「卵が先かニワトリが先か」の永遠の問いに新たな答えが判明か:ジュネーブ大学の研究結果
「卵が先かニワトリが先か」という問いは、2000年以上にわたって哲学者や科学者を悩ませてきたテーマです。古代ギリシャのアリストテレスやプルタルコスといった哲学者たちが議論して以来、キリスト教や進化論といった異なる視点でも見解が分かれてきました。そして2024年、ジュネーブ大学の研究チームが発表した新しい研究結果により、この問いに科学的な観点から「卵が先」という可能性が高いことが示唆されています。
1. 「卵が先かニワトリが先か」という問いの歴史
紀元前4世紀、哲学者アリストテレスはこの問いについて「無限の連続性がある」として、原因と結果が循環する永遠の謎だと述べました。また、1世紀頃の哲学者プルタルコスも「この問題は世界の始まりがあったかどうかという哲学的命題の一部である」と考えました。キリスト教では「神が生き物を創造した」という教義に基づき、ニワトリが先だとされてきましたが、19世紀にダーウィンの進化論が登場すると、「卵が先」という見方が科学的に支持されるようになりました。
2. ジュネーブ大学の研究結果が示す「卵が先」の可能性
ジュネーブ大学の研究チームは、進化の起源をさかのぼるため、2017年にハワイ周辺で採取された海底堆積物から見つかった単細胞生物Chromosphaera perkinsii(クロモスファエラ・パーキンシー)を研究しました。この生物は10億年以上前に動物の進化系統から分岐したもので、多細胞生物への進化の過程を理解する上で重要な手がかりになると考えられています。
研究チームによれば、Chromosphaera perkinsiiは特定の段階で多細胞コロニーを形成し、ライフサイクルの3分の1を占めるといいます。この多細胞コロニーには2つ以上の異なる細胞タイプが含まれており、動物の胚発生と似た特徴を持っています。
3. 古代から存在していた「胚発生」の遺伝的プログラム
ジュネーブ大学理学部のオマヤ・ドゥディン准教授は、「Chromosphaera perkinsiiが示す多細胞のコロニー形成は、地球上に最初の動物が出現するよりも前に、すでに多細胞発生の基礎が存在していたことを示唆しています」とコメントしています。さらに、遺伝子活性の分析から、Chromosphaera perkinsiiが形成する多細胞構造が動物の胚発生に類似していることが明らかになりました。これにより、複雑な多細胞生物の発生を制御する遺伝的プログラムが10億年以上前から存在していた可能性が示唆されています。
4. 筆頭著者による「卵が先」論争へのコメント
本研究の筆頭著者であるジュネーブ大学のマリーン・オリヴェッタ氏は、「今回の研究から、自然界には『ニワトリを発明する』よりはるか前に『卵を作るための遺伝的ツール』が存在していたことが示唆されます」と述べています。これにより、「卵が先かニワトリが先か」という古代からの論争に対し、科学的には「卵が先」の可能性が高いとの見解が支持されています。
まとめ:卵が先かニワトリが先か、科学的アプローチの意義
この研究は、進化の過程における多細胞生物の発生や遺伝子プログラムの解明に新たな光を当てるものです。科学的視点から見れば、「卵が先」という結論は、生命の起源と進化を考察するうえで一つの答えとなるかもしれません。長きにわたり哲学的・宗教的な議論が続けられてきたこの問題も、今後の研究によってさらに新たな解釈や発見がもたらされることでしょう。
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