2025年4月28日、スペインやポルトガルを中心に大規模な停電が発生し、翌29日まで信号、ATM、交通機関、インターネット通信が停止。人々は不安な時間を過ごしました。この停電の原因として、一部では「大気誘導振動（Induced Atmospheric Vibration）」なる現象が取り沙汰されました。しかし、この現象とは一体何なのでしょうか？専門家が解説します。
⚡ 停電の背景と「大気誘導振動」とは？
ポルトガルのエネルギー会社RENは当初、「スペイン内陸部での極端な気温変化により、超高圧送電線に異常な振動が発生した」と説明。この異常な振動を「大気誘導振動」と呼びました。しかし、その後この説明は撤回され、依然として正確な原因は未解明です。
オーストラリア・スウィンバーン工科大学の電気工学教授メフディ・セイエドマフムーディアン氏は、この用語について次のように解説しています。
🌀 「大気誘導振動」とは公式な電気工学用語ではなく、気温や気圧の急激な変化によって引き起こされる大気中の波動や振動を指すと考えられます。
例として、地表の急速な加熱による上昇気流と、周囲の冷たい空気との圧力差が「池のさざ波」のような大気波を作り出し、これが送電網に影響を与える可能性があります。
動画では、サウスダコタ州の暴風雪の影響で送電線が大きくたわむギャロッピングが発生しています。
このような振動が送電網に負担をかけると停電になりかねないため、技術者らはよく「ストックブリッジダンパー」と呼ばれるワイヤーのスタビライザーを使用して停電リスクを抑えているそうです。
🌬️ 電力網に影響を与える「風による振動」とは？
停電の原因としては、風による送電線の振動（導体ギャロッピングやイオリアン振動）が考えられます。
- 導体ギャロッピング（高振幅・低周波数）
- イオリアン振動（低振幅・高周波数）
風によって送電線が大きく揺れることで、送電システム全体に負担をかけ、停電につながる可能性があるのです。
🏭 電力インフラの脆弱性と「大気誘導振動」
「大気誘導振動」の正体は、重力波や音響重力波、熱振動などとして知られる現象の一種である可能性が高いと指摘されています。これらの大気波は送電線に不規則な振動を引き起こし、電力インフラ全体を揺るがすリスクを孕んでいます。
⚠️ セイエドマフムーディアン氏は「電力網の復元力を抜本的に見直さない限り、気象や技術的要因によって停電が頻発し、社会全体が危険にさらされる」と警告しています。
🔍 結論：「大気誘導振動」はまだ仮説だが、電力網の脆弱性は事実
「大気誘導振動」は、正式な科学用語ではないものの、気象による大気波や熱振動が送電網に与える影響を指すものとして説明されつつあります。今回の大停電の真因は未解明ですが、電力網の脆弱性が浮き彫りになったのは事実です。
💡 集中型の電力供給に依存し続けるリスクを見直し、分散型エネルギーやインフラ強化の必要性が高まっています。
