📱 「いいね非公開」は大きな変化に見えたが…
2024年、X(旧Twitter)は長年続いていた「他人のいいね履歴」を非公開にする大規模な仕様変更を実施しました。これまでユーザーは、他人がどんな投稿へ「いいね」を付けているのか確認できましたが、変更後は投稿者本人と「いいね」をした本人以外は確認できなくなっています。当時X側は、「ユーザーが他人の視線や報復を恐れず自由に反応できるようにするため」と説明していました。
特に議論となったのは、政治的発言、性的コンテンツ、社会的に賛否が分かれる投稿など、「いいねするだけで自身の印象や評判に影響する可能性があるコンテンツ」への行動が大きく変わるのではないか、という点でした。しかし最新研究では、想像とは少し違う結果が示されています。

🔍 研究では15万件以上の投稿を分析
ルクセンブルク大学の研究チームは、「いいね非公開」が実際にユーザー行動へどの程度影響したのかを分析しました。
研究では以下の大規模データが利用されています。
📊 調査内容
- 1068アカウント
- 15万4122件の投稿
- 約3億件超の「いいね」データ
- 203人へのアンケート調査
- 仕様変更前後の比較分析
研究では、社会的・評判的リスクが高いコンテンツを「高評判リスクコンテンツ」と定義しています。

例えば次のような内容です。
- 🗳️ 政治的・思想的投稿
- 🔥 過激・論争的なテーマ
- 📸 成人向けコンテンツ
- ⚠️ 社会的に賛否が分かれる内容
研究チームは「いいね非公開」によって、こうした投稿への反応が増えるかを調べました。

🧠 「気持ちは変わった」が「行動は変わらなかった」
研究で興味深かったのは、ユーザーの意識と実際の行動にズレが見られた点です。
アンケートでは、多くの参加者が「他人に見られないなら、政治的・議論を呼びやすい投稿にも少し気軽にいいねできる」と回答しました。
しかし、実際のプラットフォーム全体のデータでは予想外の結果が出ています。
📌 実際に確認された結果
✅ 「いいねしたい」という意欲は少し上昇
✅ 高リスク投稿への「いいね」数増加は確認できず
✅ リポスト数にも大きな変化なし
✅ プラットフォーム全体への影響は極めて小さい
研究では統計的にも「実質的な変化はゼロに近い」と結論づけています。

🤖 なぜ予想と違った結果になったのか?
研究チームは、理由として「意図と行動のギャップ(Intention–Behavior Gap)」を挙げています。
人間はアンケートで「こうすると思う」と答えても、実際の行動では別の判断をすることがあります。またSNSでは、単純な心理だけでなくアルゴリズムや利用構造も大きく影響しています。
例えばXでは、一部の高頻度利用者や自動アカウント(Bot)がエンゲージメントを大量に生み出している可能性があります。
⚙️ エンゲージメントが変化しなかった要因候補
- 高頻度ユーザーが影響力を集中
- Botアカウントの存在
- おすすめアルゴリズムの影響
- 「いいね」以外の行動が主流化
- 行動と心理のズレ
つまり「見られるかどうか」だけでは、人間の行動全体を変えるほどの力は持っていなかった可能性があります。

🌍 SNS設計は「UI変更だけでは変わらない時代」へ
今回の研究は、SNSプラットフォーム設計全体に対しても興味深い示唆を与えています。
過去のSNSでは、「いいね数」「フォロワー数」「閲覧数」などの可視化が利用者の行動を大きく左右すると考えられていました。しかし近年では、AIによるおすすめアルゴリズムの影響力が強まり、単純な表示変更だけでは行動パターンを変えにくくなっている可能性があります。
現在はInstagramでも「いいね数の非表示機能」が導入され、TikTokやYouTubeでもエンゲージメント表示の設計が頻繁に変更されています。SNS業界全体で「ユーザー心理」と「アルゴリズム最適化」のバランスを探る時代になっているのかもしれません。
📝 まとめ:「いいね非公開」は心理には効いたが、行動までは変えなかった可能性
Xの「いいね非公開」は、当初は大きな行動変化を生むと予想されていました。しかし研究結果では、「気持ちの上では少し自由になった」と感じるユーザーがいても、プラットフォーム全体では大きな変化は確認されませんでした。
今回の結果は、「SNS利用者は単純なUI変更だけで動くわけではない」ことを示しているとも言えます。今後SNS企業は、単なる表示変更ではなく、アルゴリズムや情報拡散の仕組みそのものをどう設計するかが重要になっていきそうです。❤️
📚参考・出典
- arXiv:When “Likers” Go Private: Engagement With Reputationally Risky Content
- プレプリントHTML版論文
- 関連研究サマリー
