「絶対音感」というと、幼少期からの特別な訓練が必要で、大人になってからでは習得は難しいと思われがちです。しかし、そんな常識に挑戦し、15年という歳月をかけて絶対音感を身につけた人物がいます。
今回は、ブログ『Modern Descartes』で数学や音楽について発信しているブライアン・キフン・リー氏の実体験をご紹介します。彼の粘り強い歩みから、大人でも絶対音感を習得できる可能性と、そのためのヒントを探っていきましょう。

🎶「絶対音感」とは?
まず前提として、絶対音感とは何かを簡単におさらいしましょう。
**絶対音感(Perfect Pitch)**とは、基準となる音を聞かずとも、ある音が「ド(C)」なのか「ソ(G)」なのかを正確に言い当てられる能力です。
これに対し、「相対音感」は他の音と比べて音の高低を判断する能力であり、こちらは大人でも比較的身につけやすいとされています。

👦 ピアノとクラリネット、そして挫折
リー氏は5歳からピアノを始め、9歳で引っ越しを機に先生を替えましたが、相性が合わず1年で中断。代わりにクラリネットを始め、こちらは続けることに。
12歳になる前には、クラリネットの先生が弾いた音を即座に真似でき、「絶対音感がある」と言われたそうです。しかし、これはクラリネット特有の構造に頼ったものと自己分析しており、当時の彼は絶対音感を持っていたわけではなかったと語っています。

🎓 大学での再出発と「ピアノ限定」の絶対音感
15歳で再びピアノを始めたリー氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学。1年生の頃、授業数が制限されていたこともあり、週に20〜30時間を音楽に費やす生活を送っていました。
- ピアノを弾く
- 楽譜を読む
- 新しいクラシック音楽を聴く
こうしているうちに、「ピアノに限って」絶対音感が身についていったのです。これが15年間にわたる訓練の集大成となりました。
🎻 他の楽器への応用と「音の混乱」
ピアノでは音が分かるようになっても、オーケストラが入ると音符が読めなくなる…。そこで彼は他の楽器の音に対しても絶対音感を得ようとします。
しかし、ここで一つ大きな壁が立ちはだかります。
🎺 クラリネットはB♭管
クラリネットで覚えた「ド」は、実際には「シ♭」だったのです。
この「ズレ」によって、以前の記憶と現在の聴覚との間にギャップが生じ、音の混乱に悩まされるようになりました。

📈 徐々に広がっていく音感の領域
その後も音楽理論を学び、合唱団に参加したり、オペラ・室内楽の聴き方を研究したりと、さまざまな形で音楽に向き合い続けたリー氏。
そして…
- 25歳頃:オーケストラや弦楽器の音程を認識できるように
- 28歳頃:人の声の音程も把握可能に(合唱団の影響)
- 32歳頃:警報音やアラームといった無調音の判別も可能に
このように、絶対音感の適用範囲を少しずつ広げていったのです。
🧠 絶対音感の「メンテナンス」も必要
現在のリー氏は完全な絶対音感を持っていますが、長期間音楽に触れていないと、最初のうちは少し時間がかかることもあるといいます。
「毎年冬、スキー靴を履いて滑り方を思い出すような感覚です」⛷️
と例えるように、訓練した音感も使わなければ鈍ることがあるのです。
✅ 絶対音感を身につけるためのヒント
リー氏の経験から導き出された、絶対音感を身につけるための条件は以下のとおりです。
🎯 リー氏が挙げる習得のための条件:
- 🎼 C調以外の楽器を学ばない(B♭管は避ける)
- 🎧 常に正確なチューニング環境で音楽を聴く
- 📖 楽譜を読みながら音楽を聴く
- 🧠 音楽理論を学び、和声や旋律の仕組みを理解する
- ⏳ 1万時間以上音楽を聴く
- 🎵 調性と無調性の境界にある作品に触れる
(ラヴェル、ショスタコーヴィチなどがオススメ) - ❤️ 音楽を「楽しむ」気持ちを忘れない
🌟 まとめ|大人でも絶対音感は身につけられる
絶対音感は「子どものうちにしか習得できない」と考えられがちですが、リー氏の経験はその固定観念を覆します。
時間はかかっても、音楽への情熱と継続的な努力があれば、大人でも絶対音感は習得可能であることを彼は証明しました。
これから音楽を本格的に学びたいと考えている方、絶対音感に興味がある方にとって、大きな希望となる体験談ではないでしょうか?✨
コメント