長年、ゲーミングGPU市場ではNVIDIAのGeForceが圧倒的な存在感を維持してきました。しかし2026年に入り、自作PC向けの小売市場ではAMD Radeonの存在感が急速に高まっています。9月上旬には米AmazonのGPU売れ筋ランキングでRadeon RX 9070 XTが首位となり、上位10製品をAMDとNVIDIAがほぼ二分。日本のAmazon.co.jpでもRX 9060 XT搭載製品が首位に立つ場面が確認されました。さらにドイツの大手PCパーツ通販Mindfactoryでは、9月第1週のGPU販売に占めるAMDの割合が約56%に達し、約40%のNVIDIAを上回りました。世界全体のシェアが逆転したわけではありませんが、「GeForce一強」だった自作PC市場の一部でRadeonが明確な選択肢になってきたことを示す興味深い動きです。

📈 AmazonとドイツでRadeonが上位へ、主役はRX 9070 XT
特に勢いが目立つのがRDNA 4世代のRadeon RX 9000シリーズです。TechSpotが2026年9月8日に確認した米Amazonのランキングでは、Gigabyte製RX 9070 XTがGPU部門の首位となり、ASUS製RX 9070 XT、ASRock製RX 9070、ASUS製RX 9060 XTなども上位に入りました。ドイツのMindfactoryでもAMDが週間販売数の約56%を占め、RX 9070 XTが突出して売れ、RX 9060系がそれに続いています。ただしMindfactoryは以前からAMD製品のキャンペーンやバンドル販売が多く、Radeonが強い販売店として知られているため、この56%という数字を世界市場全体のシェアとして扱うことはできません。
今回確認された動きを整理すると、次のようになります。
- 🇺🇸 米Amazon:RX 9070 XTが売れ筋首位、AMD製品がトップ10の複数を占める
- 🇯🇵 Amazon.co.jp:RX 9060 XT搭載カードが首位に浮上する場面も
- 🇩🇪 Mindfactory:週間GPU販売でAMD約56%、NVIDIA約40%
- 🎮 Steam全体:依然としてNVIDIAが約73%を占め、Radeonとは大きな差がある

💰 最大の武器は「価格・在庫・VRAM」のバランス
Radeon躍進の背景として大きいのが価格と在庫です。2026年はメモリ価格上昇などを背景にGPU価格が再び上向いていますが、その影響はAMDとNVIDIAで均等ではありません。TechSpotが10カ国で追跡した8月末時点の価格では、RX 9070は2月比で約5%、RX 9070 XTは約8%の上昇にとどまった一方、GeForceではより大幅に価格が上昇した製品が複数あります。米Amazonの売れ筋調査時にもAMD製品は複数が購入可能だったのに対し、NVIDIA側では在庫のある有力製品が限られていました。つまり今回のランキングには純粋なブランド人気だけでなく、「欲しい価格帯のGeForceが高い、あるいは買えないためRadeonを選ぶ」という供給事情も影響していると考えられます。
製品そのものの競争力も上がっています。RX 9060 XTには8GB版と16GB版が用意され、16GBモデルでも標準ボード電力は160W、推奨電源は450W。RX 9070シリーズも16GBのVRAMを搭載しており、大容量VRAMを重視するゲームやクリエイティブ用途では選びやすい構成です。TechSpotが2026年9月に実施した52ゲームの比較では、RX 9070 XTは1440p・4Kのラスタライズ性能でRTX 5070を平均約25%上回ったと報告されています。ただしレイトレーシング性能、対応ゲームでのアップスケーリング、消費電力、クリエイティブソフトへの対応などは用途によって評価が変わるため、単純に「Radeonの方がすべて優れている」と見るべきではありません。

