り付け、「64A786AGR45JAR」と入力
- 「ピコーン!」と表示されたら成功
- 最後に「スナーファス」を起動してファイルをアップロード
……といった具合です。
当然ながら、登場する単語や手順はすべて架空のもの。
しかし、この**「意味不明なのに“わかっている前提で書かれている感じ”**が、
実際の初心者が感じる現実そのものなのです。

🔍 「Very Simple Thing」は“シンプル”の皮肉
この「Very Simple Thing(とてもシンプルなこと)」というタイトル自体が皮肉。
実際のチュートリアルでも、よく「It’s simple!」「Just run this command.」
といった表現が登場しますが、初心者にとってはまったく“シンプル”ではないことを象徴しています。
ミューラー氏は次のように述べています。
「初心者向けチュートリアルの“最初の3ステップ”を完了するまでに、
約7時間と193回のGoogle検索が必要になることもあります。」
つまり、“わかりやすい説明”をうたっていても、
専門用語が説明なしで登場したり、操作の前提が抜けていたりすると、
「解説を理解するための解説」を読まなければならない状態に陥るのです。

💬 「コピーして貼り付ける」だけでも、初心者には難しい?
ミューラー氏は、チュートリアルにありがちな文言にも注目します。
たとえば「ファイルをコピーして貼り付けるだけ」といった指示。
これも、開発の文脈では単なるコピー&ペーストではなく、
ターミナル操作や特定のパス構造の理解を前提としていることが多いのです。
こうした「開発者にとっての常識」が省略された結果、
初心者はどこでつまずいているのかすらわからなくなってしまいます。

⚠️ 初心者を置き去りにする“知識の呪い”
Hacker Newsでこのブログが話題になると、
多くのエンジニアから「その通り!」と共感の声が上がりました。
中でも注目されたのが「知識の呪い(Curse of Knowledge)」という概念です。
これは、専門知識を持つ人が、他の人も同じ知識を持っていると錯覚してしまう心理現象。
チュートリアルを書くとき、
「この程度はわかっているはず」と思い込むことで、
重要な説明がごっそり抜け落ちてしまうのです。
あるユーザーはこう語っています。
「初心者がどこでつまずくのかを見るために、
実際に“知識のない人”に読ませるべきだ。
これは最も誠実なドキュメンテーションテストだ。」
📚 経験者でも“迷子”になることがある
また、コメントの中には「これは初心者だけの問題ではない」という指摘もありました。
新しいフレームワークやツールが登場すると、
そのエコシステム内で“共通認識”が急速に形成されます。
すると、初期の丁寧なチュートリアルが埋もれ、
中級者以上でも最新情報を追うのが難しくなるという現象が起こります。
「新しい技術ほど“暗黙の常識”が多く、
初心者だけでなく経験者も置いていかれる。」
こうした構造的な問題も、
開発者がドキュメントを作る上で見逃せないポイントといえます。
💡 ミューラー氏の提案:「知識を持つ人こそ“言葉を選ぶ勇気”を」
ミューラー氏はブログの最後で次のように語ります。
「これはジョークを交えた批評です。
知識を共有してくれる開発者には心から感謝しています。
でも、初心者の視点に立って“どこからが常識なのか”を
慎重に判断して言葉を選ぶことが大切です。」
開発者にとっては当たり前の一文でも、
初心者にとっては理解を決定づける一文になる。
この視点の転換こそが、
「誰にでも伝わるドキュメント」を書く第一歩なのです。
🧭 まとめ:良いチュートリアルとは「優しさの設計」
今回の議論が示したのは、
「初心者向け」とは“技術レベル”ではなく“視点”の問題であるということ。
✅ “誰もが理解できる”ように丁寧な説明をする
✅ 専門用語は一度立ち止まって説明する
✅ 実際の初心者に試してもらう
こうしたプロセスを積み重ねることが、
最終的にはエコシステム全体の健全化につながります。
📘 「優しさの設計」=よいチュートリアル設計。
ミューラー氏のブログは、その本質をユーモラスに突いた作品と言えるでしょう。

