今や多くの学生が活用している生成AIツール「ChatGPT」ですが、使い方によっては逆効果になる可能性があるとする研究結果が発表されました。
学術誌『Education and Information Technologies』に掲載された最新論文では、AI利用頻度と学生の成績・モチベーションとの関係性が詳しく分析され、特に「誠実さ」という性格特性との関連が注目されています。

📚 研究の概要:誠実な学生はAIに頼らない傾向あり
研究を行ったのは、パキスタンのShaheed Zulfikar Ali Bhutto科学技術院の研究チーム。対象は3大学の326名の学生で、以下の観点から詳細な調査が実施されました:
✅ 調査項目:
- **性格特性(ビッグファイブ)**のうち:
- 誠実性(conscientiousness)
- 開放性(openness)
- 神経症傾向(neuroticism)
- 生成AI(主にChatGPT)の学業利用頻度
- GPA(成績)・学業自己効力感・学習性無力感
🎯 主な結果:
- 誠実性が高い学生ほどAI使用率が低い
- 開放性・神経症傾向は、AI使用と統計的に有意な関連なし
- AI利用頻度が高いほど、モチベーションと成績にネガティブな傾向

🤖 AIの使いすぎがもたらす“3つの影響”
研究では、AI利用頻度の増加が以下の問題と関係していることが判明しました:
🧠 指標 | AI利用との関連 | 説明 |
---|---|---|
学業自己効力感 | 低下 | 「自分の力で成功できる」という感覚が減る |
学習性無力感 | 上昇 | 「努力しても無駄」と感じやすくなる |
GPA(成績) | わずかに低下 | 自主性の低下や学習習慣の弱体化が原因かも? |
💬 研究者コメント(スンダス・アジーム助教)
「AIの便利さに頼るあまり、自分の力を信じる力が弱まる可能性があります。誠実性の高い学生は、むしろリサーチやディスカッションといった、より創造的・能動的な学習活動を好むようです。」

⚖️ 「公平な評価」とAI利用の意外な関係
研究では、「成績評価の公平さ」とAI利用傾向の関連も調査されました。
- 開放性が高い学生に限って、評価が公平だと感じた場合、AI利用率がやや低下
- 誠実性・神経症傾向の学生では、評価の公平性は影響を与えなかった
📌 この点について研究チームは次のように述べています:
「公平な評価を受けているという感覚は、必ずしもAI利用を抑制するわけではないようです。予想された“ズルしてでも良い成績を取る”という傾向はあまり見られませんでした。」
📌 まとめ:生成AIは“万能”ではない。使い方に注意を
ChatGPTのような生成AIは、正しく使えば非常に強力な学習支援ツールです。しかし――
使い方次第では、学業成績やモチベーションを低下させるリスクもある。
今回の研究は、単にAIを禁止すべきだという話ではなく、「どう使えば主体的な学習を促進できるか?」という教育現場への問いかけでもあります。
🧭 教育者・政策立案者・EdTech開発者に求められる視点:
- ✅ AI利用を“善悪の二元論”で語らない
- ✅ 誠実性や学習意欲を高める指導・設計の工夫
- ✅ 評価制度の公平性を担保し、ツールに依存させない環境構築
📢 今後、教育の現場でAIが果たす役割をより良いものにしていくためには、こうした研究の知見を活かした「責任ある活用」が鍵となるでしょう。