🧠 RDNA 4はゲームだけでなくAI機能も強化、ROCmも拡大
現在のRadeonが以前と異なるもう一つのポイントが、AI・機械学習への対応強化です。RX 9060 XTは64基のAI Acceleratorを搭載し、FP16・FP8・INT8・INT4などの行列演算にも対応。AMDは機械学習ベースのアップスケーリングやフレーム生成、Ray Regenerationなどをまとめた「FSR Redstone」をRX 9000シリーズへ展開しています。従来のRadeonはラスタライズ性能と価格を武器にする一方、AIベースの映像処理ではGeForceとの差が指摘されてきましたが、RDNA 4ではこの弱点を縮める方向が明確になっています。
さらにゲーム以外では、AMDのGPUコンピューティング基盤「ROCm」のRadeon対応が拡大しています。ROCm 7.2では最新のRX 9000シリーズと一部RX 7000シリーズを対象に、WindowsとLinuxでローカルAI開発・推論を行う環境が整備されています。とはいえ、生成AIや機械学習のソフトウェア資産ではCUDAを長年展開してきたNVIDIAが依然として強く、アプリケーションやモデルによってはGeForceの方がセットアップしやすい状況も残っています。ゲーム性能・VRAM容量・価格を重視するユーザーにはRadeonの魅力が増した一方、CUDA依存のAI・制作環境ではGeForceの優位性が残るというのが2026年時点での実態に近いでしょう。

🎮 SteamではNVIDIAが約73%、まだ「Radeon逆転」ではない
注意したいのは、Amazonの売れ筋ランキングやMindfactoryの週間販売数は短期間の新規購入動向を表すデータであり、現在世界中で使われているGPUのシェアとは別物だという点です。Steam Hardware Surveyの2026年8月データではNVIDIAが約72.9%を占める一方、AMDは約18.7%にとどまっており、既存ユーザーまで含めればGeForceの優位は非常に大きなままです。RTX 3060、RTX 4060シリーズ、RTX 5070など複数世代のGeForceが上位に残っていることからも、AMDが数週間の販売ランキングで上回っただけで勢力図が逆転したとはいえません。

それでも、今回の動きには意味があります。既存シェアは過去数年間に販売されたGPUの累積結果であるため変化が遅く、「今まさに何を買っているか」については小売販売データの方が敏感に反映するからです。RX 9000シリーズが価格・在庫・VRAM容量・ゲーム性能を武器にこの勢いを維持できれば、時間をかけてSteamなどの利用シェアにも影響が現れる可能性があります。逆にNVIDIA製品の供給改善や価格低下が進めば、現在のRadeon人気が一時的な現象に終わる可能性もあり、今後数カ月の販売推移を見る必要があります。
🔎 まとめ:Radeonは「安い代替品」から有力な選択肢へ
2026年9月の販売データから読み取れるのは、AMDがGPU市場全体でNVIDIAを逆転したということではなく、自作PC向けの新規販売市場でRadeon RX 9000シリーズの競争力が大きく高まっているという変化です。特にRX 9070 XTとRX 9060 XTは、価格上昇が続くGPU市場でVRAM容量、在庫、ゲーム性能のバランスが評価されやすい位置にいます。さらにFSR RedstoneやROCmなどAMDのソフトウェア面も拡充しており、今後の焦点は一時的な売れ筋ランキングではなく、この販売ペースが継続してSteamの利用シェアや開発者の対応、さらにはAI・クリエイティブ分野のエコシステム拡大につながるかどうかになりそうです。
参考・出典
TechSpot「AMD GPUs are climbing the sales charts as Radeon beats Nvidia on Amazon and in Germany」https://www.techspot.com/news/113765-rdna-4-dominating-sales-charts-everywhere-httpsxcomtechepiphanyytstatus2096735193339974105.html
TechSpot「Graphics Card Prices Are Rising Fast (Again), and GeForce Is Taking the Biggest Hit」https://www.techspot.com/article/3167-gpu-pricing-q3-2026/
TechSpot「GeForce RTX 5070 vs. Radeon RX 9070 XT: 2026 Update」https://www.techspot.com/tag/nvidia/
Steam「Hardware & Software Survey:August 2026」https://store.steampowered.com/hwsurvey/videocard
AMD「Radeon RX 9060 XT 16GB 製品仕様」https://www.amd.com/en/products/graphics/desktops/radeon/9000-series/amd-radeon-rx-9060xt.html
AMD「Radeon Graphics Specifications」https://www.amd.com/en/products/specifications/graphics.html
AMD「FidelityFX Super Resolution / FSR Redstone」https://www.amd.com/en/products/graphics/technologies/fidelityfx/super-resolution.html
AMD「ROCm on Radeon and Ryzen」https://rocm.docs.amd.com/projects/radeon-ryzen/en/docs-7.2/
