――米シンクタンクCSISが行った26回の戦争シミュレーションが示す最悪の現実

中国と台湾をめぐる緊張は、もはや「仮定の話」ではなくなりつつあります。
中国は2022年以降、台湾の海上・航空封鎖を想定した大規模軍事演習を繰り返しており、実際の有事を想定した準備を着実に進めています。
こうした状況を受け、アメリカの国家安全保障シンクタンク
戦略国際問題研究所(CSIS) は、
「もし中国が台湾を封鎖したら何が起きるのか?」
を検証するため、**26回に及ぶ本格的な図上戦争演習(ウォーゲーム)**を実施しました。
その結論は、極めて重く、そして世界全体に影響を及ぼす内容でした。

🧭 なぜ「台湾封鎖」が現実的なシナリオなのか
CSISは、「中国による台湾封鎖は不可避ではない」としつつも、次の点から十分に起こり得る選択肢だと指摘しています。
- 中国政府・軍高官による台湾統一を正当化する言論の増加
- 中国人民解放軍(PLA)の急速な海空軍力の拡張
- 直接侵攻よりもエスカレーションを抑えやすい手段である点
特に封鎖は、
👉 全面戦争を避けつつ台湾を屈服させられる可能性がある
👉 国際社会の対応を試す「グレーゾーン戦略」
として、中国にとって魅力的な選択肢とされています。
🎮 26回の図上演習はどう行われたのか?

CSISの研究チームは、
- 中国側
- 台湾+アメリカ(連合側)
に分かれ、地図上に艦艇・航空機・輸送船を配置しながら、
ターン制で意思決定を行うリアルなウォーゲームを実施しました。
実施内容
- 想定対応4パターン × 21シナリオ
- 自由度の高いフリープレイ:5回
- 合計26回のシミュレーション
封鎖の「激しさ」を
- 低
- 中
- 高
の3段階に分け、段階的に検証しています。

⚡ シナリオ①「激しさ・低」でも台湾は深刻な打撃を受ける
「激しさ・低」は、
- 中国が主に海上封鎖
- 電力・通信・港湾インフラを部分的に攻撃
する想定です。
結果
- 台湾軍は上陸部隊に対し時間稼ぎは可能
- しかし、中国軍の圧倒的な物量の前に徐々に劣勢
- 台湾への輸送船到達は極めて困難
この段階でも、
👉 数千人規模の死傷者が発生
すると予測されています。
🚢 アメリカが「ウクライナ戦略」を取った場合
アメリカが、
- 直接参戦はしない
- 物資・情報・兵器支援に限定
する、いわゆるウクライナ型支援を行ったケースでは、
- 一部の輸送船は撃沈・妨害される
- それでも台湾は一定量の物資確保に成功
するケースが多くなりました。
ただし、これは封鎖が長期化しないことが前提です。
💣 シナリオ②「激しさ・中」:輸送船が次々と沈む
「激しさ・中」では、中国軍が
- 潜水艦
- 機雷
- 対艦ミサイル
を本格投入します。
結果
- 輸送船の到達率は大幅に低下
- 台湾を支えるためには
👉 数十〜数百隻の船舶損失を覚悟
しなければならない、という極めて厳しい結果になりました。

✈️ シナリオ③「激しさ・高」:ベルリン封鎖の再来は不可能
本格戦闘を含む「激しさ・高」では、
多くの参加者が1948〜1949年のベルリン封鎖を想起し、
空輸による補給を検討しました。
しかし、ここで決定的な現実が突きつけられます。
- 台湾の人口:約2300万人
- 当時のベルリン:その約10分の1
👉 どれだけ大規模な空輸を行っても、
台湾の日常消費量の約2%しか賄えない
という結論に至りました。

📉 フリープレイ5回の結果
- 激しさ・低:2回
- 激しさ・中:1回
- 激しさ・高:2回
どのケースでも、無血で終わるシナリオは存在しませんでした。
🌍 台湾封鎖が世界に与える影響
CSISは、台湾封鎖が
台湾と中国だけの問題ではない
と強調しています。
影響分野
- 台湾のエネルギー輸入依存(ほぼ全量輸入)
- 半導体供給網(TSMCを中心とした世界的影響)
- 世界貿易・物流の混乱
- 周辺国(日本・韓国・ASEAN)への波及
封鎖は、地球規模の経済ショックを引き起こす可能性があります。
🗣️ CSIS研究責任者の警告
調査を主導した、米国防安全保障省の上級顧問
マーク・F・カンシアン 氏は次のように述べています。
「ベルリン封鎖はNATO創設につながりました。
台湾封鎖も、中国を国際社会から孤立させる可能性があります。
しかし、封鎖が戦争へとエスカレートすれば、
人的損失は想像を絶する規模になります。
問題は『どうやってそれを防ぐか』です」
📝 まとめ:台湾封鎖は「全世界が当事者」になる危機
中国による台湾の海上封鎖は、
- 軍事的
- 経済的
- 人道的
すべての面で、世界を巻き込む危機になります。
CSISの26回のシミュレーションが示したのは、
👉 どの選択肢にも甚大な代償が伴う
👉 封鎖は「低強度」でも破壊的
という冷酷な現実でした。
だからこそ今、問われているのは
「起きたらどうするか」ではなく、
「どうやって起こさせないか」
なのです。
