近年、アメリカを中心に深刻な社会問題となっている「フェンタニル」。今回は、その驚異的な強さや依存性、そしてなぜ麻薬の売人にとって都合の良い薬なのかを、科学的視点で解説します。
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🔍 フェンタニルってどんな薬物?
フェンタニルは、 合成オピオイド の一種で、強力な鎮痛剤として医療現場で使われています。しかし、その ヘロインの約50倍もの効力 と高い依存性が問題視され、違法流通が横行しています🚨。
この薬は、脳内の「オピオイド受容体」に作用し、 痛みを和らげ、強烈な多幸感 をもたらします。これは一見「夢の薬」のようですが、実はこれが地獄の入口です……。

体が危害から避けるための信号である「痛み」と、体にとってよい行動を促進させる「快楽」は人類が生存する上で重要な感覚です。2つは相反する存在ですが、体のメカニズムとしては密接にリンクしています。

主に中枢神経にあるオピオイド受容体は、痛みと快楽を制御する細胞表面受容体です。強い痛みが発生しても、エンドルフィンなどの脳内物質が分泌されてオピオイド受容体に作用することで、痛みを感じなくなります。たとえば、激しいケガを負いながら獲物を狩っていても痛みが気にならなかったり、痛みを伴って我が子を出産した後に子どもを抱えて幸福感を覚えたりするのも、この仕組みがあるからこそ。

オピオイド受容体に作用する内因性の物質としてはエンドルフィンやエンケファリンなどがありますが、外因性として最も有名なものがモルヒネやヘロインです。ケシの実に含まれる化学物質はオピオイドの一種であり、このオピオイド受容体に強く働きかけます。

痛みを和らげてくれるということで、モルヒネやヘロインは鎮痛剤として使われています。

🧠 脳を狂わせるメカニズム
オピオイド受容体は「痛み」と「快楽」をコントロールする重要なスイッチ。通常は脳内物質(エンドルフィンなど)が自然に働いていますが、フェンタニルはこれを強制的に刺激。
✅ 猛烈な幸福感と不安の消失 → 依存への第一歩
✅ 報酬系(快楽を学習する仕組み)をマヒ → 日常の小さな喜びを感じられなくなる
✅ 耐性の獲得と摂取量増加 → 効果を得るための摂取量が増加、最終的に致死量を超える危険
その結果、痛みや不安を抑える効果は薄れ、骨や筋肉の痛み、内臓不調、強烈な禁断症状などが次々に襲いかかります😱。
🚨 なぜフェンタニルは「売人」にとって都合がいい?
🔸 高効率で安価に製造可能:フェンタニルはケシ畑を必要とせず、化学合成で製造可能。
🔸 少量で大きな効果:トラック1台分程度の量でアメリカ全土に供給可能。
🔸 他のドラッグに混ぜやすい:売人はフェンタニルをごく微量混入し、依存性を高めリピーターを獲得。
🔸 安価な混合錠剤:抗不安薬と混ぜた偽造錠剤で死亡者多数。2023年にはDEA(米麻薬取締局)が 1億1500万錠以上 を押収、その7割が致死量超え😨。
☠️ 驚異の致死量と急増する死者数
📏 フェンタニルの致死量はわずか2mg(鉛筆の芯ほどの量)。
📈 アメリカでは2013~2023年の間に フェンタニルの過剰摂取死者数は40万人超 に達しています。
🚫 まとめ:絶対に手を出してはいけない
Kurzgesagtは次のように警告しています:
🗨️「フェンタニルは快楽の超新星。しかし、その快楽はすぐに苦痛の超新星に変わる。どんな理由があっても絶対に手を出してはいけない。」