台湾の半導体大手・TSMC(台湾積体電路製造)は、日本の熊本県において第2工場の建設を予定していましたが、工事の開始が遅れていることが明らかになりました。TSMCのCEOは「交通渋滞」を理由に挙げていますが、実際にはアメリカでの事業拡大を優先するためという見方が強まっています。

🇯🇵 TSMC熊本工場とは?〜日本の支援によって建設された重要拠点
TSMCは、製造に特化した「ファウンドリ型」の半導体メーカーであり、AppleやNVIDIAなど世界の主要テック企業の製造を請け負っています。特に、日本の熊本県に設立された第1工場(JASM)は、日本政府から約4000億円の支援を受けて2024年に完成しました。
続く第2工場も熊本県内に建設予定で、追加で7000億円超の補助金が交付される予定となっており、日本における半導体再興の象徴とされています。

⏸️ しかし、第2工場の建設は遅延中
TSMCのCEO・魏哲家(C.C. Wei)氏は、第1工場の完成に伴って地域に交通渋滞が発生していることを理由に、第2工場の建設着手を一時的に見送ると説明しています。
🚗 CEOの発言要約:
- 第1工場に人や資材が集中し、交通の混雑が悪化
- 労働者や建設資材のスムーズな移動が困難に
- 交通インフラの改善が確認されるまで建設開始を延期
しかし、これはあくまで公式な説明であり、裏にはより大きな戦略的判断があるとの指摘もあります。

🇺🇸 アメリカでの投資を優先?トランプ政権の影響
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、TSMCは熊本での投資を一時棚上げし、アメリカ・アリゾナ州の半導体製造拠点への投資を優先しているとのことです。
アメリカ優先の理由:
- トランプ政権が推進する「TikTok禁止法」のように、中国に関連するテクノロジー企業への警戒感が拡大
- 台湾製の半導体が関税の対象になる可能性があり、アメリカ国内での生産体制を強化する必要性
- アリゾナ州への投資額は1000億ドル規模とされており、TSMCにとって大規模プロジェクト
結果として、熊本第2工場の着工は2027年末の操業予定に間に合わない可能性も浮上しています。
🗣️ 政府の認識と矛盾、「渋滞ではない」との見方も
日本政府は、TSMC側から「交通渋滞が理由である」とは正式には説明されていないとしています。現時点では2027年末の操業スケジュールに変更はないとの立場ですが、TSMC内部の関係者は「再開時期の見通しは立っていない」とWSJに語っています。
つまり、表向きの説明と実際の状況にギャップがある可能性があるのです。
🌍 TSMCのグローバル戦略と今後の焦点
TSMCは現在、日本以外にもドイツ・アメリカなどで新工場の建設を進めており、いずれも2027年末の稼働を目指しています。このことからも、同社は複数の国に製造拠点を分散させ、地政学リスクを最小化しようとしていると考えられます。
🔍 今後の注目ポイント:
- 熊本第2工場の再スケジュールはいつ発表されるか?
- アメリカでの半導体政策にさらなる支援があるか?
- 日本政府の追加支援があるかどうか
📝 まとめ:熊本工場の遅れは「交通渋滞」か、それとも戦略的判断か?
今回のTSMC熊本第2工場の建設遅延については、表面的にはインフラ要因、しかし実際にはアメリカとの政治・経済関係の影響が色濃く反映された判断と見られています。
半導体は現代のインフラの根幹を支える戦略物資であり、一国だけでなく複数国との関係性が製造計画に直結する時代に入っていることを、今回の件は如実に物語っています。