2026年2月、中東の緊張はデジタルインフラを巻き込む新たな局面を迎えました。バーレーンにあるAmazon(AWS)のデータセンターがドローン攻撃により深刻なダメージを受け、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)がその攻撃の正当性を主張しています。
なぜ、民間企業のインフラが「軍事目標」とみなされたのでしょうか。その背景には、現代戦におけるクラウドコンピューティングの役割の変容があります。

🛰️ 「敵の軍事・諜報活動を支援」革命防衛隊の主張
イラン国営のファルス通信によると、革命防衛隊はバーレーンのAWSデータセンターを**「敵(アメリカ・イスラエル)の軍事・諜報作戦を支える中枢拠点」**として特定したと発表しました。
特に注目されているのが、AWSが提供する**「AWS Ground Station」**の存在です。
- AWS Ground Stationとは: 人工衛星からのデータを地上で直接受信・処理できるフルマネージドサービス。
- 攻撃の意図: イラン側は、このインフラが米軍やイスラエル軍の偵察衛星データの処理、およびドローン操作のバックボーンとして利用されていると判断しました。
2026年2月28日に始まった米イスラエル連合軍によるイランへの直接攻撃(最高指導者ハメネイ師を失うという未曾有の打撃)に対し、イランは「物理的な反撃」として、このデジタルインフラの破壊を選んだ形です。

🏗️ バーレーン拠点の重要性と「中東リージョン」の混乱
2019年に開設されたバーレーンのAWSリージョンは、中東・湾岸諸国におけるAmazonサービスのゲートウェイであり、域内最大規模を誇ります。
今回の攻撃の影響は甚大です。
- 運用の不透明化: Amazonは中東リージョンの運用が「予測不可能」な状況にあることを認めています。
- 広がる被害: 攻撃はバーレーンに留まらず、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイを含む合計3カ所のデータセンターが標的となりました。
🛡️ 現代戦のジレンマ:民間技術の「兵器化」
今回の事件は、ビッグテック企業が国家間の紛争において**「準軍事組織」**とみなされるリスクを浮き彫りにしました。
- デュアルユース(軍民両用)の壁: クラウド、AI、衛星通信(Starlinkなど)は、民間向けと軍事向けの境界線が極めて曖昧です。
- AIの関与: 奇しくも、米軍がイランへの先制攻撃にAnthropic社のAI「Claude」を使用したとの報道もあり、ハイテク企業のインフラが「攻撃の加担者」として攻撃側に認識される土壌が整っていました。
- 地政学的波及: アゼルバイジャンでも同様の攻撃が発生しましたが、イラン側は関与を否定。イスラエルによる「自作自演」や紛争拡大の策動であると主張するなど、情報戦も激化しています。
📝 まとめ:データセンターは「新時代の最前線」へ
今回のAmazonデータセンターへの攻撃は、もはやサイバー空間の攻防に留まらず、**「クラウドインフラへの物理的攻撃」**が国家間紛争の標準的な手段になったことを示しています。
民間企業が提供するインフラが軍事作戦に組み込まれることで、その施設や従業員が攻撃の標的となるリスクは、今後世界各地で高まっていくでしょう。企業の透明性と中立性が、物理的な安全保障を左右する時代へと突入しています。
📖 参考・出典
- Amazon Bahrain facility targeted for U.S. military support: Iran media – CNBC
- AWS facilities in UAE, Bahrain damaged in attacks – Iran Herald
- Fars News Agency: IRGC strike on U.S. data centers in the region
